2008年04月17日

「虹のヲルゴオル」橋本治 著のユニークで素晴らしい女優論!

「虹のヲルゴオル」橋本治 著のユニークで素晴らしい女優論! この本は橋本 治:著の「虹のヲルゴオル」という本です。残念ながら現在は絶版。絶版じゃないかもしれないけど、重版していないです。

 僕のは91年に発行された講談社文庫のものですが、88年に単行本が発売されています。で、その元はファッション雑誌「ef」(今はデジタル雑誌に変身)に掲載された物だそうです。

 これは橋本治さんの女優論で、雑誌の時は12人だったそうですが、単行本の時にブリジット・バルドーが追加され、文庫本の時にシャーリー・マクレーンが追加されたそうです。なので、読むにはこの文庫版が一番おトクかも?

 さて、橋本治さん、ご存知ですかね?最近は文庫本はどれも絶版状態で、手に入りにくくなったんですけど、「桃尻娘」などの独特の空気感をもった作品で、80年代~90年代に人気があったんですけどね。

 僕も「桃尻娘」のシリーズは大好きです!そのちょっとHな題名から連想される内容とは全然違って、高校~大学生の青春ストーリーなんですけどね。

 これ、シリーズの第六巻であり、最終巻でもある「雨の温州蜜柑姫」なんて、同じ主人公の短編集なんですが、時系列が逆に配置されてるんですよ!
 そう、結婚して子供もいる主人公から、どんどん若くなっていって、最後は第五巻につながるような終わり方…。

 シリーズ物って、最後が悲しくてヤじゃないですか。せっかく慣れ親しんだ登場人物たちとこれでもうお別れだなんて!
 ところが橋本治さんは、これを逆に配置することによって、この最後のお別れの痛みを軽減してくださってるんですよね。
 この技法、なんか、あるオードリーの作品に似てません?

 とにかく、既に「桃尻娘」シリーズでファンだった僕は、本屋で見かけたオードリーの表紙と「橋本治」の名前に惹かれて買ったんですけどね。買ってよかった!と思わせる1冊でした。

 さて、本文では橋本治さんが、鋭くも楽しく自由な女優論を展開されており、中で解説を書いてらっしゃる小藤田千栄子さんもおっしゃってるように、“目からウロコ”的な事柄がいっぱいあります!
 僕も楽しく、そしてビックリさせてもらいながら、かなりこの本には影響受けたクチです。

 トップはオードリーなんですけど、ここで取り上げているのは表紙の「パリの恋人」でも、「ローマの休日」でもなく、なんと「いつも2人で」!そう、時系列をバラバラにすることによって、どんどん暗くなる、っていう作品にはしなかった「いつも2人で」!
 あっ!ですよね。「雨の温州蜜柑姫」も時系列の逆転が起こってましたけど、さすが橋本治さん!目の付け所が違います!

 橋本治さんは「いつも2人で」を5回の旅(実際は6回)だとか、2回目と3回目の旅の順番を間違ったりしてますけど、それは些細な瑕疵。一見オードリー作品では異質な「いつも2人で」を取り上げながら、スターオードリーの全てを語りつくしてしまってます。

 オードリーは“初めての舞踏会が似合う少女”なんだそうです。言われてみれば…ですよね。「いつも2人で」以前の作品にはそこまでのお話しかなかったのに、「いつも2人で」でとうとうその後のお話を演じた、ということが書かれています。

 オードリー以外の女優さんのお話にもオードリーは度々登場します。

 たとえば、マリリン・モンローの中では、“女って別に肉体だけじゃない”ってことを男に分からせる為に、“肉体だけじゃない、だから肉体のない”オードリー・ヘプバーンと“肉体だけじゃない、そして十分に肉体のある”マリリン・モンローの両方が必要だってことがかいてあるんですよね。なるほどー!みたいな。

 他にもヨーロッパのジャンヌ・モローの「エヴァの匂い」が、アメリカでやったらオードリーの「ティファニーで朝食を」になる、とかね。

 オードリーと関係なくても、エリザベス・テイラーは「我を崇めよ」って顔だとか、カトリーヌ・ドヌーブがドスドス歩く「終電車」とか笑ってしまうのも多かったです。

 それにヴィヴィアン・リーの部分では、なんでヴィヴィアン・リーが精神を病んでしまわなければならなかったかのかなり鋭い指摘がなされてて、なるほど!って思っちゃいました。

 繊細な演技のヴィヴィアンは、舞台ではなく映画に合っていたってとこ。でも愛するローレンス・オリビエは自分は舞台俳優だ!って思ってて、ヴィヴィアンもそれについていく。負けるもんか!って思っても、舞台俳優としてはオリビエよりも格が落ちてしまう。

 そうですよねー。全体で見られるオーバー気味の演技をする舞台と、クローズアップの多用のある自然な演技が求められる映画では、明らかにヴィヴィアン・リーは映画向きですよね。

 でも私は私の道を行くわ!って言ったらオリビエと離れなければならない。オリビエを死ぬほど愛しているヴィヴィアンにはそんなことは出来ない。でも舞台でも負けるもんか!だったら、精神を病むしかないですよね。

 もうもう、僕なんかはこれを読んで以降、絶対ヴィヴィアンはそうだったんだ!って確信してますよね。伝記なんかでもなぜヴィヴィアンが躁鬱病になったのかは考察されてないんですけどね。

 それと、最後に解説を書いてくださった小藤田千栄子さんに関しても書いてらっしゃるんですけど、小藤田さんが“年をとらない”ってのは、僕も感じてるんですよね。さすがに20代とは思わないですけど、いつまでも40代くらいなのかなーって。

 とにかく、オードリーファンに限らず、映画ファンならぜひぜひ一読をオススメします!スゴイ本ですよ、これは!

オススメ度:★★★★★


 さて、2006年12月26日から毎日欠かさず記事をアップしてきた「オードリー・ヘプバーンといつも2人で」ですが、僕自身の環境も変わり、毎日アップすることが困難になってきました。

 ここで今日を境に、今後は不定期アップにスタイルを変えようと思っています。

 なので、今日は僕の大好きな橋本治さんの「虹のヲルゴオル」の記事にさせていただきました。

 まだ紹介してないパンフも多々ありますし、チラシやポスターも…。やめるつもりはないので、記事を書くのが苦痛でないよう、ゆっくり、のんびりやっていきたいと。

 毎日来てくださっている方には本当に申し訳ないです。m(_ _;)m

 記事はここまでで485ありますので、どうかまだ読んでない記事、あるいは忘れてしまった最初の方の記事などをしばらく読んでいただけると嬉しいです。
 とか言いつつ、明日アップするかもしれないですけど。(^^;

 せめて週に1回は記事を書くつもりですので、今後も「オードリー・ヘプバーンといつも2人で」をよろしくお願いいたします。



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この記事へのコメント
みつおさん、お誕生日おめでとうございます!!☆

そして本当に、おひさしぶりですw☆m(_ _;)m

頂いたコメントにも、まだ返事も出来ておらず、ごめんなさいですm(_ _;)m

橋本さんのエッセー、私も読んでます♪

本当に流石!の内容でしたね♪

記憶違いでなければ、「オードリーにジーンズは似合わない」の一文があった様な・・・?☆

これを読んだ時、私は何故か、「しまった!見破られた・・・」と思ってしまったのでしたw

でもユニセフ時代のオードリーには、ジーンズがとても似合ってましたけど♪☆

みつおさんの記事を、楽しみにされている方、とても多いと思います♪

なので、マイペースでOKなので、ずーっと続けてくださいね♪

(なんて、半年以上ブログ休んでいる私が言うな!ですがw汗)

私も余裕が出来たら、また遊びに来ますね♪☆

それではまたです!!♪☆

(それにしても・・・ヴァリーエの記事は凄いです・・・w☆結局2ヴァージョンあるってことなのかな・・・?☆)

素敵なお誕生日を、過ごされておられます様に♪☆
Posted by WHO-KO at 2008年04月17日 20:50
みつおさん、お誕生日おめでとうございます。

今日まで485の記事ありがとうございました。
ここを覗くのが一日の終わりの楽しみでした。

その存在さえ知らなかった「許されざる者」の原作の紹介をはじめ、
どの記事もとても興味深く読ませていただきました。

毎日欠かさずアップするのは大好きなオードリーに関する記事とはいえ
大変だったと思います。
本当にお疲れさまでした。

今後はマイペースで記事をアップして下さいね。
また定期的に覗かせていただきます。
楽しみにしてます。

時雄
Posted by 時雄 at 2008年04月17日 21:58
>WHO-KOさん

「しまった!見破られた・・・」(爆)
はい、ありましたよ、「似合わないGパンに履き替えて」って一文が。(^^;
橋本治さん風に言うなら、
“オードリーだからオシャレ、っていうふうになってるけど、でも…”
って感じなんでしょうか。

それをズバズバ書く橋本氏もスゴイし、
「しまった!」って思う感性のWHO-KOさんもすごいなー!って思います。
確かに「いつも2人で」のジーンズはスリムという型のせいでしょうか、
オードリーのウエストから骨盤にかけてのラインが
貧弱というか、あまり良くなく見えることがあります。
これがストレートやベルボトムなんかだと、また違って見えるかも、ですね。

WHO-KOさんの、オードリーの大ファンなんだけど、
ちょっとオードリーを距離を置いて眺めてるっぽい
そういう「クール」というんでしょうか?な感覚が、
僕はとっても好きですねー。(^^
以前オードリーのHPを開いていたMさんもそんな感じだったんですが、
なんか僕とかでは絶対に思いつかない&書けないような意見が
なにげにポーンと簡単に出てくるのに驚いてしまいますし、羨ましいなーと。

またまたぜひぜひ遊びに来てやってくださいです!
ちなみにヴァリーエは全部で4バージョンのCFがあるそうです。
画像で見る限りではさらに同じウィッグで2種類の衣装がある場合があるので、
4バージョン・6パターンというところでしょうか。
全種類見てみたいものですね!
Posted by みつおみつお at 2008年04月18日 14:59
>時雄さん

ありゃりゃ、なんかそんな風に言っていただけると、
本当に嬉しく&悲しくなってしまいます。

なんか個人的には、あまりにマニアックで
こんなの誰も読まないだろーなーとかって思って
挫折しそうになったこともありました。
書くことに困ると、あんまり書かないで済むグッズ(レコード・ジャケットとか)の
紹介にしたりなんかして。(^^;

きっとそんな“ノッテる”“テキトー”って部分も
毎日ご覧になっていただいてた時雄さんには
バレてたんじゃあないでしょうか。(^^;A

“これはこんなことが書きたい!”って時はさらさら書けるので、
まとめていくつかの記事ができちゃうんですけど、
最近は“書きたい!”って思っても時間的にムリだったり。
そしたらそういう高揚感はもう翌日には失せてたりして、
もう書けなかったりと大変です。

ブログをやめちゃうわけではないので、
ぜひぜひ今後もおいでください!
昔の記事でもコメントを寄せていただくと嬉しいです!(^-^
Posted by みつおみつお at 2008年04月18日 15:07
みつおさん、お誕生日おめでとうございます☆実は私も先週だったんですよ^-^

これからもじゃんじゃん遊びにきますよ!なのでゆっくりゆっくり長く続けてくださいね!
Posted by えみ at 2008年04月19日 13:37
あれっ!えみさんも4月でしたか!
お誕生日おめでとうございます!(^-^

ブログはまだまだ続ける気まんまんなので、
これからもどんどん来てくださいね~~!です。
Posted by みつおみつお at 2008年04月20日 20:41
すっかり遅くなりましたが;;

みつおさん、お誕生日おめでとうございます。した?
ジョーはちょっとクルクル踊りが過ぎて、目が回って休んでおりました(笑)

マークもたまにはゆっくり休んだ方がいいですよね。

日々時は流れて、共有している時間も、いつも同じと思っている時間も
気が付けば徐々に変わっていくものです。

でも、変化していく中で、変わらない何かがあれば、
安心していられるものだと思います。

まさに「いつも2人で」の世界ではないでしょうか。

これからも、素敵な文章をみつおさんのペースでゆっくり
アップしてみてください(^^)
Posted by カリン at 2008年04月21日 00:10
みつおさん
遅刻する誕生日祝福します(^^;
みつおさんが今年すべてすべて順調なことを望みます
「オードリー·ヘプバーンといつも2人で」を読んで持ちます私にたくさん楽しいです
オードリーの愛好者にとって
貴重な指導する文献です
P.S.私の誕生日は今月18日です(^^
私達はすべて白い羊の星座です
Posted by meng at 2008年04月21日 17:40
>カリンさん

はー、ゆっくりさせてもらいました。(^^;

予定があって書けないとわかっている日があったりすると、
まとめて記事をいっぱい書き溜めしておかないといけなくて、
それがだんだん苦痛になってきてました。
(逃げれるような簡単に記事が書けるものも使い果たしてしまったし…)

でももうあと1日、あと1日って頑張ってきましたが、とうとうダウン。
大好きなオードリーのことを書いてるのに、イヤにも義務にもなりたくなくて、
誕生日を境にゆっくり宣言しました。
だいぶ気がラクですよ~。(^^

今日はゆっくり後初めての記事をアップしました。
カリンさんの大好きな「パリの恋人」です!
Posted by みつおみつお at 2008年04月23日 17:45
>mengさん

mengさんの祝福、ありがたくいただきましたよ~。(^-^
そしてmengさんもお誕生日おめでとうございます!
誕生日、1日違いだったんですね!
僕が“オギャ~!”って生まれた翌日に、
mengさんが生まれたんですね(って年が違いますが…)。

本当に、バベルの壁さえなければ、
mengさんと直接お話できたらいいだろうなーって思ってます。
Posted by みつおみつお at 2008年04月23日 17:50
こんにちは
私は橋本先生がお書きになった「愛のぼたん雪」というレズビアン小説が大好きで、昔ハマってましたので、この「虹のオルゴール」もぜひ読んでみたいです。
「いつも二人で」・・・・あくまでも私の想像ですが「この映画のオファーがきた時は、オードリーとメル・ファーラーの夫婦関係は破綻寸前だったんだろうと思いますね。「オードリー映画にしては、内容が大人びている」と書いてた映画評論家がいましたが、私はあの作品を、当時のオードリーの心境が投影された作品としてとらえてます。
このブログはオードリーについて書く為のものなのに、ヴィヴィン・リーについて書くのはちょっと気がひけますが、昔川喜多かしこさんが、「イギリスの劇評家たちは、ヴィヴィアン・リーの事を「舞台女優としては線が細すぎる」とといっている」とお書きになっていたのが印象に残っています。ヴィヴィアン・リーが喉から手が出るほどほしかったのは、アカデミー主演女優賞ではなく
ローレンス・オリビエの妻にふさわしい、舞台女優としての評価だったのではないかと(これまた私の想像ですが)、そう思ってます。
でも、「終電車」のカトリーヌ・ドヌーブって、そんなドスドスした歩き方してましたっけ(笑)?今度、DVDを借りて、チェックしてみようと思います(笑)。
Posted by ヴェロニカ・ハメル at 2020年11月14日 06:42
こんばんは!

ぜひこの本も読んでみてくださいねー。
「いつも2人で」は僕もオードリーのやつれっぷりから見ると、やっぱり離婚に向けて悩んでいたんだろうなーと思います。
次の「暗くなるまで待って」ではもういつものオードリーでしたし、小森のおばちゃまと意味深なインタビューをしていますから、「いつも2人で」が転換点だったのだろうと思います。

ヴィヴィアン・リーのことは、ほぼそのままのことがこの本に書いてましたよ。
イギリスの、オリヴィエを持ち上げて、ヴィヴィアン・リーをいつも辛辣に批判していた批評家が、のちにその誤りを認めていたみたいですね。「あの時は若かった。」と。ヴィヴィアン・リーの死後なので、遅かったですけど…。
ヴィヴィアン・リーはその批評家の批評で精神的にやられていたようです。
今のSNSとかもですけど、人の心を抉るようなのはやっぱりいかんですよね。
ネットででも、批評家気取りの人がいろんな映画を断罪してたりしますけど、その人たちには映画が悪いのではなく、“自分には合わなかっただけかもしれない”とか、“自分に判断能力が足りないのかもしれない”という見方が無いみたいなのが恐ろしいなーと思います。
僕はそういう批評眼は持ち合わせていないので、それでオードリーの映画を批評するブログではなく、オードリー関連の物を紹介するブログになってます。
昔の双葉十三郎さんのような批評家が欲しいところですねー。

ドスドス歩く「終電車」のカトリーヌ・ドヌーブは、映画を見てないのでなんとも言えませんが、橋本治さんのそういうところをちゃんと見てるのが凄いなー!って思います。
映画を見てみたくなりますもんね。
Posted by みつおみつお at 2020年11月14日 18:10
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