2016年12月22日

「戦争と平和」日本公開60周年記念!1957年1月号「映画の友」

 今日は「戦争と平和」が日本で公開されてちょうど60周年に当たります!

 おお〜〜〜っ!おめでとうっ!パチパチパチ。

 日本公開は1956年12月22日の東京の松竹セントラル劇場が最初です。

 wikiなどで日本公開が12月5日なんて書いてありますが根拠のない誤りです。

 12/22が最初の公開だというのは、松竹セントラル劇場の冊子型チラシに直接書いてあることからもわかりますし、オードリーのシネアルバムにも12/22だと明記されています。

 地方にいたってはもっと遅く、1957年になってからの公開が多いです。
 名古屋・京都・札幌などの大都市でも1957年2月の公開。

 さて、そんな公開60周年の「戦争と平和」ですが、何を紹介しようと思いましたが、ほどんと紹介し終わっているので、73年リバイバルチラシとかLDとかも考えましたが、やはり公開60周年という意味で、本当に60年経っている物にしました!

 というわけで今回紹介するのは洋画雑誌「映画の友」1957年1月号(発売は1956年11月)です。
 これにはいよいよ封切りされる「戦争と平和」の作品紹介、及び裏表紙に広告が載っています。

 この時期の映画は1957年のお正月映画になるので、各社期待の作品を用意しています。
 パラマウント「戦争と平和」の最大のライバルはワーナー「ジャイアンツ」。

 「ジャイアンツ」は、この作品撮影終了直後にジェームス・ディーンが交通事故で亡くなったので、遺作となったもの。
 なので、この作品が日本初公開となるこの時はもう既に故人となっていました。

 今でこそ過去の大スターになってしまい、若い人からすると “誰、それ?” な感じかもしれませんが、当時のジェームス・ディーンが若者に与えた影響は相当大きかったらしく、その勢いは70年代でも衰えていませんでしたね。

 その「ジャイアンツ」と「戦争と平和」ですが、「映画の友」4月号には “動員数では「ジャイアンツ」、配給収入では「戦争と平和」” だと書かれていました。

 日本では1956年度の配給収入で3位、アメリカでは1956年度の興行収入で4位に入っており、どちらも大ヒット!

 少なくとも1967年時までは、「戦争と平和」は64年リバイバルと合わせて、日本で公開された全洋画の上位20傑に入っていました。

 アメリカではベストテンに入ったオードリー映画は他に「尼僧物語」「シャレード」「マイ・フェア・レディ」と全4本しかありません。

 本文では最初のモノクログラビアページでオードリーのポートレート(←)。
 この時期は「昼下りの情事」が撮影中なので、オードリーの新しい宣伝写真が載っています。

 でもこのオードリーはちょっとやつれてますね。
 オードリーが疲れると、すぐに顔に出る目の下の筋がくっきり出ています。

 なのでその後の写真集では収録されず、今となっては珍しい画像になってますね。

 最後の方のページではクイズで「ローマの休日」も(↓)。

 昔は字幕が縦書きで、読みにくい書体で、しかも3行もあったんですね!
 画面の1/3くらいを字幕で取られてます。

 そして「ジャイアンツ」でジェームス・ディーンに重点を置いた紹介の後で「戦争と平和」の紹介が始まります。
 まずはオードリーだけのカラーページ。

 当時の「映画の友」はカラーページがめっちゃ貴重!
 表紙周りと広告を除くと、3ページ分しかフルカラーはありません。そのうちの1ページを「戦争と平和」が使っています。残りは「八月十五夜の茶屋」と「オクラホマ!」。

 これ、のっぺりした画像なので “着色?” と見間違えそうですが、れっきとした本当のカラー。
 当時はまだまだ印刷技術が低かったんですね。

 そのあとはモノクログラビアを使って5ページ分、筈見恒夫さんの鑑賞手引きが続きます。

 というか、今読む所などほとんどない「スクリーン」では考えられない文章の充実度ですね。
 全体に昔は読む部分が凄く多くて、当時の映画ファンはこれを買って何日も読むのを楽しめたんでしょうねー。

 昔は今では考えられないくらい、堂々と映画評論家と呼べる人がたくさんいました。

 今はネットとかでも映画評論家になったつもりで、自分の好みだけで映画を酷評する人が多くてげんなりします。
 
 さてこの筈見さんの文章で述べている事は、

・原作「戦争と平和」はなんでも入っている小説であり、映画化は困難というか不可能
・現在の映画技術でこの原作の骨格と雰囲気をこれだけ伝えられれば成功
・ヴィダーの演出は戦闘よりもモスクワ撤退よりも敗退シーンに真価が見られる
・映画の風格や貫禄は申し分無いが、もたつく部分が無いとは言えない
・「戦争と平和」の持つエピックな部分を捉える事には成功している
・ヘンリー・フォンダは後半に本領を発揮
・オードリーは「ローマの休日」「麗しのサブリナ」からは大きな飛躍
・オードリーの演技は女心が充分描けていない。愛される女という部分では成功
・メル・ファーラーはもうけ役。アンドレイはファーラーの柄で生かされている

というところでしょうか。
 でもけっして 褒めていないわけではありません。むしろ「戦争と平和」の欠点をわかった上で、これは成功だと書いているようです。

 そしてまだ公開していないのに、早くも後ろのページでは映画評を掲載。
 こちらは登川直樹さんという方。

 [内容] という部分ではそのスケールが「風と共に去りぬ」に比肩しうる物である事、スケールに恥じぬ重厚な作品となったことが書かれています。

 [見どころ] という部分はそのまま掲載します

 “トルストイの「戦争と平和」の映画化というそのことだけで期待を集めるに充分な映画だが、ともすれば散漫に流れやすい大規模の構成をこれだけの集約場面にダイジェストしたのは手柄であろう。
 何よりもキング・ヴィダーの演出が気品と風格をそなえ、個々の場面に全体の雄大なテーマにつながる情感を盛ったのが成功。
 ヘンリイ・フォンダのピエールはミス・キャストと予想していたが案に相違して全体のテーマにもっとも密接な作者の代弁者ともいうべき運命児の人間味を出して力演。
 オードリイ・ヘップバーンのナターシャも、メル・ファラーのアンドレイも好い。
 しかしこの映画の最大の見ものは何といっても後半に入ってのナポレオン進攻を邀撃(ようげき:迎え撃つこと)する大スペクタクル戦争場面。そしてまた、捕虜となったピエールを中心とする厳寒の死の行進など。
 ダイジェストのつねとして筋の運びが大急ぎだが、転換期の人間がいつの世も体験せねばならなかった時勢の胎動の苦悩が個々人の生き方に反映して描き出された所、器量豊かな力作といえよう。”

 [余談]映画の制作費は600万ドル、戦争場面のエキストラは6000人

 今でこそ目立たない感じがしますが、公開当時はオードリーの成功作としてそれなりに高く評価されていました。
 実際通しで見るのはしんどいですが、3時間半という上映時間としてはうまくまとめていると僕も思います。

 ソ連版の「戦争と平和」と比べる人もいますが、国家の威信をかけ最大7時間越えにもなる4部作の映画と、3時間半の作品を比べるのはどうかと。
 それと、ソ連のナターシャの登場シーンなどのカメラアングルはアメリカ版なぞっているとも。
 アメリカ版初公開時にはソ連もこの作品を褒めていたという記事があります。

 アメリカ版製作当時、ソ連で撮影は不可能。もちろん俳優陣も興行を考えてアメリカのスターから選ばれるため、ロシアっぽい東欧の人を使う事も出来ないという前提があります。

 スラブっぽくないというオードリーのナターシャですが、上記の前提をふまえての上で大成功だと思います。
 当時のスターでオードリーを超えるナターシャの適役はいないでしょう。

 だからこそ当時アメリカで4社が同時に「戦争と平和」の製作を発表し、その全てでオードリーをナターシャに!と獲得競争が始まったんですよね。

 ところでこないだNHKを付けていたら見覚えのあるシーンが…!

 なんと!「戦争と平和」の英国のドラマ版を放送していたのですね。
 僕が見たのはちょうどバルコニーでナターシャがアンドレイのことを喋る有名なシーンでした。

 オードリーの「戦争と平和」のそのシーンがいかにもセット、というところで撮影しているのに比べて、今はもっとリアルなんですね。
 ただし、俳優さんたちが現代メイクなのがちょっと…。

 おそらくお金もそれほどかけられないドラマより、昔の映画の方がちゃちいのは悲しい現実ですね。
 昔はこれくらいのセットでも充分だったのでしょう。ドアを閉めたら壁が揺れるとか当たり前でしたし。

 今はCGもありますし、昔よりずっと豪華に出来上がるのでしょう。

 ただ、気になるのはアンドレイの俳優さん!
 ナターシャはともかく、アンドレイの歴代の俳優さんたちのこれじゃない感はなんでしょうね。



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