2007年08月15日

フレッド・ジンネマン自伝…「尼僧物語」について

 今日はオードリーの映画の中で、唯一第二次世界大戦に接近した映画である「尼僧物語」関連のものを紹介します。

 これはキネマ旬報社から1993年に発行された「フレッド・ジンネマン自伝」です。

 もちろんフレッド・ジンネマン監督は、オードリーの「尼僧物語」を撮った人です。
 他には「真昼の決闘」「地上より永遠に」「オクラホマ!」「日曜日には鼠を殺せ」「わが命つきるとも」「ジャッカルの日」「ジュリア」などが有名な、巨匠の一人。

 ここではフレッド・ジンネマン監督の人生が各章になっている映画に絡めて書いてあるのですが、明らかに映画とは関係ない自分のことは最小限に抑えられています。

 これはやはり触れたくないこと、触れられたくないことがあるのでしょう。両親の死に関してもさらりとホロコーストで死んだ、と書いてあるだけ。

 ただ、これらの書かれなかったことへのジンネマン監督の考えが映画「山河遥かなり」や「地上より永遠に」となって結実していくのだと思います。

 “集団ヒステリー”というべきマッカーシー旋風が吹き荒れた50年代初めにも、卑劣な監督ギルドの投票用紙には返信せず、を貫き通し「真昼の決闘」としてやはり自分の考えを述べたジンネマン。
(この時代に「ローマの休日」の脚本家、ダルトン・トランボが排斥された)

 このようなジンネマン監督だからこその「尼僧物語」なのでしょうね。

 さて、「尼僧物語」の章は、豊富で珍しい画像ともあいまって、非常に充実した物となっています。
 ここでわかることもかなり多く、後に各オードリーの伝記作家によっても引用されることになる(勝手に少し改変されたりもしている)事柄の、正確なオリジナルがここで読めます。

 「戦争と平和」をマイク・トッドと組んでオードリー主演で撮ろうと考えていたこと。
 実は17年間の物語であること(これには僕もショックを受けました!)。
 修道院長の助手の尼僧はジンネマン監督の奥さんであること。
 オードリーたち、“我々の尼僧”が撮影の合間にタバコをすうのを見て、黒人達が“自分の目が信じられなかった”、そして誰かが“彼女達はアメリカの尼僧だから”と言うと納得したこと。
 前日にリハーサルされながら、1日で水位が下がり、撮影されなかった底なし沼の話があったこと。
 撮影で出会ったコンゴの尼僧や宣教師達が翌年の革命でほとんど命を落としたこと。

 などなどです。

 「尼僧物語」やその他の作品の秘蔵の話としても、「尼僧物語」画像集としても、ジンネマン監督の自伝としても興味深く、大変価値のある1冊です。

オススメ度:★★★★




タグ :尼僧物語

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この記事へのコメント
映画人に関する著書の中でも、好著の部類ですよね。
決して逃げない男、奇をてらわない男、ジンネマン監督。
撮影中、パニックを起こして頭を抱えこんでいる写真が
今も印象に残っています。
「尼僧物語」の画像は確かに貴重なものも多く、
修行僧時代の彼女をやや俯瞰にとらえたアップ画像は特に素敵でした。
監督はオードリィの才能と人柄の両面で絶賛してましたね。
撮影中あまりの高温多湿に耐え切れず、彼女が唯一の要望(エアコン)を
したのに対し、間違えて送られてきたのがなんと加湿器だった・・・
というのはこの本に載ってませんでしたっけ?
ラストで僧衣を脱いだガブリエルの髪に白髪が混じっていたので、
ああ相当の年月が経過してるんだろうなと初めて実感したのですが、
監督はそうしないと観客にわからないようにした自分の演出は、
ちょっと失敗だったと述懐してましたね。

ところで、オードリィの才能・人柄両面について、
自伝の中で絶賛した監督には、他にもワイルダーやヤング監督もいましたね。
ヤング監督のほれ込みも相当なものだったようで、
だからこそ自作の中でも「暗くなるまで待って」はお気に入りだったようです。
「暗くなるまで待って」は同業者の他監督達から賛辞の電報等が寄せられ、
そのことも監督の気をよくしたようですが、なんとその中に、
「人に手紙なんか絶対書かないような、あのフェリーニ」(ヤング監督・談)
も含まれていたことには、僕もびっくり!
ああ、しかしその十数年後にミソをつけてしまうことになろうとは・・・

話がそれてしまいました。
とにかく、このジンネマン自伝のような本の翻訳版を出してくれたことは、
本当に快挙だったな~と思っています。
Posted by まる at 2007年08月20日 00:50
そうですよね!これは本屋で立ち読みしていた時、
僕は“買うべき!”って思いましたし。

パニック写真、確かに僕も印象に強いです!
しかもなぜパニックになったのかは全然触れられてないので、
気になって気になって(笑)。

「尼僧物語」の画像がほとんど写真集でも掲載されない昨今、
これらの掲載画像は本当に嬉しかったです!
オードリーが写ってなくても、修道院がセットだとわかる画像や、
“翌年ほとんど殺された”とショッキングなコメントの付いている
コンゴでにこやかに手を振る人々の画像は心に残りました。

エアコンが加湿器に…って話の初出は
ハイアムの伝記じゃなかったでしたっけ?あれ?(^^;

白髪の話は本当に僕には青天の霹靂で、えっ!17年!?ってビックリ仰天状態!
どうみてもオードリーが一緒なので。
これを読むまで、10年も経ってないお話だとばかり思ってました。

それとテレンス・ヤング監督のお話は初めて伺う話で、
とってもお役立ち情報でした!まるさん、本当にありがとうございます!
こうしてお話できることで、またオードリーへの知識が深まるのは
ありがたいですね。(^-^

しかし、フェリーニといい、ジャン・ピエール・メルビルといい、
「暗くなるまで待って」はえらくプロ受けする作品だったんですね!
で、“十数年後にミソ”って何のこと?ドーネン監督みたいに
知らない駄作でも作ったのかな?と思っていたら…
「華麗なる相続人」のことだったんですね!きゃ~~~。(^^;;;

なんか同時期、「愛と哀しみの果て」の出演依頼を受けてたそうじゃないですか!
後のメリル・ストリープの役だったそうで、そちらだったら代表作だったでしょうに。
ただ「愛と哀しみの果て」、ストーリーを読む限りではオードリー向きでもないような…。

カート・フリングスの作品選びも“?”ですが、
オードリーも「華麗なる相続人」と「ニューヨークの恋人たち」に関しては
ちょっと判断を誤った感が強いですよね。
脚本を読んだであろうに、疑問は湧かなかったの?って正直思います。

とはいっても、作品が全く無いよりも、僕は「華麗なる相続人」と
「ニューヨークの恋人たち」でオードリーを観れたので良しとしておきます。(^^

せっかくなら「華麗なる相続人」も「愛と哀しみの果て」も「ニューヨークの恋人たち」も
「愛と喝采の日々」も出ていて欲しかったですね。
Posted by みつお at 2007年08月20日 02:14
>「華麗なる相続人」と「ニューヨークの恋人たち」

ベン・ギャザラの魔法じゃよ、きっと。(勝手に決めつけ)
ただ後者って、オードリィはともかく、
作品としてはなかなか混沌ぶりの楽しい群像劇だったような印象があります。
それと以前紹介した、「華麗なる相続人」の海外版DVDですが、
映像面ではなんと最高点(10点満点)がつけられていましたね。
確かにキャプチャーは凄く鮮明で美しかったです。
70年代くらいから80年代、(90年代前半も含む・・・かな)
現像プリントが大雑把なマスプロで、我々観客は損していたのかもしれません。
ただし、作品や特典なんかは低評価でした~ 仕方ないか^^;

後から出てくるソフトにどんどん綺麗なのが生まれてきますね。

修復版「マイ・フェア・レディ」があって・・・
カルトな「パリの恋人」「ティファニー~」はLD時代に既に新版が出てたし、
ニューマスターの「暗くなるまで待って」がHI-VIで結構高評価されてて、
で、DVD時代になってからでは、なんていっても
10年くらい前の「シャレード」クライテリオン版!画期的でしたもんね。
21世紀に入り「ローマの休日」レストア版が華々しく売り出され、
とうとう本家アメリカFOX版「いつも2人で」が一昨年に発売
今度は「パリの恋人」アニヴァーサリー版が出る!(出来は如何に?)
いずれ次世代ソフトにオードリィものが選ばれるようになると、
どんな風なのか楽しみです。
Posted by まる at 2007年08月20日 23:48
>ベン・ギャザラの魔法じゃよ、きっと。(勝手に決めつけ)

(爆)。いやしかし、ベン・ギャザラの魅力は僕には全くわかりません。
こんなこと、一度でもベン・ギャザラにホレたオードリーに対しても
失礼なんですけどね(笑)。

でも共演者に惚れるにしても、他にもいっぱいよさげな人はいるような…
って思ってしまいます。(^^;;;

「ニューヨークの恋人たち」、実は僕の中でのワーストかもしれません…。
以前は「おしゃれ泥棒2」かと思ってたんですが見直したらそれほどでもなかったので。
それよりも、魅力の不明なベン・ギャザラを好きな女たちが仲良くしている、
っていう設定の「ニューヨークの恋人たち」に大きな“???”が飛び交うんですよね。
オードリーの演じるアンジェラもなんかふらふらしてて、
キャラ的にはちょっとソンしてるような…。

なんか、オードリー作品では珍しく“何度も観たい!”と思わない作品です。
アメリカでは既にDVDが出てますので、日本でも早く出して欲しいですね。
その時にまたもう一度見てみます。

それと「華麗なる相続人」DVD、日本と海外盤は映像のクオリティが違うんでしょうか?
一応ジャケットは一緒のようですが…。

修復版DVDですが、本国アメリカで人気の無い作品は分が悪いですね。
「昼下りの情事」や「噂の二人」なんて、日本では評価が非常に高いですが、
アメリカではそうでもないですもんね。
全世界で分が悪い「パリで一緒に」や「緑の館」はもっとですが。(^^;A

そういえば「シャレード」のクライテリオン盤は
日本では結局発売されずに終わるんでしょうか…。
スタンリー・ドーネン監督のお話、聞きたかったな~。
Posted by みつお at 2007年08月21日 17:52
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