2007年06月28日

印象悪し!「ローマの休日 ワイラーとヘプバーン」吉村英夫著

印象悪し!「ローマの休日 ワイラーとヘプバーン」吉村英夫著 う~~~ん…とうとう吉村英夫さんの著作に触れることになりました。
 実は書きたくないのですが、この本から順にクリアしないと書くことができない写真集があるので、とりあえず我慢して書きます。(≧≦

 あらかじめことわっておきますが、僕は吉村英夫さんのオードリーに関する文章は大嫌いです。

 ですので、吉村さんの文章がお好きな方はここで読むのを止めた方がいいでしょう。この本に対してけなすことは鬼のようにあっても、礼賛はいっさいありません。それでも読みます?

 吉村英夫さんの文章に関しては、他のオードリーファンからも“嫌い!”と言う声が多く、逆に“好き!”という人は聞いたことがありません。
 他に吉村さんは映画監督・小津安二郎に関する著作もあるのですが、小津ファンからもどうかと思われている、と言う話が聞こえてきています。

 で、この本ですが、副題に“ワイラーとヘプバーン”というのがついてますが、ワイラーが9でヘプバーンは1くらいです。
 結局ここで著者が書きたかったのは「ローマの休日」にかこつけたワイラー論で、オードリーは単なる添え物程度。

 主に映画の技法であるカット割りや、ハリウッドで吹き荒れた「赤狩り」との関連で「ローマの休日」を分析していくのですが、正直“だから?”っていいたくなるような内容。
 映画の技法からその映画の内面を探っていこうという試みであるようなんですけど、あまりにも技法の方にとらわれすぎていて、本質を落としているように感じます。

 それでもまだワイラーの部分はよくわからないので耐えられるのですが、オードリーの部分にいたっては、怒りがこみ上げるほど感覚がズレてる!
 よくわかるオードリーでこういう状態なので、おそらくワイラーの部分も、わかる人が読んだら、“なんじゃこれ!?”って感じなんだろうという予想がつきます。

 というのは著者の選ぶオードリー映画ベスト5でわかると思いますが、1位「ローマの休日」2位「尼僧物語」3位「昼下りの情事」4位「噂の二人」5位「許されざる者」だそうです。

 そう!この人に決定的に欠落している物!それはオードリー映画を見ながら、オードリーを見てない!ということです。

 選ぶ基準が“志が高いから”とか“ショットが”とか“演出が”とかっていう選び方で、映画の作り方で選出されており、いかにオードリーが活き活きした表情をしている、とか、オードリーの個性をいかにうまく使っているか、という点は選定基準になし。
 そりゃこういうベスト5になりますよね~。そして、映画的出来を取り上げて「ローマの休日」に劣るって書かれても…。

 淀川長治さんのオードリーの見方っていうのも、ちょっとオードリーファンとは違う物を感じるんです。 けれども、淀川さんがオードリー映画の「ローマの休日」から「マイ・フェア・レディ」まででベスト4を選んだ時、1966年時点での「尼僧物語」の“女優オードリー”を最高に認めながらも、“オードリー映画”として見た時に、あえて「尼僧物語」をベストからはずしてました。

 僕は淀川さんが好きか?と訊かれると、“んごんご…”ってお茶を濁してしまいそうですが、さすがに映画評論家としては見方を誤らず、敬意をはらっています。
 が、吉村さんにはそういう観点がまるでないんですよね。映画理論だけでの選出。

 別に「尼僧物語」や「許されざる者」や「噂の二人」がオードリーのベストだ!っていう人がいるのはかまわないんですが(というか嬉しいくらいなんですが)、吉村氏の場合、オードリーを観ずにオードリーを語られても…って思ってしまうのは僕だけなんでしょうか…。

 文章からもオードリーを好きだっていう愛情が全く感じられません。清籐秀人さん、小藤田千栄子さん、林冬子さん、南俊子さん、小森和子さんなどの文章では同じファンとして、そういう愛情の部分を感じることが出来るんですが、吉村氏のには全くないです。

 あと、この著者が捉われすぎて誤っているのが、“すべてはアン王女の上に役柄を重ね合わせて見てきた”って部分。
 本当のオードリーファンではない、「ローマの休日」信奉者(「ローマの休日」をベストに推す人のことではなく、他の作品は無神経にけなすのに、「ローマの休日」に関してちょっと自分の考え方と違うと烈火のごとく怒る、「ローマの休日」だけ崇め奉っている人)はともかく、オードリーファンは映画で“オードリー”を見ているのであって、“アン王女”なんて見てませんよーっ!って。

 この着眼点からしてもう全然ダメだと思ってて、後の著作でもすべてこの調子。しかも文章は断定的でおしつけがましくて、僕はもうほんっとに大嫌いです!

 それと、「ロビンとマリアン」以降のオードリーを“老醜”と形容する人はもうそれだけでアウト!だと思ってるんですが、見事に書いてくれてます。
 “老いる”はまあ許せるとしても、若さがなくなったから“醜い”ってなんですか!これも「ローマの休日」信者のオードリーの若さの輝きだけに目がいってしまうと起きる弊害だと思ってます。

 とにかく、あまりにも偏った見方に終始するこの本が、そして読み返すたびに腹が立つ、吉村英夫さんの文章がとてもとても嫌いです!
 後にいくつかオードリーの本を出しますが、僕の評価では、どれも似たり寄ったり。最悪です。

 後に文庫版も出ましたがどちらも現在絶版。

オススメ度:なし!マイナス1000点くらい。いかに感覚がズレているか知りたいならどうぞ。


追記:この後、吉村英夫氏はさらに暴走を始めます。
オードリーのトンデモ評論をいくつも書くのですが、そちらに関しては、
麗しのオードリー」「誰も書かなかったオードリー」「写真集 オードリー」の記事でどうぞ。


タグ :吉村英夫

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この記事へのコメント
みつおさん、書ききってますねぇ~~~(´∇`)

そしてイキナリこれを持ってきた勇気に拍手(笑)

いや、もう何となくうっすらと先は見えてるんですが、
あの著書とか、あの著書とか・・・・・まだあるんですよね~(^^;;;

ええ、私は楽しみにしております・・・・(爆)
Posted by カリン at 2007年06月29日 00:41
「いつも2人で」を、オードリィ全作品中、最も暗い作品と述べられていることが、
なんだか悔しかったです。これには大反対!

「許されざる者」「噂の二人」をベストに推した際、
オードリィの表情が最も美しいシーンがある点を挙げてあるのは認めるんですがね。
前者・・・鏡に向かって額に墨を引くシーン
後者・・・昂然と顔を上げて歩くラストシーン

ただ「ローマの休日」の社会的背景についてはわかりやすく解説されていたような・・・
なにしろ十年以上前に読んだきりなので、うろ覚えなのですが、
確かこの本が、赤狩りやワイラーの制作動機なんかに興味を啓発される
きっかけになったような記憶があります。

「映画作品」の魅力の側面には、作品によっては存在理由のそも当初から
明るさ、軽さ、親しみやすさ・・・なんてものもあるわけで、
志やテーマ偏重でみていくと、それらの作品の趣旨から外れていくわけだし、
ましてやオードリィ作品として観るのなら観点が違うよなとも思いますね。

僕は基本的にはオードリィ作品には駄作なしっていう立場なもんで、
断罪されるようなもんは一切ないと思っています、エヘン<^!^>
ただし主演作についてですけどね。

し、しかし・・・ この度改定された
AFIのアメリカ映画史上ベストテンからは見事に外れましたよ~(ToT)/~~~
(「マイフェアレディ」落選)・・・しくしく・・・
Posted by まる at 2007年06月29日 00:47
>カリンさん

あはは~。とうとうやっちゃいました。(^^;;;

これを書くために読み直して、“なかでもこれが最悪です!”
って書いてたんですが、最近「麗しのオードリー」も読み返したら
ますます腹が立って、どれもこれも最悪!って思ってしまいました。
で、一昨日、“どれも似たり寄ったり”に書き直したばっかりなんですよー。

最近やっとこの人のオードリー著作が出なくなったので、
非常にホッとしてます。今後も出ないことを祈るばかりです。
一応「麗しのオードリー」は既に記事があがってるので、
あとはあれとあれですよね。また読み返して腹が立つ…。
Posted by みつお at 2007年06月29日 15:54
>まるさん

「いつも2人で」の件は「麗しのオードリー」の方ですね。
それもしっかり書きましたよ~。

ワイラーが「ローマの休日」を製作した件、
赤狩りと本当に関係があったんでしょうかね?
この人は勝手に話を作ることが多いので、
裏づけがないと信用できないんですよねー。

オードリーの作品って、正直夢を与えてくれる“娯楽作品”が多いので、
この人の視点だと、オードリーらしい作品がちっとも入らないんですよね。
そういう考えがあるのはかまわないのですけど、
それを他人にまで押し付ける文章がキライ!なんですよね。
なんか自分の考えが絶対!みたいな書き方で、ムカムカむかむか。

で、まるさん!新しいアメリカ史上ベスト100、
どこで見れます??「いつも2人で」は生き残りました!?
Posted by みつお at 2007年06月29日 16:05
新しいアメリカ映画ベスト100は、以下で。
http://www1.harenet.ne.jp/~sato2000/movie/afi/afi100movies-10anniversary.html

98年のオールタイムベスト10では、91位だった「マイフェアレディ」が、
唯一のオードリィ作品でしたが、
今回の2007年改定版ではあえなく落選~

「いつも2人で」は、2002年の恋愛映画ベスト100のほうですよね。
偉大なるラヴストーリーベスト100とか情熱的な映画ベスト100とか
呼び名はあるようですけども、
オードリィ作品は、なんと5本も入選!
同姓のキャサリンのも5本入り、二人のヘップバーンが10分の1を制したって
コメントがありました。
Posted by まる at 2007年06月30日 22:16
まるさん、ありがとうございます!
うわー、残念ですねー、「マイ・フェア・レディ」。
また10年後には復活してもらわないと!

そういえば、歴代スリラー・サスペンス映画だったかな?では
「暗くなるまで待って」も入ってましたよね。

恋愛映画100に「いつも2人で」を入れてくれる
アメリカ人さんには大感謝!です。(^-^
次回も入ってたらいいな~。
Posted by みつお at 2007年07月01日 23:13
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