2008年07月07日
「オンディーヌ」ジャン・ジロドゥ 二木麻里 訳の現代語版
これは今年(2008年)3月に光文社古典新訳文庫として発売されたばかりの、ジャン・ジロドゥの戯曲「オンディーヌ」です。
「オンディーヌ」の翻訳としては、白水社から「ジロドゥ戯曲全集第5巻」に所収されて2001年に復刊発売(もとは1950年代発売)されているのは知っていたのですが、ちょっと値段が簡単に手が出る物ではなかったんですよねー。
それで延ばし延ばしにしてたら、光文社から文庫が出たのでこっちを買ったというわけ。(^^;
読んでみてですね、感想は、結構面白かったですよ。現代語訳で読みやすかったし。
でもこの現代語訳というのが諸刃の剣。読みやすくはなったけど、なんかオンディーヌが軽薄に見えるんですよね。
で、オンディーヌをオードリーで考えたい僕としては、言葉使いを脳内変換しなければならないところが多々ありました。
この「オンディーヌ」は劇団四季が取り上げているそうなので、今回文庫になったんでしょうが、劇団四季もオードリーの舞台も見ていない僕はこの現代語訳のだけで読んだ感想なんで申し訳ないのですが…。
まず、第1幕はオンディーヌとハンスの出会い。オンディーヌがハンスを“きれい!”と形容した段階で、僕の中でのメル・ファラーの顔に×印が付きました。
こういう設定なのに、メルがオードリーとの舞台にこれを選んで、自分がハンスを演じるなんて図々しい(笑)!
第2幕がとても不思議な展開。水の精の王が化けている奇術師のせいで、時間が何度も早送りされるんですよね。そしてオンディーヌとハンスの結婚式になるのですが、ここでのオンディーヌの言動が、ハンスでなくてもイライラするほどの思慮のなさ。これもきっと現代語のせいで、よりオンディーヌが浅はかに見えるんでしょうねー。
第3幕はハンスとハンスの元の婚約者ベルタとの婚礼、そしてオンディーヌの裁判になるのですが、第2幕でオンディーヌとハンスの深い愛が描かれていないせいか、オンディーヌの軽率さで離婚になったのかと、あまりの唐突な展開に僕はビックリ!それで最後はハンスの死、そして記憶を失うオンディーヌと来るので、感動とか深い悲劇を味わうヒマもありませんでした。(^^;A
う~~ん、オンディーヌとハンスの愛が深く描かれてこそ最後の悲劇が活きるんでしょうけど、ちょっとこれではねー。
もちろん舞台の場合、上演時間の問題もあるし、この戯曲では淡々と描かれてても、舞台では俳優さんが演技で表現するので当然味わいは変わってくるのでしょうけども。
長い解説を読むと、この「オンディーヌ」には悲劇性と喜劇性があるそうで、ずっと悲劇だと信じて読んでいた僕は第2幕の軽はずみな言動のオンディーヌの部分が笑うところだったと知ってこれまたビックリ!
他にも、裁判官が“火あぶりにしたら死んだので水の精だった”とか“水に沈めたら溺れ死んだので火の精だった”とか恐ろしげな魔女裁判的発言も眉をひそめていたのに、これも笑うところだったらしく、全然ツボを突けてない僕は、自分に呆れました。
また、1939年ジロドゥの「オンディーヌ」成立までの図が載っていて、1811年フーケの「ウンディーネ」がベースになっているのがわかるんですが、そういえばこの表にはないけど、僕の好きなチャイコフスキーも1869年に「ウンディーネ」のオペラを作曲したよなーって思いました。
チャイコフスキーは出来が気に入らなかったりすると、よく破棄してしまったので、完全版はこの世に残ってないんですけどもね(もったいない!)。
なお、この本にオードリーのことは全く出てきません。あしからず。
でも今回これを読んで思ったのは、“きれい!”なハンスがメル・ファラーでいいのか?というのはおいといて、メルがオードリーとの最初の共演にこれを選んだのはまさに暗示的!
だって、誰もこの点を指摘してないんですけど、オードリーとメルのその後は、まさにオンディーヌとハンスそのものなんですよ!
ハンスが制御できないオンディーヌは、メルが手の届かない所までスターへの階段を昇ってしまったオードリー!
そして、ハンスが他の女性と結ばれることになった時に、ハンスは死に、オンディーヌは記憶を失うんですが、それはメルが浮気をし続けたために、オードリーがメルへの愛情を完全に失ったことに置き換えることができます。
その後にオードリーとメルが共演する作品は、「戦争と平和」にしろ「マイヤーリング」にしろ、うまく二人が結ばれないお話ばかり。最初にメルはもっとハッピーエンドな作品を選んだ方が良かったかもしれないですねー。
…というわけで、なんかこれでよかったのだろうか?っていう僕の「オンディーヌ」体験だったんですが、今度はもっと文語調であろう白水社版の「オンディーヌ」も読んでみたいと思っています。この作品の真価は両方読んだその時にわかるんじゃないかなーと。
ちなみに別の訳者さんですが、同じ光文社古典新訳文庫での別の本で、誤訳論争が起こっていることも付け加えておきます。
2つ目の画像は「映画ストーリー臨時増刊 オードリー・ヘップバーン」に載っていた画像ですが、「オンディーヌ」の扮装のままでニューヨーク大サーカスのオープニングパレードをするオードリーとメル・ファラー。
このときの映像が残っていて、YouTube に載ってたりするもんでビックリ!よくまあこんな昔の映像が残っていましたね!って。
オススメ度:★★(読みやすいし、今なら入手しやすいので)
「オンディーヌ」の翻訳としては、白水社から「ジロドゥ戯曲全集第5巻」に所収されて2001年に復刊発売(もとは1950年代発売)されているのは知っていたのですが、ちょっと値段が簡単に手が出る物ではなかったんですよねー。
それで延ばし延ばしにしてたら、光文社から文庫が出たのでこっちを買ったというわけ。(^^;
読んでみてですね、感想は、結構面白かったですよ。現代語訳で読みやすかったし。
でもこの現代語訳というのが諸刃の剣。読みやすくはなったけど、なんかオンディーヌが軽薄に見えるんですよね。
で、オンディーヌをオードリーで考えたい僕としては、言葉使いを脳内変換しなければならないところが多々ありました。
この「オンディーヌ」は劇団四季が取り上げているそうなので、今回文庫になったんでしょうが、劇団四季もオードリーの舞台も見ていない僕はこの現代語訳のだけで読んだ感想なんで申し訳ないのですが…。
まず、第1幕はオンディーヌとハンスの出会い。オンディーヌがハンスを“きれい!”と形容した段階で、僕の中でのメル・ファラーの顔に×印が付きました。
こういう設定なのに、メルがオードリーとの舞台にこれを選んで、自分がハンスを演じるなんて図々しい(笑)!
第2幕がとても不思議な展開。水の精の王が化けている奇術師のせいで、時間が何度も早送りされるんですよね。そしてオンディーヌとハンスの結婚式になるのですが、ここでのオンディーヌの言動が、ハンスでなくてもイライラするほどの思慮のなさ。これもきっと現代語のせいで、よりオンディーヌが浅はかに見えるんでしょうねー。
第3幕はハンスとハンスの元の婚約者ベルタとの婚礼、そしてオンディーヌの裁判になるのですが、第2幕でオンディーヌとハンスの深い愛が描かれていないせいか、オンディーヌの軽率さで離婚になったのかと、あまりの唐突な展開に僕はビックリ!それで最後はハンスの死、そして記憶を失うオンディーヌと来るので、感動とか深い悲劇を味わうヒマもありませんでした。(^^;A
う~~ん、オンディーヌとハンスの愛が深く描かれてこそ最後の悲劇が活きるんでしょうけど、ちょっとこれではねー。
もちろん舞台の場合、上演時間の問題もあるし、この戯曲では淡々と描かれてても、舞台では俳優さんが演技で表現するので当然味わいは変わってくるのでしょうけども。
長い解説を読むと、この「オンディーヌ」には悲劇性と喜劇性があるそうで、ずっと悲劇だと信じて読んでいた僕は第2幕の軽はずみな言動のオンディーヌの部分が笑うところだったと知ってこれまたビックリ!
他にも、裁判官が“火あぶりにしたら死んだので水の精だった”とか“水に沈めたら溺れ死んだので火の精だった”とか恐ろしげな魔女裁判的発言も眉をひそめていたのに、これも笑うところだったらしく、全然ツボを突けてない僕は、自分に呆れました。
また、1939年ジロドゥの「オンディーヌ」成立までの図が載っていて、1811年フーケの「ウンディーネ」がベースになっているのがわかるんですが、そういえばこの表にはないけど、僕の好きなチャイコフスキーも1869年に「ウンディーネ」のオペラを作曲したよなーって思いました。
チャイコフスキーは出来が気に入らなかったりすると、よく破棄してしまったので、完全版はこの世に残ってないんですけどもね(もったいない!)。
なお、この本にオードリーのことは全く出てきません。あしからず。
でも今回これを読んで思ったのは、“きれい!”なハンスがメル・ファラーでいいのか?というのはおいといて、メルがオードリーとの最初の共演にこれを選んだのはまさに暗示的!
だって、誰もこの点を指摘してないんですけど、オードリーとメルのその後は、まさにオンディーヌとハンスそのものなんですよ!
ハンスが制御できないオンディーヌは、メルが手の届かない所までスターへの階段を昇ってしまったオードリー!
そして、ハンスが他の女性と結ばれることになった時に、ハンスは死に、オンディーヌは記憶を失うんですが、それはメルが浮気をし続けたために、オードリーがメルへの愛情を完全に失ったことに置き換えることができます。
その後にオードリーとメルが共演する作品は、「戦争と平和」にしろ「マイヤーリング」にしろ、うまく二人が結ばれないお話ばかり。最初にメルはもっとハッピーエンドな作品を選んだ方が良かったかもしれないですねー。
…というわけで、なんかこれでよかったのだろうか?っていう僕の「オンディーヌ」体験だったんですが、今度はもっと文語調であろう白水社版の「オンディーヌ」も読んでみたいと思っています。この作品の真価は両方読んだその時にわかるんじゃないかなーと。
ちなみに別の訳者さんですが、同じ光文社古典新訳文庫での別の本で、誤訳論争が起こっていることも付け加えておきます。
2つ目の画像は「映画ストーリー臨時増刊 オードリー・ヘップバーン」に載っていた画像ですが、「オンディーヌ」の扮装のままでニューヨーク大サーカスのオープニングパレードをするオードリーとメル・ファラー。
このときの映像が残っていて、YouTube に載ってたりするもんでビックリ!よくまあこんな昔の映像が残っていましたね!って。
オススメ度:★★(読みやすいし、今なら入手しやすいので)
Posted by みつお at 16:00│Comments(0)
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