2024年04月23日

「ティファニーで朝食を」86年リバイバル 梅田東映ホールチラシ

 大変大変!
 ちょっと更新をサボっていたら、4月21日の「ローマの休日」日本公開70周年の記念日に記事をアップ出来ませんでした。

 まあそれは4月27日の東京公開日に回すとして、先に間もなく “午前十時の映画祭14”で4/26(金)〜5/09(木)にリバイバルされる「ティファニーで朝食を」の応援記事をやってしまいます。

 今日は1986年の「ティファニーで朝食を」リバイバルでの梅田東映ホールのチラシの紹介。

 「ティファニーで朝食を」というと、初公開時に日本では話題になったわりには中ヒットで終わってしまった作品。
 映画評論家の批評も良かったのに何ででしょうね?

 東京のメインのスカラ座では1961年11月4日から12月22日まで7週の上映。
 もっとヒットしてたらそのままお正月映画、ということもあり得たのでしょうが、年越しは出来ないまま終わりました。

 大阪の北野劇場や松竹座での興行成績はもっと悪くて、11月23日から12月6日というわずか2週間で上映を終えています。

 ほとんど同じ時期である11月12日に上映が始まった1966年の「おしゃれ泥棒」は大ヒットだったため年越しをして、1967年2月3日まで上映が続いたのとはえらい違い。

 当時はオードリー演じるホリーが高級売春婦、ということでなにかいかがわしさを感じてしまった良家の若い女性客が警戒してあまり出かけなかったのでしょうかね。

 「ティファニーで朝食を」は今でこそオードリームード満点というイメージですけど、演じるオードリー的にはかなりの挑戦的な役柄だったし、“オードリーらしくない”と思われてしまったんじゃないかと思います。

 結果的に50〜60年代のオードリー作品ではワースト4位の興行成績で終わり、61年の初公開の後のリバイバルは69年になりました。その69年リバイバルも成績はそこそこだったようなのですよね。

 その間には63年公開の大ヒット「シャレード」が68年と73年にもリバイバル、と成績もリバイバル回数も抜かされてますし、「ティファニーで朝食を」は “代表作なんだけど…”ってイメージだったんですよね。

 そんな中84年から始まった日本ヘラルドによる往年の名画の怒涛のリバイバルは、MGM/UAとの契約から始まって、85年にはパラマウントとも契約。
 85年年末に「麗しのサブリナ」「ローマの休日」のリバイバルがあった後、86年6月にはこの「ティファニーで朝食を」リバイバルとなります。

 大阪では1986年の6月21日〜7月4日の上映だったようですね。
 この時はまだオードリー作品で揃えられるほどリバイバル作品の権利を獲得したわけではなく、当時契約されたパラマウント作品でまとめられています。

 「泥棒成金」「ペーパー・ムーン」共々、2週間ずつの上映。

 80年代の日本ヘラルドのリバイバルは、プレスシートが作られるわけでもなく、映画会社ごとにまとめて順番に公開されて、映画パンフレットも過去のパンフレットを原稿に復刻版をササっと作って発売、みたいな感じでしたから、映画雑誌の「スクリーン」でも紹介されないんですよね。紹介されてもまとめて、とかね。

 なので80年代後半の「スクリーン」を買っても “リバイバル作品紹介”って出てこないんです。買ってガッカリですよね。今の“午前十時の映画祭”みたいな扱い。

 このチラシはオモテ面赤黒2色、裏面茶色1色刷り。
 メインの「ティファニーで朝食を」の画像も鮮明ではないし、あまり “嬉しい!”ってものでもないんですが、大阪地区でのチラシですからね。

 裏面で「ウインドーをのぞきながらパンをかじるなんて、ちょっとクリスタルな気分じゃない?」って文章が書いてあって、あー、バブル前夜の80年代のニオイがプンプンするなーって思います。

 この当時は何でもかんでもおシャレ “風”なんですよね。そういえば僕もバイトしてDCブランド着てた着てた!みたいな。

 梅田東映ホールは、梅田コマシルバーとともに、80年代によくオードリーの作品を掛けてくれてましたよね。
 87年に大阪に来た「パリの恋人」や「暗くなるまで待って」もここだったと思います。

 さて、86年に、69年以来久々にリバイバルした「ティファニーで朝食を」ですけど、その後は80年代後半〜90年代前半のオードリーの大ブームに乗って、オードリー作品だけをまとめた上映でもよく取り上げられてましたし、95年にももう一度大々的にリバイバル。

 徐々に作品の評価と興行成績が揃うようになってきて、その後は2013年「スクリーン ・ビューティーズ」でのリバイバルもありましたし、2016年の“午前十時の映画祭7”でのリバイバルでは大ヒット!当時の“午前十時の映画祭”では最もヒットした作品になりましたし(同年上映の「七人の侍」に抜かれましたが)、その後は2021年、そして今年と“午前十時の映画祭”で上映。

 気づけば1961年、1969年、1986年、1995年、2013年、2016年、2021年、2024年と合計8回も日本で上映。「シャレード」の6回を抜かして、今や「ローマの休日」(15回)、「マイ・フェア・レディ」(10回)に次ぐオードリーの劇場公開数第3位を誇ります。

 今年は初の4Kでのリバイバルになりますね。
 「ティファニーで朝食を」のパラマウント公式の4Kリマスターブルーレイと同じ素材でしょうから、まあ「ティファニーで朝食を」に関しては綺麗にできている方だと思います。

 昔の映画のリマスターだと、鮮明にするために粒子が荒れたり、最近の流行で地味な色目に合わせるために昔より却って色が褪せてたり、顔の色が紫になってたり、ってこともあるので…(「シャレード」とか「パリで一緒に」)。

 それでは、26日からの“午前十時の映画祭14”をお楽しみください。
  


Posted by みつお at 18:00Comments(0)ティファニーで朝食を

2024年02月24日

“午前十時の映画祭14” 今年は「ティファニーで朝食を」

 “午前十時の映画祭14”のラインナップが発表されました。

 「暗くなるまで待って」「尼僧物語」「噂の二人」がよかった僕としては残念ながら今年も「ティファニーで朝食を」になりました、とご報告させていただきます。


 90秒の予告では、サムネがオードリーになってます。

 ちょっとねー、2016年度の“午前十時の映画祭7”で「ティファニーで朝食を」がめちゃめちゃヒットしたからって、こすりすぎなんですよ!
 2021年度の“午前十時の映画祭11”に続いて、またですか!?という感じ。

 さすがに昨年に4Kで正式リバイバル来たばかりの「ローマの休日」は無いだろうとシメシメと思ってましたが、その代わりに「ティファニーで朝食を」!?
 いくらオードリーは儲け頭だからといって、オードリーで全部の損を埋めようとしすぎでしょー!

 おんなじのを2年や3年でリバイバルせずに、最低でも5年はインターバルを開けてほしいです。
 どうせなら2014年度以降劇場にかかっていない「シャレード」の方が良かったです。

 …とまあ、愚痴っててもやっぱり観に行くんですけどね。今回は4K版だしね。

 さて、今年もオードリーはゴールデン・ウィークに充てられています。
 全館4/26(金)〜5/09(木)まで。劇場ラインナップは以下の通り。

北海道 札幌シネマフロンティア
岩手 中央映画劇場
宮城 TOHOシネマズ 仙台
宮城 イオンシネマ新利府
山形 MOVIE ON やまがた
栃木 ユナイテッド・シネマ アシコタウンあしかが
栃木 TOHOシネマズ 宇都宮
茨城 シネプレックスつくば埼玉MOVIX三郷
埼玉 ユナイテッド・シネマ ウニクス秩父
埼玉 こうのすシネマ
埼玉 TOHOシネマズ ららぽーと富士見
千葉 TOHOシネマズ 市原
千葉 シネマサンシャインユーカリが丘
千葉 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ
千葉 京成ローザ10
東京 TOHOシネマズ 日本橋
東京 TOHOシネマズ 新宿
東京 グランドシネマサンシャイン 池袋
東京 TOHOシネマズ 錦糸町 オリナス
東京 TOHOシネマズ 立川立飛
東京 TOHOシネマズ 南大沢
東京 イオンシネマ多摩センター
神奈川 TOHOシネマズ ららぽーと横浜
神奈川 TOHOシネマズ 海老名
神奈川 TOHOシネマズ 小田原
神奈川 TOHOシネマズ 上大岡
山梨 TOHOシネマズ 甲府
長野 長野グランドシネマズ
長野 松本シネマライツ
静岡 シネマサンシャインららぽーと沼津
静岡 静岡東宝会館
静岡 TOHOシネマズ 浜松
岐阜 TOHOシネマズ 岐阜
愛知 ミッドランドスクエア シネマ
愛知 ユナイテッド・シネマ 豊橋18
愛知 ミッドランドシネマ 名古屋空港
富山 TOHOシネマズ ファボーレ富山
石川 イオンシネマ金沢
三重 イオンシネマ津
京都 京都シネマ
大阪 高槻アレックスシネマ
大阪 TOHOシネマズ くずはモール
大阪 大阪ステーションシティシネマ
大阪 TOHOシネマズ なんば
大阪 TOHOシネマズ 泉北
大阪 TOHOシネマズ ららぽーと門真
兵庫 TOHOシネマズ 西宮OS
兵庫 OSシネマズ神戸ハーバーランド
和歌山 ジストシネマ和歌山
岡山 TOHOシネマズ 岡南
島根 T・ジョイ出雲
広島 福山駅前シネマモード
香川 イオンシネマ宇多津
愛媛 シネマサンシャイン重信
福岡 小倉コロナシネマワールド
福岡 kino cinéma天神
福岡 ユナイテッド・シネマ なかま16
福岡 TOHOシネマズ ららぽーと福岡
佐賀 イオンシネマ佐賀大和
長崎 TOHOシネマズ 長崎
熊本 TOHOシネマズ はません
大分 TOHOシネマズ 大分わさだ
宮崎 宮崎キネマ館
鹿児島 天文館シネマパラダイス

 公式サイトはこちら

 予告編30秒のは、「ティファニーで朝食を」が締めで使われています。

  


2023年11月09日

1978年「水野晴郎のおしゃべりによる 映画名場面音楽集」ポスター

 今回は1978年5月16日(火)に神戸文化ホールの大ホールで行われた「水野晴郎のおしゃべりによる 映画名場面音楽集」のポスターの紹介。
 主催は右上を見ると民音のようです。サイズはB2。一般的な映画ポスターと同じサイズです。

 これ、僕の手元にあるのは本当にボロッボロ。
 なので、かなり縦の両端(特に左側)を修正しています。

 今でもよくある、映画音楽の演奏ですよね。
 ここでの演奏は指揮が小高光って方で、演奏はストリングス・ファンタジック・オーケストラってとこ。

 検索すると、ストリングス・ファンタジック・オーケストラはレコードで数枚ヒットするんですが、小高光さんはヒットしないです。

 昨年、15年ぶりにオーケストラの演奏で舞台に乗りましたが(まさにこの神戸文化ホール!)、その時の打ち上げで指揮者である後輩くんに教えてもらいましたけど、やっぱりクラシックじゃなくて映画音楽を指揮してしまうと、“映画音楽の指揮者”って見られてしまって、クラシックの演奏をさせてもらえなくなってしまうそうです。

 なので彼としてはクラシックを振りたいので映画音楽は振らないそう。まあヘンリー・マンシーニとかは無理として、「ローマの休日」みたいに元々クラシックの作曲家だったジョルジュ・オーリックは?と聞くと、その辺は難しいところだそうです。

 まあ映画音楽って言っても、クラシックの作曲家として完全に認められているイベールやオネゲルなどは大丈夫そうでしたが、映画音楽の方が有名になってしまったオーリックだと厳しいみたいですね。

 さて、ここでの「ストリングス・ファンタジック・オーケストラ」って名前ってことは、弦楽器だけなんでしょうかね?
 弦楽器って普通はバイオリン(1stバイオリン・2ndバイオリン)・ビオラ・チェロ・コントラバスのことを指します。

 管楽器が無いと、映画音楽としてはちょっと音の広がりには乏しい気もしますが、どうなんでしょうね?

 曲目は「ムーン・リバー」「ハタリ」より子象の行進、「ピンク・パンサー」「サウンド・オブ・ミュージック」「007」「ブルー・ハワイ」よりハワイの結婚式、「モダン・タイムス」「第三の男」「青い山脈」他、と書いてますね。

 選曲を見ると、1949年の「青い山脈」があるので、78年当時に40〜50才代の方を狙ってるんでしょうかね?

 メインの画像はオードリーの「ティファニーで朝食を」。

 でもこのオードリーは見るからに着色カラーですよね。
 本物のカラー写真だと、ポットの色とか全然違いますもんね。

 でも当時、Photoshopなど無いころに、こうしてポスターで使えるように大きく着色してたってのはすごいこと。
 60年代とかの本当の映画ポスターなんかは見事な着色をしていましたけど、今はこの技術はきっともう失われてしまってるんでしょうね。勿体無いです。

 70年代後半ですから、全然オードリー映画のリバイバルが無くて、僕がオードリーに飢えていたころ。
 なのでオードリーを使ってくれているのはすっごく嬉しかったですよね。

 あ、そうそう、「ティファニーで朝食を」を原作と映画で比較するときによく書かれてるんですが、“映画は主人公の2人が結ばれて終わるが、小説は結ばれない”ってのはあるんですけど、なんでそうなのかってのは書かれてるのを見たことがないです。

 だって原作の主人公の男性である“私”はゲイなんですから、ホリーと結ばれるわけないですよね。そんな選択肢は元々無い。
 そこを書かずに、まるでホリーは自由だから“私”と結ばれなかったみたいな書き方は違うと思うんですよね。

 それに映画の製作当時、まだゲイをアメリカの映画で描くのは許されてなかったんですから、原作通りに作れるわけないですよね。
 同性愛をアメリカ映画が描けるようになったのは、オードリーの次の作品の「噂の二人」からですからね。

 別に「ティファニーで朝食を」の映画のプロデューサーのマーティン・ジュロウとリチャード・シェファードはお上に逆らって、そこまで踏み込んで描こうとはしてなかったわけです。

 なので、僕は映画は映画で完成されてるし、小説は小説、と別物だと考えています。
 ラストだけじゃなく、映画ってだいぶオリジナルにしてますもんね。

 さて、ポスターの下部に、モーリス・ベジャール率いる20世紀バレエ団が来るってのもすごいこと!
 しかも演目がストラヴィンスキーの3大バレエの「火の鳥」「春の祭典」「ペトルーシュカ」を全部やっちゃうなんてゴージャス過ぎる!

 このポスターはオードリーで嬉しいですけど、映画そのものの通りに演奏してくれないなら、ただのイージー・リスニングになってしまう映画音楽の演奏よりも、僕ならベジャールの20世紀バレエ団の方を見に行くかな〜。
  


2022年04月21日

「噂の二人」公開60周年記念その2「映画の友」1962年5月号

いよいよ「いつも2人で」…「午前十時の映画祭12」にて4Kで上映。あと8日!今月、4/29(金)〜5/12(木)TOHOシネマズなど全国で上映!詳細はこちら

「オードリー・ヘプバーン」…5/6(金)からTOHOシネマズなど全国で上映!公式サイトはこちら

 さて、本日4月21日は「噂の二人」が東京の松竹セントラル劇場で日本初公開されてからちょうど60年になります!
 それで今回は「噂の二人」の新着映画紹介の載った“映画の友”1962年5月号を紹介。

 まず4月21日って、「ローマの休日」の日本初公開日でもありますよね。オードリーにはゆかりのある日ですねー。

 それと、初公開の松竹セントラル劇場って、丸の内ピカデリーと並んで松竹配給の映画館としてはチェーン・マスターだった映画館ですよね。

 松竹セントラルって、松竹の公式サイトを見ると1956年に竣工されたんですね。そして松竹本社に入っていた、と。規模は1000席以上。さすがチェーン・マスター館ですよね。

 松竹のサイトで見ると、竣工当時は80年代みたいにごちゃごちゃ宣伝や看板が出ておらず、本当にスッキリして綺麗!そしたら同じ松竹セントラルで公開された「戦争と平和」も竣工当時のこの真っさらでピカピカな劇場で上映されたということになりますね。

 松竹セントラル劇場は、その後1957年に「昼下りの情事」、そしてこの「噂の二人」の初公開時、それと1966年の「パリの恋人」リバイバルでオードリー作品はお世話になっています。
 後年は完全に丸の内ピカデリーにチェーン・マスターの座は譲ってたので、「シャレード」「いつも2人で」「暗くなるまで待って」「マイ・フェア・レディ(1969年リバイバル)」「華麗なる相続人」の松竹系公開作品は丸の内ピカデリーで公開されましたけれども。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、この“映画の友”は5月号!
 当時の5月号というと、“映画の友”でも“スクリーン”でも人気投票の結果発表の号ですよね。当時、1年で最も売れていた号なのではないでしょうか。

 だからこの号は色々とオードリーに関しては見所の多い号になっています。

 まずはいきなり表紙からしてオードリー。画像は「噂の二人」の宣伝写真。

 まるさんもおっしゃってましたが、オードリーが女優時代に最も気に入っていた髪型ですね。
 「噂の二人」から始まって、「パリで一緒に」、「シャレード」の宣伝写真、そして「マイ・フェア・レディ」の時期と、「おしゃれ泥棒」で髪の毛をバッサリ切るまでは足掛け4年基本はこの髪型でした。

 でも、「パリで一緒に」と髪型も似てるのに、「噂の二人」はどうにも地味なのはなんででしょうね。前髪の長さなのか、髪の毛の盛りの量なのか、それともメイクなのか…。

 「噂の二人」と「パリで一緒に」の見分け方って、やっぱり地味なのか華やかなのか、ですよね。

 さて、本編で最初にオードリーが出てくるのは、カラーページで始まる「あなたが選んだベスト・ワン」という人気投票で選ばれたスターのページ。
 この年は順位順にスターが並んでいますし、当時のカラーページは貴重なので、カラーで載っているのは3位までのスターのみです。

 男優1位のアラン・ドロンの裏で、女優1位のオードリーの登場。
 でもこれはオードリーだけのポートレートではなく、「噂の二人」の宣伝写真。ジェームス・ガーナーとシャーリー・マクレーンが一緒に載っています。

 この年のジェームス・ガーナーは男優部門には名前がなく、テレビスターの第12位、シャーリー・マクレーンは前年の9位から落ちて14位となっています。

 読者投票の結果を見ての対談のテレビスターのコーナーで出ていた話では、テレビで人気が出てから映画に使うというケースがこの頃多い、ということでジェームス・ガーナーが挙げられています。
 のちにオードリーと共演するエフレム・ジンバリスト・Jrもテレビスター部門の10位に入っています。

 さて、この写真ですけど、「噂の二人」では貴重なカラー写真。本当の衣装の色がわかりますよね。
 映画では白に見えるオードリーのブラウスも、実際は薄い黄色だったんだ、ジャンパースカートは紺色なんだ、というのがはっきりします。

 オードリーのブラウス、白が写真の色で黄色に見えているのではないことが、ジェームス・ガーナーのワイシャツの白があることでしっかり区別できますね。
 こういうのがわかるのがカラー写真のいいところ。

 そういえば、デザイナーの長沢節さんが「噂の二人」のドロシー・ジーキンズと知り合いで、オードリーは何を着せてもエレガントに見えてしまうから、かえって難しいわけ。と言われた、と書いてましたね。

 次はオードリーじゃなくてヴィヴィアン・リー。「ローマの哀愁」のカラー写真でウォーレン・ベイティと載っていますね。
 1961年には「哀愁」と「風と共に去りぬ」のヴィヴィアンの2大代表作がリバイバルされて、人気投票でも26位に返り咲いており、同じく「草原の輝き」(作品第6位)があって人気投票で15位に入った新進のウォーレン・ベイティ(マクレーンの実弟)と共に期待の作品だったんでしょうね。

 ヴィヴィアン・リー、相変わらずお美しい!のですが、この時まだ47才か48才。
 のわりにはお年のように見えるのは、このメインの写真でも持っている手離せないタバコと慢性の睡眠不足、それと双極性障害から来ているのでしょうね。
 ヴィヴィアン・リー自身、「私は生まれてからあまり寝ていないのです」と言ったほどで、毎日2〜4時間ほどしか寝ていなかったとか。

 次はグリーンのグラビアページで「オードリーの早春日記」という見開き2ページ。
 スイスでのメル・ファーラーとの散歩の写真、ローマでのフェイマスと歩く写真、食料品店での買い物、チャリティー試写会でのメルとの写真、パリの豪華客船の晩餐会での様子、と「噂の二人」の撮影後、ヨーロッパ各地でのんびりしているオードリーが載っています。

 ここのキャプションで書かれているのが、“これで「ティファニーで朝食を」で二度目のオスカーでも取れば、まず最高の休日といったところですが。”と書かれています。
 そう、この号の発売は3月21日でしょうから、1961年度(1962年発表)のアカデミー賞の発表(4月9日)が迫っていたんですよね。

 この年、オードリーは主演女優賞にノミネートされていました。
 僕らはもうこの年にオードリーはアカデミー賞は取れないことを知っていますけど、当時のオードリーファンはもしかしたら取れるかも!ってドキドキしていたのかもしれませんね。

 次のオードリーは同じ緑のグラビアページの“フォト・トピック”というページ。
 オードリーとメル、どちらが相手に惚れてるのかわからんね、とか書かれています。この当時は息子ショーンも生まれたばかりで夫婦仲も最高に良かった頃だったんでしょうね。

 ちなみにこの写真でオードリーが着ているのは「ティファニーで朝食を」で着ていたショッキング・ピンクのジバンシィ。
 これは「ティファニーで朝食を」の契約でもらったものなのか、それともオードリーが出演後に買い取ったのかはわかりませんが、これって「噂の二人」の試写会だったかにも着て行ってましたよね。オードリーお気に入りの1着。

 「ティファニーで朝食を」では2着のリトル・ブラック・ドレスも着てますけど、やっぱり本当のオードリーはピンクとかの方がお好き、というわけですね。「パリで一緒に」にも似たようなジバンシィがありますし、「いつも2人で」でもやはりショッキング・ピンクのドレスがありました。

 ちなみにこの衣装は「松下奈緒 永遠のオードリー」でもハーグ市立博物館に現存しているのが映ってましたよね。服と同色だったはずの飾りは退色してましたけど。

 次は本文ページの人気投票の総括。まずは作品の部で、1位は今年リメイクが公開された「ウエスト・サイド物語」。
 これは当時社会現象にまでなってましたから、1位は当然ですよね。

 でもこの作品も最初はマリア役にオードリーがオファーを受けてたんですよね。当時のオードリーは妊娠中で断りましたけど。
 断って勿体無い作品シリーズの1本ですよね。そういえば、オードリーは「ウエスト・サイド物語」のプレミアには参加してましたね。もしこちらに出演していたら、同じマーニ・ニクソンの吹替でもバッシングされなかったんでしょうね。

 そして「ティファニーで朝食を」は第8位に入っています!7位の「鞄を持った女」が生活の匂いのあるロマンチシズムで、都会的な味の「ティファニーで朝食を」が続いて、と書かれています。9位にはリバイバルの「風と共に去りぬ」、24位にはリバイバルの「哀愁」が入っています。
 邦画の1位は黒澤明の「用心棒」です。これも過去の午前十時の映画祭で上映されましたよね。

 さて次は女優の部。1位がもちろんオードリー・ヘプバーンで、1578票。2位のナタリー・ウッドが870票で、男優1位のアラン・ドロンが863票ですから、オードリーはほぼダブルスコア!
 オードリーの人気がピークだった1960年代前半は本当に勢いがすごいですよね。

 品田雄吉さんと南俊子さんの対談では「トップはオードリイ・ヘップバーン、依然確固として揺るぎない地位をしめてますね。」「連続4年はえらい。」「去年は『ティファニーで朝食を』1本だけでしょう?」「1年1本でもオードリイは絶大な人気があるのね。」「彼女はやっぱり夢の人なんだな。」と書かれています。

 男優ではオードリーと共演した人はヘンリー・フォンダが6位、アンソニー・パーキンスが7位、バート・ランカスターが10位、グレゴリー・ペックが21位、ウィリアム・ホールデンが23位、トニー・カーティスが26位、ケイリー・グラントが27位、「ティファニーで朝食を」が出たばかりのジョージ・ペパードが28位でした。
 映画の友ではリバイバル作品は順位に入れるのに、死んだスターはランキング対象外にするので、ゲーリー・クーパーも25位相当で票数を稼いでいます。

 こういうのを見ると、やはりオードリーの共演者はおじさん前提で選んだのではなく、当時人気があったスターの男優さんが選ばれているのがわかりますよね。
 オードリーとの年の差が…と言う若者がいますが、今で言うとブラッド・ピットやジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオとかと共演してる感覚ですよね。

 監督の部では「ティファニーで朝食を」のブレイク・エドワーズが30位にかろうじて。他のオードリー作品の監督はウィリアム・ワイラーが3位、ビリー・ワイルダーが7位、ジョン・ヒューストンが13位、フレッド・ジンネマンが20位です。

 それと、この年はリバイバルブームの波に乗って、リバイバルしてほしい作品の投票結果も載っています。
 そこでは1位に「ローマの休日」が選ばれているのですが、他のオードリー作品ではなんと20位に「戦争と平和」が選ばれています!

 と、この意味がわかりますでしょうか?
 そう、「麗しのサブリナ」ではなく、「戦争と平和」の方が人気があった、ということなんですよね!

 「戦争と平和」、今ではオードリー作品ではマイナー扱いになっていますけど、公開当時から映画評論家だけではなく、一般の映画ファンにも「麗しのサブリナ」よりも人気が高かったということですね。

 確かに80年代まではオードリー作品の中では「戦争と平和」はれっきとしたオードリーの代表作だったんですよね。
 70年代後半とかをご存じの僕の年代の方なら、代表作の扱いとしては「戦争と平和」>「麗しのサブリナ」が当然でした。

 「麗しのサブリナ」はむしろ「昼下りの情事」の影に隠れた存在だったんですよねー。
 だから若いオードリーばかりがもてはやされるような風潮になってから「麗しのサブリナ」は出てきた、というのが実感です。

 ここに「パリの恋人」や「昼下りの情事」が入ってないのは、57年に公開されたばかりで、まだ名画座とかを回っていたからじゃないかなーと思います。
 ましてや「緑の館」「尼僧物語」「許されざる者」は本当についこないだ公開の新しすぎる映画なので入ってないと思います。

 1か月に何回映画を見ますか?という集計では2回が1番多く、ついで3回、4回、1回、5回と続きますから、58年をピークに映画人口は半減していましたけど、まだまだ皆さん映画を見てるんだねーって感じです。

 次は紫のようなえんじ色のようなグラビアのページで、いよいよ「噂の二人」の紹介ページ。

 この号では「尼僧ヨアンナ」が4月から発足するA.T.Gの第1回作品ということで単発的にグリーンのグラビアページで最初に紹介されていましたが、見開き2ページのみ。
 「噂の二人」は本格的な新作映画紹介のページで載っていて、しかも3ページですから、こちらが今号のメインなのでしょう。

 まずはオードリーとシャーリー・マクレーンの2人の有名な画像。オードリーの横顔の美しさが際立ちますね。
 それとどうやらシャーリーは普段の明るい作品と雰囲気が違うようなのですが、僕の中ではこのシャーリーでイメージされてますね。

 その後に「回転」「ハスラー」と紹介されて本文ページに入り、「噂の二人」の6ページもある対談。脚本家の水木洋子さんと、映画評論家の荻昌弘さん、山本恭子さんの3人です。
 もちろんこれらの方はもう試写会で「噂の二人」をご覧になってます。
 最後の2ページ分はシャーリー・マクレーンのイラストのみなので、今回載せていません。

 山本さんも荻さんも子供の悪さと老人の悪さが出ているということを語っています。アメリカの偏見や誤解がどうやって生じるか、と書かれています。

 今は日本よりアメリカの方がおおらかになった同性愛の問題ですが、この当時は日本よりもはるかにアメリカの方が厳しいことが語られており、同性愛について当時の日本の事情が語られています。

 次に水木さんと荻さんがが子供が憎々しいくらいうまいと語っており、山本さんもよくああいった子供を探し出したもんですねと同意しています。
 荻さんは子供は嘘つきなもので、それにおばあさんの無責任な発言が加わり、さらにもう一人のおばあさんの傲慢さと頑固さが加わってのっぴきならないものになって行く、1つの偏見と誤解が生まれると、それにいろいろなものが積み重ねられていく、そのプロセスが非常にうまい、衆愚精神と付和雷同が怖いと言ってます。

 山本さんはどうやらアメリカでの試写を見たそうで、撮影されたものの、カットされてしまった裁判のシーンがあったことが語られていました。
 と言ってもその段階でも既に2、3カットフラッシュバックで裁判に負けたことが出てただけだったそうで、だいぶ早い段階でカットされる方向になってたのがわかりました。出演した役者さん、ガッカリしただろうなーと思います。
 シンコー・ミュージックから出ていた「スクリーンの妖精」では完全にカットされた裁判長の役者さんの名前まで載ってましたね。

 ワイラーの演出では、荻さんは極力主人公たちの主観でカメラを動かしながら、ちゃんと客観的になっているところがうまいと言ってます。
 最後にオードリーが庭を歩いて門の所へ出てくる所、下手な監督なら撮らない、そして気がついて駆け戻ってくるところもオードリーの表情の変化を順々に積み重ねていく手法のことを述べています。

 山本さんも、門の話で同意しながら、メアリーとおばあさんの自動車の中でのショットの積み重ねでどんどん話を際どい方向に持っていくワイラー演出に関して話しています。

 そして山本さんがシャーリー・マクレーンの告白シーンで演技者だと思った、オードリーが押され気味だったと言っているのですが、そこで荻さんが告白を受ける方がアップ一つで耐えたということで、むしろオードリーに感心したと述べています。水木さんはこれは二人の対照的な芝居で、優劣つけがたいと語っています。

 僕もこのシーンのオードリー、いいと思っています!昔はちょっと淡白すぎるかなーと思っていましたが、大げさにやるよりもこの方が今の時代にも合っていると思います。

 オードリーの演技は「マーサが何を言っているか理解が追いつかないで驚いている」という演技じゃなくて、「マーサが何を言っているか理解した上でマーサを思いやっている」という演技になっていますよね。カレンはマーサの同性愛自体を責めても否定してもいないんですよね。

 もしここで同性愛自体を否定するようなワードを言ったりしていたら、今の時代には残れなかったと思うんですよね。映画製作当時はそう言った方が映倫は通りやすかったかもしれないんですが、ワイラー監督はそうしなかったですね。

 結局メアリーのお祖母さんや町の人たちはお葬式に“同性愛は無かった”ということで謝罪の意味を込めて来てますけど(同性愛だったら許していない)、最後に誰にも一瞥もくれず歩いていくカレンはマーサの全てを理解した上で愛していることが現れていますよね。

 ラストシーンですが、山本さんが初めに見た試写のではジョーが待ち受けているシーンは無かったそうです!それも意外。

 最後にはこのごろの映画は70ミリやシネマスコープで大まかになってきた、そんな中でこんな風に細やかにやられるとグッとくる、こんな完成度はテレビでは望めないと語っています。非常に高い評価を受けているわけですね。

 次のオードリーは“ハリウッド通信”のコーナー。トップにホールデンとヘプバーンが共演、ということで載っています。もちろんこれは「パリで一緒に」のこと。

 ところが原題を写し間違えたのか、もともと間違えていたのかはわかりませんが、“Paris When I Sizzle” (最後のsも無いですね)となっていて、「パリよ私が燃える時」って紹介されてます。

 次に“リヴァイヴァルと映画音楽”というページでは「噂の二人」が再製作であることが語られていますが、それはまあどうでも良くて、「麗しのサブリナ」のダンス・パーティのシーンでリチャード・ロジャースがローレンツ・ハートと初めて映画の作曲をした「今晩は愛して頂戴ナ」で使われた“ミミ”という音楽があると書いているのですが、どんな曲かがわかりません。

 「麗しのサブリナ」のサントラでも“ミミ”という曲は書いて無いので、“メドレー”って中にあるのか、あるいは「バナナ」や「バラ色の人生」のようにカットされてしまったのか…。

 “今月のヒット・パレード”というコーナーでは「S盤アワー」という番組で“ムーン・リバー”が7位、「魅惑のリズム」という番組では“ムーン・リバー”が2位に入っています。

 その横のサービス部のページでは「噂の二人」のオードリーのポートレートが発売されています。

 “スポットライト”というページでは「ローマの休日」の冒頭にも出てくるパラマウント・ニュースが3月末で姿を消すことになったことが語られています。
 すでに本国アメリカでは1957年1月で終了していたそうですが、日本だけで続いていたそう。

 そういえば昔の映画館って、そういうニュース映画だけを上映している映画館もあったんですよね。
 さすがにテレビが普及してくるとニュースをお金を払って映画館に見に行こうと思う人も少なくなりますよね。
 テレビに比べると情報も遅いでしょうしね。

 次のオードリーはアカデミー賞の候補になっているページ。この年はもちろん「ティファニーで朝食を」でノミネートされてましたね。
 それとこの本を最初に買った人が予想をチェックしているのですが、劇音楽映画賞と主題歌賞で見事「ティファニーで朝食を」「ムーン・リバー」にチェックを入れてくれています。

 次に新刊紹介に「子供の時間」が載っています。白水社で定価が450円。

 まだスターになっていない俳優や名脇役を紹介する“Who's Who”のページではジェームス・ガーナーが紹介されています。
 身長180cm、オードリーの相手役としては高い方ではありませんが、当時の日本人やアメリカ人と比べても高かったと思われます。

 さて主演は今大人気のオードリー・ヘプバーンとシャーリー・マクレーン、それにテレビで人気のジェームス・ガーナー、監督は定評のあるウィリアム・ワイラーで批評も素晴らしかった「噂の二人」。ヒットしないわけがないと松竹は思っていたのでしょう。

 ところがフタを開けると当時のオードリー・ファンには求めるロマンティック・コメディのオードリーでは無かったことで、大コケ。あまりの不入りにびっくりしたのか、5月1日に再度松竹セントラルは新聞広告を打っています。
 けれども結局「緑の館」を下回る配給収入に終わりました。オードリー全盛期の作品の中では最低記録となっています。

 大ヒット間違いなし!だと踏んで印刷した松竹セントラル劇場の劇場館名入り映画パンフレットが大量に余ってしまい、館名のところに紙を貼ったり、再度表紙の上から黒く刷り直して別の劇場で売ったりしたのは過去記事に書いた通りです。
  


2021年11月04日

「ティファニーで朝食を」公開60周年記念その2 「映画ストーリー」1961年12月号

 さて、今回は1961年11月4日の初公開日から、ちょうど60年経った「ティファニーで朝食を」に関する雑誌の紹介。
 前回は撮影開始の記事を紹介しましたが、今回はいよいよ公開作品紹介として載っている「映画ストーリー」1961年12月号(10月発売)の紹介です。

 これ、表紙は「カタログ オードリー・ヘプバーン」とか洋書の「Audrey Hepburn: International Cover Girl」とかで載っているので、あんまり表紙のレア感は無いです。でも実際には写真だけでは載っていないので、この写真自体は実は割とレア。

 しかもオードリーはピンボケ気味ですが、とても綺麗に写ってます。オードリーはこの作品から「暗くなるまで待って」まではアップのヘアスタイルか、ショートヘアにしてもトップを逆毛にして、ずっとトップにボリュームを持たせる髪型にしています。

 そして上記の写真集たちでは表紙がちょっと青っぽく写ってるんですけど、実際は緑色っぽい表紙です。なので “映画ストーリー”というロゴも緑色でデザインされています。

 もう僕はこの雑誌を解体してしまってて、オードリーとヴィヴィアン・リー以外のページは捨ててしまっているんですが、これに関しては丁寧に解体してて、糊で製本してある背のところまでしっかり残しています。

 次のオードリーは「ティファニーで朝食を」のパラマウントの広告。この当時は広告といえども1流作品はカラーで宣伝ですけど、二流品とかはモノクロで広告を打たれてた時代。もちろん「ティファニーで朝食を」は1流作品のオードリー主演ですから、堂々とカラー。

 この広告を見るとキャッチコピーは “くっきり晴れた秋空のように…華麗に待たれる今秋随一の珠玉篇!!”となっています。
 でも「今秋」と書いてあるということは、はじめから62年にまたがるお正月映画にするつもりはなかったということでしょうかねー。

 「ティファニーで朝食を」を初公開したのは日比谷スカラ座ですけど、成績は良かったものの7週で上映は終了、12月23日からはお正月映画として別の作品が始まっていますが、それがなんとこの号でも紹介されているヴィヴィアン・リーの「哀愁」!

 なんとなくイメージでは逆のような気がしますね。オードリーの新作がお正月映画で、リバイバルの「哀愁」がツナギの秋公開だった方が良かったような…。

 「ティファニーで朝食を」、実は初公開時は普通のヒットで、決して成績は良くなかったようなんです。
 東京の一般館用のパンフレットがあまり出回っていないところを見ると、封切館の日比谷スカラ座ではヒットしたけれども、一般封切ではそんなにヒットしなかったのではないかと思います。

 逆に大阪は封切館の松竹座のパンフレットが全然出回ってないのに比べて、一般館用の大阪映実版のパンフレットはよく見つかるので、大阪では一般館の方がヒットしたのだと思います。

 多分当時のファンは清純派のオードリーがこんな娼婦まがいのホリーを演じているのに、戸惑いがあったのではないかと思います。
 第二期はオードリーが女優としてチャレンジしていた時期ですし、「尼僧物語」「緑の館」「許されざる者」と真面目な作品ばかりでした。

 やっと都会的なコメディ作品に帰ってきてくれた!と思ったら当時のオードリーのイメージからは逸脱した高級娼婦、という役どころで出来にかかわらずついていけないファンもいたのでしょうね。

 あと、初めて見たときの僕のように、“あれ?”と内容に肩透かしを食らったような気になった人も多かったのだと思います。
 2013年の「スクリーン・ビューティーズ」のリバイバルでも、後ろの席の若い女子たちのグループで、「これってオードリーの代表作?」と思いっきり戸惑ってる会話が聞こえてきました。

 もちろんオードリーの代表作で、海外ではオードリーの最高傑作だとも認識されていますけど、ちょっとこのホリーの物語は見る人を選ぶような気がします。ついて行けなかった人はついて行けないままラスト、みたいな感じになるんでしょうね。

 次の「噂の二人」もこれまた作品の評価は高かったのですが、同性愛というテーマなのかその内容の暗さなのか、これまたファンが戸惑って、初公開時のオードリー作品では最下位の成績になっています。

 なのでこの時期のオードリーは「許されざる者」は西部劇のブームもあって大ヒットですけど、「ティファニーで朝食を」(オードリー映画でのワースト4位、水準ヒット)、「尼僧物語」(ワースト3位、水準ヒット)、「緑の館」(ワースト2位、大コケ)、「噂の二人」(ワースト1位、大コケ)と成績は良くありません。

 同じ日比谷スカラ座で、しかも時期も近い11月12日からの公開で12週もの大ヒットをしてそのままお正月映画に突入した「おしゃれ泥棒」と比べると「ティファニーで朝食を」は1/3以下の成績しか残せていません。

 「シャレード」も大ヒットで12週続映でしたから、「シャレード」は63年の初公開の後68年にはすぐにリバイバルが決まるんですけど、61年に先に公開された「ティファニーで朝食を」は69年までリバイバルが来ませんでしたからねー。すっかり先を越されてます。

 しかも「シャレード」は68年のリバイバルが終わるとすぐにまた次のリバイバルの候補に上がっていたと読んだことがあります。

 実際73年にはまた「シャレード」のリバイバルがありますし、日本では「ティファニーで朝食を」のオードリーの個性は認めながらも、一般の人の好みは

 「シャレード」>「ティファニーで朝食を」

 だったんでしょうね。

 おおっと!めっちゃ脱線しましたが、当時の映画会社の公式の広告って雑誌によって全然デザインが違うんですよね。しかもポスターやプレスシートとも違うし、いっぱいいろんなデザインを考えていたんですね。まあなので今見るとそれも新鮮です!

 さて次からはいよいよ「ティファニーで朝食を」の特集が始まるんですけれども、この雑誌は「映画ストーリー」ですから、16ページのグラビアを使って延々「ティファニーで朝食を」の物語と場面写真が載っています。

 でも、もうこの号が出る時には映画評論家の方達や映画雑誌の関係者は試写を見終わっています。
 ここで載っているのももう原作のお話ではなく、徹頭徹尾映画のストーリーになっています。

 宣伝写真もさすがに公開前ともなってくると映画会社もどれを使うかが決まってくるのか、ほとんどが見知った写真ばかりになっています。

 その次からは本文ページに入ってくるのですが、まずはスタッフ、キャスト、解説、表紙のオードリー・ヘプバーンについてが書かれています。

 気になったのは解説では “主演のオードリーは「麗しのサブリナ」以来の喜劇出演”だなんて書かれてるんですど、えっ、「パリの恋人」と「昼下りの情事」は喜劇じゃないの?とか思ってしまいました。

 オードリーに関しては小森和子さんが書いているのですが、あまりに的確なので一部を抜粋してみます。

 “ティファニーというエレガンスの権化みたいなものと、形は都会風にソフィスティケイトされたものの、心は依然野生的で自由奔放なホリー、この対照が大変面白く思われました。
 しかしオドロキはこのホリーを演じるオードリーのうまさと美しさです。32歳というのにこの若々しさはどうでしょう!オードリーの魅力を称してよく「小妖精みたいな」といわれますが、「みたいな」じゃなく、全くそのものといった感をこの一作はますます深めます。
 それはまた、形はソフィスティケイトされても心は純真そのもの、天衣無縫のホリーそのものみたいです。
 役柄の女性をクッキリ浮き彫りにしながら、しかもあくまでもオードリーが演じているという、彼女自身の個性を鮮やかに感じさせる、彼女こそがティファニーの宝石にもまさる貴重な女優でしょう。”

 小森のおばちゃまの温かい文章が嬉しいですよね、まあ撮影時はオードリーは31才でしたけど。
 ホリーと全然違う中身のオードリーが演じることでその役柄が永遠のものになるって凄い事ですよね!
 前から書いているように、ホリーは原作者カポーティが推していたマリリン・モンローではなく、オードリーで大正解!だと思います。

 「風と共に去りぬ」の原作者マーガレット・ミッチェルもレット役にはクラーク・ゲーブルではなくロナルド・コールマンだったかな?がいいと思ってたみたいですし、原作者が必ずしも最高の配役をするわけでもないんですよね。

 いつまでも古くならないオードリーがホリーを演じたからこそ、「ティファニーで朝食を」は今でも輝き続けている名作だと僕は思ってるんですよね。マリリン・モンローとかその時代臭の強い他の女優さんだったら、今頃はすっかり古めかしくなっていたと思います。パーティー・シーンのオードリー以外のエキストラの女優さんを見ると、やっぱり時代の洗礼ですっかり古色蒼然となっていますもんね。

 次のページは原作者トルーマン・カポーティのことが書かれています。そこでは今では原作ファンには別物だと言われていますが、ここで文章を書いている東宝で働き翻訳者でもあった大門一男さんという人は原作の結末が余韻を残しているとしながらも、
 “しかし映画としては当然最後にはっきりした結末をつけなければならないだろう。その意味ではこの映画の結びは原作の意図をよく表現しており、むしろ原作に忠実な脚色と見ることができる。登場する脇役や細かい背景にも、原作の味をよく生かしている。”
と書いてます。

 大門一男さんは出版社で働いていた時、カポーティの作品を1つ載せたことがあったそうで、その時に掲載料に関してカポーティと手紙のやり取りがあったそうです。

 その横のページは荻昌弘さんによる「ティファニーで朝食を」の映画評。
 そこでは、

・オードリーは作品を厳選しぬく女優であり、がっかりさせられたのは「緑の館」以外にはないが、今回は「ペティコート作戦」しか判定できないブレーク・エドワーズ監督だからという危惧があったが、実物は予想をはるかに上回るいい映画が出来上がった。

・オードリーは改めて見直したくなるくらい初々しく、可愛く、清潔でセクシーで、しかも今までにない新鮮複雑なキャラクターを演じていること。
 実体はあるのに、誰一人実体を捉えられない女、これが妖精でなくてなんであろう。

・男女とも性のモラルに後ろめたさを持ち、それが友情にも影がさすため単純な恋愛映画ではないこと、しかもその二人が自分を失わずに大都会を歩いているという健康的な爽やかさ。しかもホリーの過去の悲惨さに胸を突かれるが、それがホリーをいっそういじらしく感じさせること。

・アメリカ映画が昔から持っていた夢の楽しさ、これがこの人間臭い妖精の物語に鮮やかに復活している点が何よりも嬉しかった。

といったことが書かれています。

 次のページはまた別の人が男女の恋愛(当時は当然LGBTなどという概念は映画雑誌などでは無かった時代)を指南しているようなのですが、そこでの男性の魅力の条件というのが、

 1.筋骨隆々であること
 2.適度に金持ちであること
 3.適当に不潔であること
 4.適度に行儀が悪いこと
 5.適度に悪党じみていること

などと書かれていて、今とは全然違うよなーって思います。
 1は今でも人によっては、と思いますし、2はまああるに越したことはないでしょうけど、3〜5は全く時代に逆行してるでしょうね。

 そこでは写真とともに「ティファニーで朝食を」のことも出てくるのですが、ジョージ・ペパードの小説家はなかなかいいが、5項目全部に当てはまらない結構な青年だと書かれています。

 女性の魅力の方も5つ書かれているのですが、今となってはここに書くのも憚られるような、あまりにステレオタイプで女性蔑視なのでビックリします。
 まあマリリン・モンローの一般的なイメージの女性像を良しとしているということでしょうか。

 「ティファニーで朝食を」のオードリーに関しては清潔ならざる日常のようなのに、どう見ても清潔でしかも色っぽいから、不思議であると書かれています。またホリーのオツムを強いと感じるか、弱いと感じるかでその人のオツムの強さ弱さや、魅力の有無までもがわかると書かれています。
 なんかどういう基準なのか、僕には良くわかりません。

 次はオードリーではなくヴィヴィアン・リーなんですが、僕の場合ヴィヴィアン・リーのことも記録に留めたいので、ここに載せることを許してくださいねー。

 まずは茶色のグラビアページでローレンス・オリヴィエと離婚後のヴィヴィアン・リーと、傷心のヴィヴィアンを最後まで支えたジョン・メリベールの海水浴の写真。
 オードリーとロバート・ウォルダーズの関係に近いですけど、あくまでも気の強いヴィヴィアン・リーが主という関係。

 僕はヴィヴィアン・リーを好きなので、悪い意味では思っていないのですが、精神を病む病気で苦しんでいたため、ヴィヴィアン・リーは老けるのが早かったですね。この写真の時もまだ47才でしょうに、見た目は50代後半くらいですよね。

 その次もヴィヴィアン・リーで、先にリバイバルされた「風と共に去りぬ」の大ヒットに続いて、「哀愁」のリバイバルはこの映画をまだ見ていない若者の反応を知りたい、となっています。

 さらにその次はそのリバイバルされる「哀愁」のストーリーが4ページに渡って載っています。

 「今月の映画音楽」というページでは映画評論家の岡俊雄さんによって「ティファニーで朝食を」が取り上げられています。
 そこではまず映画の評価として、“パラマウントの伝統の都会調の格調の高さを持った見応えのあるいい作品であった。”と書かれています。そして“この映画の収穫はいろいろあるが…”と書いてからヘンリー・マンシーニの話が書かれています。

 最後のページでは当時の映画雑誌では当たり前だったスターの写真の頒布がなされていて、オードリーは「噂の二人」の写真が売られています。
 そこでこの雑誌の出版社が “雄鶏社”と書いてあるので、なんか懐かしさをおぼえました。

 僕にとっては「カタログ オードリー・ヘプバーン」を出してくれたオードリーに優しい会社、という認識ですね。残念ながら2009年にはなくなったそうです。

 でもふと思っていましたが、61年10月だと、もう「噂の二人」も撮影が終了していますよね。自分の作品はほぼ振り返らないオードリーですから、世間では「ティファニーで朝食を」が来る頃ですが、オードリーにとっては「ティファニーで朝食を」も「噂の二人」も既に過去のもの、というわけですね。

 このころのオードリーはショーンを育てることが一番楽しかったでしょうし、映画ではこれから始まるであろう「ハワイ」「卑怯者の勲章」そして「パリで一緒に」などの予定作品の方しか見てなかったでしょうね。

 そして裏表紙の裏の表3では「哀愁」のカラー広告が載っています。これを見ると、まだまだ60年代前半はデザインも色使いも古めかしいなあ〜と思います。

 これが60年代後半になるとデザインが急に垢抜けて傑作連発になるんですから、わずか数年の間に映画のデザイン業界に何が起こったんでしょうねー。
  


2021年10月24日

「ティファニーで朝食を」公開60周年記念その1 「映画の友」1961年1月号

 僕のもうひとつのブログ「おしゃれ泥棒、オードリー・ヘップバーン!」の方に、やっと書けましたので、“102.オードリーと相手役との年齢差について その1。かなりな年上との共演が多いのはなぜか”をアップしました。そちらもよろしければ読んでみてください。

 さて、オードリーと相手役の年齢差のことをまとめていると、今年公開60周年の「ティファニーで朝食を」のことを書く時間がめっちゃタイトになってしまいました。

 今回はそんな祝!「ティファニーで朝食を」60周年の第1弾ということで、雑誌「映画の友」1961年1月号の紹介。
 表紙は60年代前半に人気のあったミレーヌ・ドモンジョ。70年代には既に見かけない人だったので、古本で初めて知った人です。映画も未だに見たことがありません。

 1961年1月号ということは、発売は60年11月です。ということはここでは「ティファニーで朝食を」撮影開始の第1報ということですね。
 ファン待望のオードリーの新作撮影開始!ということで、この号ではなんと19ページも使ってオードリーのことが載っています!

 そうですよねー、ファンからしたら「許されざる者」を撮影終了してからもう既に1年半も経っています。「許されざる者」撮影中の落馬事故のあと、流産・再度妊娠とあって、予定されていた1959年の来日の予定はなくなりましたし、今度こそ絶対に赤ちゃんの欲しかったオードリーは表立って出てくるのを控えていましたから、当時のファンはめっちゃオードリーを待ち望んでいたことと思います。

 しかも今回は写真を見る限り都会的な恋愛作品で、ロマンティック・コメディの「昼下りの情事」の後は、第二期で「尼僧物語」「緑の館」「許されざる者」と真面目な作品ばかりに立て続けに出演していたのですが、ここでやっとオードリーの本領発揮!だとファンは思っていたのではないかと思います。

 19ページの内訳はカラーが2ページ、モノクログラビアが2ページ、青色1色のグラビアページが4ページ、特別読物「ティファニーで朝食を」が8ページ、“ハリウッドへ帰ったオードリイ夫妻”という本文ページが3ページとなっています。

 オードリーだけの特集号でもないのに、たった1人のスターのために割いてくれるページとしては充分すぎるページ数。
 本当にそれだけオードリーの人気がすごかったということですよね。

 カラーは今となっては珍しい画像ばかり掲載されています。オードリーが1人で正面向いている画像は、今ならショーンが許可しない画像。オードリーのシワとクマとほうれい線がはっきり写ってます。オープニングのシーンの撮影の時だと思いますが、野次馬に囲まれていたらしいですから、それがストレスになったんでしょうか。

 面白いのは、左の4つの写真の下3枚。映画で出てきたオードリーの帽子ありと、ジョージ・ペパードのコートを肩にかけているもの以外に、オードリーは帽子なしでペパードがコートを着ている、というのもありますが、これは撮影スナップかと思いきや、この3枚の写真は全て上に録音用のマイクが写っているんです!ということは、ちょっと変えた別バージョンのファッションでも撮影していたのかな?と思って興味深く見てしまいました。

 なんせニューヨーク・ロケはこの最初の時だけ。あとでハリウッドで撮るスタジオ撮影で変わるかもしれませんし、前後の整合性が取れないとダメですから、何パターンか撮影していたのかもしれません。

 次に出てくるのはモノクログラビアですが、その前のページはイングリッド・バーグマンとアンソニー・パーキンスの「さよならをもう一度」(この時は原題・原作通り「ブラームスはお好き」)なのですが、「ティファニーで朝食を」のオードリーと「さよならをもう一度」のアンソニー・パーキンスは1962年に揃ってダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を受賞して、一緒の飛行機で授賞式に向かっていましたね。

 二人で共演して、凡作・失敗作だと言われた「緑の館」の仇は取った、というところでしょうか。アンソニー・パーキンスにとってはそのキャリアの頂点の時期ですよね。

 さて、このモノクロのグラビア写真のうちの2点は「ティファニーで朝食を」の有名な宣伝写真ですよね。撮影の順番って、映画の撮影に入る前にある程度宣伝写真も撮っているということですね!

 次の「噂の二人」でもおそらく撮影前に撮ったんだろうなーと思われる、前髪がまだ「ティファニーで朝食を」から完全に伸びてなくて真ん中分けにしている、映画に出てこない髪型のオードリーの写真とかありましたから、撮影前に撮ることも当然なのでしょうね。

 次のブルーのページは撮影が始まったばかりの特報写真の数々。
 そこに書いてある文章で、

 ・7月17日にママになったオードリーが、待望の新作「ティファニーで朝食を」に10月9日の早朝、ティファニーのショーウインドウのところから撮影に入ったこと
 ・日本にはティファニーに比較する店がないが、銀座の和光みたいな宝石貴金属だけじゃなく、高級雑貨も売っていること、でもレストランは無いこと
 ・ティファニー宝飾店は今まで撮影されることをずっと断り続けていたが、この作品で初めて許可したこと
 ・もしティファニーに撮影を許可されずセットで作ったとしたら、恐らく映画史上最もお金のかかったセットになったであろう

ってことが書いてあります。

 でも、その中にオードリーの愛犬フェイマスにも役がついて出演することになったと書いてあって、実際ブルーのグラビアの最終ページに車から出てくるジョージ・ペパードとフェイマスを抱いたオードリーが立ってる写真も掲載されてるんですが、確かフェイマスって出演してませんでしたよね?
 「ティファニーで朝食を」は犬映画ではなく、完全に猫映画ですよね。そういうことを考慮してカットされたんでしょうか。

 その次は「ティファニーで朝食を」の特別読物があるのですが、これは当時の龍口直太郎さんに訳出された原作の「ティファニーで朝食を」に添ったもの。
 ホリー(ルラメイ)の兄弟フレッドのことも、“弟”として書かれています。

 これは村上春樹さんの新訳で、英語では明らかなんだそうでフレッドは “兄”として改められ、今出ているブルーレイなんかでも兄として出てきますけど、どうも僕にはホリーの態度が弟に対するそれに思えて仕方ないんですよね。
 原作を大幅に変えている映画版「ティファニーで朝食を」ですから、兄が弟になっててもおかしくないんじゃないかと思うのですけどね。どうなんでしょうね。
 うーん、でも英語には1語で兄か弟かの表現が無いって、不便ですよね!

 ところがところが!ですよ、そんな原作のストーリーが書いてあるにもかかわらず、シメに原作は新潮社から龍口直太郎さん訳で発行されてますよーと書かれているにもかかわらず、あらすじの文章のラストは“飛行機の飛んで行ったあとで、ポールの方へ引きかえしてくる人影はホリーだった。”と締めくくられているではありませんか!

 えっ、ここ原作と違う!
 もちろん実際に出来上がった映画ともシチュエーションは違うんですが、ホリーがブラジルに行かなかったことだけは映画と合ってますよね?
 あれっ、ラストシーンって2種類撮られてたっけ?と思って「オードリー・ヘプバーンとティファニーで朝食を」を調べたら…
 ありました、2種類撮っていたという記述が!

 でもそれはカポーティの原作通りでもここで書かれているような空港で戻ってくるわけでもなく、ジョージ・アクセルロッドの書いた脚本そのままのラストシーンで、タクシーではなくリムジンで乗り付け、雨ではなく晴れてきた路地でキャットを見つけて終わり、というものでした。

 ちょっと設定が違うにしても、当時の「スクリーン」がほぼ原作そのままを載せていたのに比べると、映画アレンジではこういう感じになるよって恐らくアメリカのパラマウント本社から送られてきた映画資料に沿ってラストが違うことが書いてあるのはビックリ且つ僕はなぜか好感が持てました。
 当時生きていたら、「スクリーン」じゃなくて「映画の友」を買ってたかも…。

 次のオードリーのページに行く前に、ハリウッドのゴシップのようなページがあるのですが、そこで“先月半ばからロンドンで840万ドルの大作「クレオパトラ」に主演中のエリザベス・テイラーは「軽い呼吸器障害」のため休養している”と載っています。
 「クレオパトラ」って、当初の予算は840万ドルだったんですね!しかも撮影は当初は60年10月からかかってた、と。

 840万ドルでも超大作なのに、最終的には無駄なお金をどんどんどんどん使って5倍以上の4400万ドルもかかってしまったんですから、すごいことですよね。
 リズの「軽い呼吸器障害」も実際は重い病気で、この後撮影は完全にストップしてしまうんですよね。

 63年にオードリーの「マイ・フェア・レディ」がワーナー映画史上最大の1700万ドルもかけて作られるんですけど、もう4400万ドルなんて出されたらそりゃ霞んで見えちゃいますよね。

 さて次の“愛と幸福に包まれて ハリウッドへ帰ったオードリイ夫妻”というページですが、オードリーは「ティファニーで朝食を」撮影のために、メル・ファーラーは「帰りの旅費」というフランスのベストセラーの監督のための準備でハリウッド入りした、ということが書いてあるのですが、オードリーはともかく、メルの監督作品って、その後実現している様子はないみたいです…。
 こうしてだんだん格差が広がっていって、夫婦仲も悪くなってくるのでしょうかね。

 息子ショーン(ここではシーンと書いてます)が生まれることも書いてあるのですが、ここが結構いいかげん。
 実際には「許されざる者」で落馬、そのとき妊娠していた赤ちゃんは撮影後流産、再度妊娠、でショーンが生まれるのですけど、ここでは「許されざる者」で落馬、その時赤ちゃんがいることがわかって、撮影後はスイスに帰り、ショーンが誕生!と、流産のことがスッポリ抜け落ちてます。

 「許されざる者」の撮影は1959年1月〜4月ですから、もしそこで妊娠していた子供が生まれたなら、60年の7月に誕生!って全然月日が合ってないじゃないですか!
 まあショーンの生まれた時の体重は9.5ポンド(4300g)だったと書かれているので、お母さんがオードリーにしてはえらく巨大ベイビーですけど、でもだからと言って出産に1年半もかかるとは考えられないですよね。なんかショーンの体重があまりに立派すぎるということで、9ポンド(4000g)と少し少なく発表されたそうです。

 興味深いのはオードリーが妊娠のために出演の決まっていた「夜の歩み」(のちの「凡ては夜に始まる」)はシャーリー・マクレーンに交代、ヒッチコックの「判事に保釈なし」は延期、と書いてあることです。「凡ては夜に始まる」もオードリー主演の予定だったのですね!って内容は知りませんけど。

 そして来年(1961年)にはビリー・ワイルダーとウィリアム・ワイラー監督の作品が用意されているという、と書かれてあって、ワイラー監督は「噂の二人」ですぐに実現しますけど、この時の実現しなかったワイルダー監督の作品っていったいなんだったんでしょうね?とっても気になります。

 あとは鎌倉の川喜多映画記念館でも有名な川喜多かしこさんが書いた「英国への旅」という文章で、僕の好きなヴィヴィアン・リーの「哀愁」のことが書いてあります。
 1961年から名作のリバイバルというものが隆盛を極めるのですが、61年には「風と共に去りぬ」と「哀愁」が出てどちらも大ヒット。まさにヴィヴィアン・リーが火付け役になったと以前別のもので読んだことがあります。

 そして1960年10月封切りの作品が「映画の友」の採点とともに載っているのですが、そう!1960年10月といえば「許されざる者」が公開された時ですね!ファンとしては点数がめっちゃ気になります!
 ここでは「許されざる者」は☆☆☆★となっています。「スクリーン」と同じく☆5つが満点ですが、★1つは「映画の友」は10点、「スクリーン」は5点と違いがあります。ということで70点、ということですね。「スクリーン」の双葉十三郎さんと全く同じ評価。

 オードリー作品としては決して高くはありませんが、ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」と同じなので、まあいいとしときます。
 この号での最高点は「チャップリンの独裁者」の☆☆☆☆☆の満点で、それに次ぐ点数となっています。
 「映画の友」は邦画も採点されているのですが、「許されざる者」を超えるのは木下恵介監督の「笛吹川」☆☆☆☆という作品だけです。この当時の邦画って粗製乱造ぎみなので、全体にいつも点数は低いです。

 あとは「ハリウッド通信」という欄で、シャーリー・マクレーンがミリッシュ・プロの作品3本に主演することが書かれているところで、「子供の時間」でオードリー・ヘプバーンと共演する、と書かれています。もちろんこれは「ティファニーで朝食を」の次に撮影に入る「噂の二人」のこと。

 他にもミリッシュ・プロで製作される予定の作品がとても多く、この当時はミリッシュ・プロって凄かったんだなーと思います。
 また、スタジオ・ニュースというめっちゃ小さな文字のコーナーでは「ティファニーで朝食を」が撮影を開始した、ということが語られています。

 他には洋画が復調で、アンソニー・パーキンスの「サイコ」が「ローマの休日」より2日多い、30日間連続売り上げ100万円を樹立!と書かれています。
 ここまで記録を保持してたのが凄いですね!「ローマの休日」の1954年って、めっちゃお客さんが入ってても短期間で次の作品に切り替わってた時代ですから、いまだったら延々とロングランだったでしょうね。

 でも当時の100万円って今と全然価値が違いますからね。「ローマの休日」の頃の大卒初任給が8700円くらいらしいですから、100万円って10年分の給料です。現在の大卒初任給が20万円だとすると、「ローマの休日」は現在の2400万円を1館の1日で稼いでいたことになります。

 「映画の友」の読者からなる「友の会」のレポートページでは、横浜の「友の会」で“「許されざる者」は最近の傑作西部劇であることは確かだが、途中でジョン・サクソンが消えてしまうのと、ラストの締めくくりの甘さに不満があったようだ。中にはラストでオードリイが死ななければこの映画は生きて来ないという人もいて、ヒューストン先生もこのラストでだいぶん株を下げたようだ。”と書かれています。

 まあ人それぞれですけど、僕はオードリーのレイチェルが死ななければならないとは全然思いませんけどね。特に原作をと読んでいると「許されざる者」はレイチェルが戦う西部劇ですから、レイチェルが死ぬラストというのは有り得ない。
 むしろ原住民との戦いをレイチェルの死で終わらせる方がよっぽど甘い単純なラストだと僕は思います。

 でもこうして新作のオードリー映画を、だれかと語り合えるなんて、なんて羨ましい!と思いますよね。
 あー、70年代始めにも明智常楽さんのオードリー・ファンクラブがあって、名古屋の300坪の豪邸で思う存分語れたんですよね。それも羨ましいです。

 今月号はオードリーの写真の頒布はないのですが、各社のスター・カレンダーの販売が載っていて、オードリーはもちろんパラマウント社のカレンダーに載っています。載っている順でみるとオードリーは12月だったようですね。
 そして他のメンバーを見ても、パラマウントのカレンダーが一番豪華な気がします。当時は180円だそうです。やすっ!って思いますが、これも1960年の物価で考えると今の3300円くらいですから、そんなものですよね。

 ではでは、第2弾もお楽しみに!(ちょっと急がないと間に合わない!)
  


2021年04月11日

1986年「ティファニーで朝食を」リバイバル時大阪チラシ

 今年のゴールデン・ウイークにいよいよ“午前十時の映画祭”で公開60周年の「ティファニーで朝食を」が再度リバイバルされます。上映期間は全国一斉4/30(金)〜5/13(木)。5月4日のオードリーの誕生日を挟んでますね。

 なのでリバイバル直前ということで今回は1986年に「ティファニーで朝食を」がリバイバルされた時の大阪のチラシを紹介。

 今からもう35年も前のものになりますね。僕はその頃のオードリー作品が続々映画館に来る頃の記憶って割と新しいもののように覚えてるんですけど、もう35年も経ってる!

 僕がオードリーファンになりたての70年代後半の頃の「ティファニーで朝食を」って、今から思うと初公開はたった15年前のことじゃないですか。
 それでもまだ少年だった僕は、1961年なんて生まれる前の遠い昔のことだと思ってました。

 でも怖いことに僕が劇場で見てた「ティファニーで朝食を」はもう今から35年も経ってるんですよね!それを考えるとゾッとしますね。

 さて、この「ティファニーで朝食を」のリバイバルも、日本ヘラルド映画さんのクラシック映画リバイバルの一環。

 ヘラルドさんはまず84年辺りにMGM/UA(MGM映画とユナイト映画)と交渉して許可が下りたので、オードリーではユナイトの「噂の二人」とかからリバイバルがスタートしたんですけど、その後にパラマウントとも契約が取れて、85年年末に「ローマの休日」「麗しのサブリナ」がリバイバルされました。

 パラマウントというと最もオードリー映画が多かった会社ですから、この「ティファニーで朝食を」とか「パリの恋人」とか「パリで一緒に」が続いたんですよね。

 77年の「ローマの休日」以降、全くオードリー作品をリバイバルしてこなかったパラマウントの配給権を持つ本家UIP映画も、日本ヘラルドさんの続々リバイバルの大ヒットでやっとその価値に気づいたのか、大慌てでオードリー作品を漁ったんでしょうが、その時には残っていたのは「戦争と平和」だったんでしょうね。
 なので87年に久しぶりに本家UIPから「戦争と平和」が大々的にリバイバルされています。

 でもまだ “クラシック映画のリバイバル” という枠組みでの上映なので、このチラシでわかるように、前後はパラマウントの別の映画が上映されており、まだオードリーだけでプログラムを組む、というところまでは至っていません。
 裏面にも小さな字で“PARAMOUNT CLASSICS”って書いてますしね。

 ちなみに昔日本ヘラルドさん(だか、のちの角川映画さん)に直接電話して担当していた女性に伺いましたが、そうやって次々とメジャーな映画会社と契約してリバイバルしていったそうですが、20世紀フォックスが一番契約を取れるのが遅かったそうです。

 なので「おしゃれ泥棒」と「いつも2人で」の公開は1991年まで出来なかったんですよね。僕はここまでオードリー作品をリバイバルしてるのに、「いつも2人で」がリバイバルされないんじゃないかとハラハラしてました。
 でも作品の興行価値がどうこうじゃなくて、契約の問題だったわけですね。なのでとうとう「いつも2人で」が初リバイバルされた時はめっちゃ嬉しかったです!

 さて、このチラシでの「ティファニーで朝食を」の上映館は今は亡き梅田東映ホール。90年までには梅田東映パラス2と名称を変更しているようですので、梅田東映ホールとしてはかなり末期の上映のようです。

 「ティファニーで朝食を」の前は「泥棒成金」、後は「ペーパー・ムーン」の上映スケジュールですけど、見てわかるようにイチオシは「ティファニーで朝食を」。

 グレース・ケリーではなく、オードリーがデカデカと大きく載っています。もうこの頃にはブームが始まっていたんでしょうかね。

 チラシ表面の“宝石より愛が光っていた”は86年リバイバル時のキャッチコピー。なかなかシャレてますよね。
 ちなみにこの3作品は宝石つながりの上映のようで、「泥棒成金」は“宝石が大好きな猫がいた”、「ペーパー・ムーン」は“宝石の輝きは心のなかに”だそうです。

 裏面の文章を一部抜粋。

 “ティファニーといえば人ぞ知るニューヨーク5番街のゴージャスな宝石店。そんなところで朝食なんか食べられるわけがないじゃないの。でもそのウインドーをのぞきながらパンをかじるなんて、ちょっとクリスタルな気分じゃない?
 トルーマン・カポーティの原作小説は、都会志向の時代感覚にぴったりマッチして「ティファニーで朝食を」は日本でも流行語に。そして何よりも、当時の映画ファンは主役ホリーに扮したオードリー・ヘップバーンの人間ばなれした体つきと、そのファッションにうっとり。”

と書いてあります。なんか “クリスタルな気分じゃない?”ってとこにめっちゃ時代を感じますねー。

 それと、1961年の初公開時にはまだまだあまりにも縁遠い宝石店「ティファニー」で、題名だけだと「ティファニー」をレストランだと思った人も居たそうですが、1986年といえばもうバブル前夜。もうすっかりオシャレな80年代の若者は「ティファニー」が何者かは浸透していたようですね。
 バブルになると、クリスマスはホテルを1年前から予約して、男性が女性にティファニーの宝石をプレゼント、みたいなのが当たり前みたいにあったそうですからね(僕は知りませんが)。

 みなさんもくれぐれもコロナに気をつけて、見にいってくださいねー。
  


Posted by みつお at 21:00Comments(2)ティファニーで朝食を

2021年03月05日

「午前十時の映画祭11」、今年は「ティファニーで朝食を」

 2021年今年の「午前十時の映画祭11」の上映作品が発表されました。

 今年のオードリー作品は、2016年の「午前十時の映画祭7」で上映されて大ヒットだった「ティファニーで朝食を」の再上映です。

 うーん、できれば初めての作品にして欲しかったよ…。「暗くなるまで待って」とか「尼僧物語」とか期待してたのになー…。
 もしそうだったらこの記事ももっと熱量を持って、発表と同時くらいでアップしてたと思います。

 まあでも今年は「ティファニーで朝食を」初公開からちょうど60周年ですから、これでいいのかも。
 7回目の「ローマの休日」じゃなかっただけでもかなりマシ。
 また大ヒットしてくれることを祈ります。

 今年は1作品だけだし、上映期間も全国一緒なので、見れるチャンスは2週間のみとなります。

 2021年4/30(金)〜05/13(木)

 上映スケジュール、早いですね。あ、というかゴールデン・ウイークに重ねてますね!
 ということはかなり期待の作品ということ。

 ほんと、コロナ落ち着いてほしいなー…。

 公式サイトはこちらです。  


2020年07月10日

1978年3月「ティファニーで朝食を」「おしゃれ泥棒」放映

追記:「ゴールデン洋画劇場」の「ティファニーで朝食を」の紹介記事(カラー写真)がもう一つ出てきましたので、最後に追加しました。

 「華麗なる相続人」の作曲家、エンニオ・モリコーネ氏が7月6日に亡くなったそうです。
 他に「荒野の用心棒」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「ニュー・シネマ・パラダイス」など。映画音楽の巨匠の一人でした。
 ご冥福をお祈りします。

 今回は前回に引き続きテレビ放送時の新聞やテレビ雑誌の紹介。

 今回は、フジテレビ系列の関西テレビで放送された「ゴールデン洋画劇場」の1978年3月10日「ティファニーで朝食を」、17日「おしゃれ泥棒」のものです。

 ヘプバーンの魅力1・ヘプバーンの魅力2として連続放映されてました。

 まず、同じ「おしゃれ泥棒」でもこないだの「月曜ロードショー」のものに比べて、圧倒的に数が多いことにビックリ。同じゴールデンタイムの放送でも、「ゴールデン洋画劇場」の方がパワーがあったのでしょうかね。

 まあ僕の中でも「ゴールデン洋画劇場」と「日曜洋画劇場」は別格だったような気がします。
 後年わかりましたが、「ゴールデン洋画劇場」はオードリー作品の放送がめっちゃ多かったんですね。

 ただ、「ティファニーで朝食を」にはカラクリもあって、これはここに自分で書き留めていたことでわかったんですが、実は「ティファニーで朝食を」はすんなり放送されたのではなく、1977年10月28日、12月23日と2回予告されながら、放映作品が変更になったもの。

 なので週刊TVガイドのカラーの予告で28日(金)って書いてあるものがありますよね?(→右の写真)
 それが変更前のものです。

 いったいどれくらい前に変更が決定されたのかはわかりませんが、まだ「ティファニーで朝食を」を見たことのなかった僕は、その度にがっかりしていたと思います。「やっと3度目の正直で放送してくれました」って書いてあって、待ち望んでいたことがわかります。

 まだオードリーのファンになってそんなに時間が経ってない頃なので、カラーの「ティファニーで朝食を」や「おしゃれ泥棒」の写真(ソファでペパードと写っているもの以外)は初めて見るもので、書いてあるのを読むと昔の僕がとても喜んでいるのがわかります。

 さて「おしゃれ泥棒」は77年4月の「月曜ロードショー」以来の1年未満での放送ですね。TBS版の吹替があったのかどうかはわかりませんが、今回は僕も印象に残っているし、今でもDVDなどに収録されているオードリー=池田昌子さん・オトゥール=中村正さんのもの。

 これねー、「おしゃれ泥棒」はこの吹替版に慣れていたもので、このあとで神戸のさんちかタウンで「おしゃれ泥棒」の自主上映があった時に初めて字幕版を見た時にものすごく違和感がありました。字幕翻訳の口調が硬いんですよね。どう読んでも口語じゃない。と言っても文語調ってほどでもなかったんですけどね。

 オトゥールの口調なんかは、断然吹替の方が良い!って思ってました。

 それとさんちかで字幕で観た時に吹替で1つ気になってたことがあって、ホテルリッツでオードリーをタクシーに乗せてオトゥールがキスをするシーン、ぼーっとなってるオードリーの足をタクシーに入れるのに、「あんよちゃんも入れて」って吹替で言うんですけど、ここは英語で何と言ってるんだろうと気になってたので字幕と発音を注意して観てたんですが、なんと!そのシーンはセリフがなかったのがビックリでした。

 これって台本に書いてあったのか、それとも池田昌子さんのお話ではアドリブの多い中村正さんですから、アドリブで入れたのかわからないんですけれども、「あんよちゃんも入れて」というのはあった方がしっくりくるなーと思っていました。

 今回紹介した中で「ティファニーで朝食を」に関して解説しているものを一部再録。


『ティファニーで朝食を』コールガールの夢
◆オードリー・ヘプバーンが最高のエレガンスを見せる、大都会ニューヨークでの恋物語。高級宝石店ティファニーの、ショーウインドーをのぞきながら、夜明けのコーヒーを飲むのが好きという女の子の話である。妖精のようなオードリーがやっているので、そうは見えないのだが、実は彼女の職業はコールガール。このちょっと変わったコールガールに、新進作家が恋をしてしまうのである。相手役はジョージ・ペパード。彼の女パトロンにパトリシア・ニール。ミッキー・ルーニーが日本人カメラマンの役で出演。監督はブレーク・エドワーズ。ジュリー・アンドリュースのダンナである。」「◆ヘンリー・マンシーニの『ムーン・リバー』も有名。オードリーがギターを弾きながら歌う。ホリーの飼っているネコがかわいい。“彼女”の演技指導は名犬ベンジーの育ての親フランク・イン。」(TVガイド)

「大都会のアワのような女の子がふと見つけた真実の愛。ヘプバーン映画の中でも、その妖精的な魅力が最高に生かされたロマンティックコメディーの秀作。」(神戸新聞)

「『ムーンリバー』の調べにのせて、シックなジバンシーの衣装に身を包んだヘプバーンの魅力があふれる…。ニューヨークに展開される、ちょっと小粋なロマンティック・コメディ!」(TVガイドに載った関西テレビの広告)

「不思議な女性をオードリー・ヘプバーンが演ずるロマンティック・ミステリー。」(週刊女性)

…え??最後のは「ティファニーで朝食を」のどこがミステリーなんでしょうね。

 同じように「おしゃれ泥棒」に関するものも集めてみました。


「ユーモアとウイットに富んだロマンチックスリラー。」(TVガイド)

「ウイリアム・ワイラー監督とヘプバーンのゴールデンコンビ」(掲載紙不明)

「つぎつぎにジバンシーの華麗なモードを見せるシーンは、ヘプバーンの独壇場!!彼女のエレガンスを鮮やかに謳いあげた、ロマンティックコメディの秀作。」(TVガイドの関西テレビの広告)

…これまた「おしゃれ泥棒」ってスリラーなのかな?という疑問。

 両方一緒に書いたものとして、

「一昨年『ロビンとマリアン』で、実に8年ぶりという映画出演に久々話題をまいたオードリー・ヘプバーン.。もう48歳だが、その若い頃の主演作『ティファニーで朝食を』『おしゃれ泥棒』の二本が今夜と次週金曜日の夜9時、関西テレビで放送される。今夜の『ティファニー…』は都会の妖精ヘプバーンがジバンシーのエレガントなドレスに身を包み、『ムーン・リバー』にのって展開するロマンチック・コメディーである。」(掲載紙不明)

 意外と載ってる割には解説無いですね。まあ褒められるのは嬉しいんですけれども。

 今回は数が多かったので、細かい写真はまとめてみました。新聞の番組欄まで切り抜いています。そして池田昌子さんの名前には下線が引いてあります。なんででしょうねー。きっとよっぽど池田昌子さんの声が好きだったんでしょうね。今もそうですが。

 それとフジテレビの「ティファニーで朝食を」はジョージ・ペパードが金内吉男さん。僕はこのバージョンで慣れ親しんでいたので(昔カセットテープで録音していた)、野沢那智さんのバージョンを聞いてものすごい違和感がありました。ペパードの声や喋り方に近いのも金内吉男さんだと思います。

 なお、今回の記事に合わせて、以前紹介した1975年の「ゴールデン洋画劇場」パンフレットの中身の写真をアップしておきました。今までは表紙のみでしたが、これで中身も見ていただけます。

(追記)別のオードリーのものを漁っていたら、もう1つ「ゴールデン洋画劇場」の「ティファニーで朝食を」に関する切り抜きが出てきました。

 こちらも3月10日放送予定時のものですが、これまで2回も放映が変更されていたので、この記事の最後にも “変更なしで上映を切望。”と書いてます。
 まあテレビで映画を放送するのは上映ではなくて、放映ですけどね。

 以前、どこかの洋服ショップだかブランドだかの女性がブログに書いたもので、「ローマの休日」のスカートのことを “当時、パンパンと呼ばれる人の間で流行った”って書いてたらしく、悪気はないとはいえ、パンパンとはどういう人で、その呼び名がどういうものかを調べずに書いてるのが丸わかりで、それを読んだ人にこっぴどく批判されたらしく、その後その部分を削除したものの、“「ローマの休日」放映当時”と書いてて、そこは放映じゃなくて、上映だと再び突っ込まれてましたが、それを思い出しました。
  


2019年09月24日

「ローマの休日」全編上映ライブ&「ティファニーで朝食を」シネマコンサートのご案内

 MKさんに教えていただきましたが、来年から「ローマの休日」全編上映ライブコンサートなるものがあるそうなので、紹介します!

 オケ(オーケストラ)はローマ・イタリア管弦楽団。
 一見 “えっ!「ローマの休日」だから本場のオケ?”と思ってしまいますが、よーく考えてください。「ローマの休日」はアメリカ映画で、作曲者のジョルジュ・オーリックはフランス人ですから。

(コメントでEdipo Reさんに教えていただきました。ローマ・イタリア管弦楽団は常設のオーケストラではないそうです)

 関東地方はこちら
 ・1/5(日)東京オペラシティ コンサートホール 12:30開演
 ・1/7(火)ティアラこうとう 大ホール 18:30開演
 ・1/8(水)茅ヶ崎市民文化会館 大ホール 18:30開演
 ・1/9(木)調布市グリーンホール 大ホール 12:30開演
 ・1/11(土)ルネこだいら 大ホール 14:00開演
 ・1/26(日)横浜みなとみらいホール 大ホール 13:30開演
 ・2/2(日)ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター) 14:00開演

 中部地方
 ・1/13(月・祝)焼津文化会館 大ホール 14:00開演
 ・1/18(土)愛知県芸術劇場 大ホール 13:00開演
 ・1/28(火)まつもと市民芸術館 主ホール 18:30開演

 関西地方
 ・1月19(日)フェニーチェ堺 大ホール 14:00開演
 ・1月21(火)京都コンサートホール 19:00開演

 九州地方
 ・1/16(木)福岡シンフォニーホール 18:30開演

 あれ?広島、札幌、仙台周辺のがないですね?また増えたりするのかな?関西は堺と京都かー。行きにくいなー。

 伺ってみたのですが、「ローマの休日」を上映しながら、音楽が映画で鳴る部分を全て生演奏でするとのこと! それってジョルジュ・オーリックの曲を全部演奏するってことですよね?わー!すごい!画期的だー!!

 だってですね、「ローマの休日」は全曲版の音楽なんてオリジナル・サウンドトラックはもちろん、オリジナル・サウンドスコアも未だに発売されてないんですよ!聴きたくても映画そのままの効果音&セリフ付きのを聞くしかないわけなんですが、それを生演奏で全部聴けるとは!!

 これって録音しておいたほうが良くない?そしたら世界初録音だよ!っていう凄さ。日本だけでペイできなくても、アマゾンとかで売ったら全世界で買う人がいるでしょうにねー。

 一番凄いのは、やっぱり東京オペラシティコンサートホール!リンクは、なぜか東京オペラシティコンサートホールのものに「ローマの休日」がでてこないので、チケット販売の所にリンクしましたけど、オペラハウスが凄すぎる!こんなところで見たら大感激だろうなー!みたいな。

 オペラハウスの桟敷席って、良く映画なんかで貴族が座ってる所ですよね。「戦争と平和」もそうだったし、「マイヤーリング」もそうでしたよね。まあ本当は見にくいんですけどね。

(これもEdipo Reさんに教えていただきました。東京オペラシティコンサートホールはオペラハウスではないそうです。桟敷席ではなく、ただの2階席とかみたいですね)

 まあこのコンサートなんかは映画ではなく、生演奏を楽しむものなので、桟敷席のゴージャスで貴族的な雰囲気を楽しむ方がいいですね。
(だから桟敷席は無いって!笑)

 さて、それと全く同じ方式で演奏されるものも今月号の「SCREEN」で見つけてしまいました。
 「ティファニーで朝食を」シネマ・コンサート

 こちらは東京だけなんですね。オケは東京フィルハーモニー。でも上演は10月12日で、もう日が無いじゃーん!

 ただ、こちらはイマイチ食指が動かないのは、「ティファニーで朝食を」は既にフィルム・バージョンのサントラも出ていること。
 それももしフィルムバージョンじゃなくて、RCA盤の方を元にしてたら、全然行きたいとも思わないですし…。うーん、どうなんだろ。

(これは問い合わせてみました。映画から採譜したものだそうです)

 取り急ぎ情報まででしたー。