2024年02月09日
「ローマの休日」公開前夜 月刊「パラマウント」1954年3月号

表紙はジャネット・リー。僕はこの人の作品を有名な「サイコ」も含めて1本も見たことないです。
初期の3号や5号の頃は15日発行だったのですが、1954年からは1日発行に切り替わっています。
3月号の頃にはアメリカではもうアカデミー賞のノミネートが発表されています。
そこでは「ローマの休日」が10部門もノミネートされて、さらに前評判を煽ることになっていますね。

まあ「ジュリアス・シーザー」と「聖衣」は大作でおおっ!と言わせただけで、出来の方は “?”って感じだったようなので、やっぱり「シェーン」と「地上より永遠に」が本命だと見られていたようです。
それらの中で、「シェーン」「ローマの休日」「第十七捕虜収容所」はパラマウント社の作品なので、うまくいけば主要な部門は全部パラマウントになるかも!と期待されていたようです。
ところが実際に発表されると、「地上より永遠に」が8部門を独占して、主要な賞でパラマウントが取れたのはオードリーの主演女優賞と、「第十七捕虜収容所」のウィリアム・ホールデンの主演男優賞のみでしたね。

それでも主演女優賞では “予断を許さないが、ヘップバーンとの声が高い” と書かれていて、やっぱりアメリカでもオードリーだと言われてたんやなーと、当時の様子が知れて興味深いです。
さて、先にアカデミー賞のことを書きましたが、まず最初に出てくるのは、グラビアページの「麗しのサブリナ」撮影中のビリー・ワイルダー監督とウィリアム・ホールデン。ここでは「サブリナ・フェア」と書かれています。完成後は「サブリナ」だけになってしまう原題ですが、まだ公開前の段階では戯曲と同じ「サブリナ・フェア」だったのですね。

そんなダブル受賞となった人気絶頂のホールデンとオードリーの共演の「麗しのサブリナ」ですから、パラマウントはおいしかったでしょうねー。
鉄は熱いうちに打て!とばかりに当時は珍しかった日米同時公開に向けてパラマウント日本支社の人は奔走し、結局アメリカよりも先に日本で公開しました。
さて、まだ「ローマの休日」は公開してませんが、その前評判は凄く、ここでもグラビアページの次には牧和子さんという方の絵と、田中映一って人の文章が最初に載せられています。
イラストを描いた牧さんは、編集後記で“パラマウント宣伝部に来る度にオードリー・ヘップバーンの名前と写真を見ない日はない位、オードリー旋風が吹き巻くっている。私なんか夢に迄彼女の顔が浮かんでくる。早く実物を見ないと” と書いています。
もうすでに世の中はオードリーの大旋風が始まっていたんですね。

でも、キャプションでは「サブリナ・フェア」でしたが、この目録の最新作のところでは「サブリナ祭」って書いてある!
“フェア”を“祭り”の意と訳したんですね。いや、本当は “麗しの”の意味の “フェア”だったんですけどね。
そのまま次にはさっきのアカデミー賞のことが書いてあるんですが、その次は「パラマウント・スタジオ・ニュース」ってページで、「ローマの休日」の公開が4月27日に日比谷映劇で公開されることが書かれています。

次のオードリーは、“明日のスター 昨日のスター”というコーナーで、2000万人のファンを持つというアメリカの映画批評家(今でいうインフルエンサーですね)によって “牝鹿の如き妖精 オードリー・ヘップバーン”ということで紹介されています。

ここでは淀川長治氏がオードリーに比較できるような往年のサイレント映画の女優ということで、ルイズ・ブルックスという女優を挙げています。
ただ、近代的なオードリー、若々しいオードリーに比較できる無声映画のスタアは見当たらない、と述べています。それでもパラマウント映画登場の鮮やかさで今日のオードリーのそれと似ている、と書いています。
さらには公開直前の次号用に “「ローマの休日」に期待するもの”というテーマで文章の募集が呼びかけられていますし、裏表紙の裏(表3)ではオードリーのモノクロ写真が4枚組100円(送料込み)で頒布されています。
100円つっても、当時の物価を考えると今の2500円くらいなんですけどね。

他のパラマウントの新人女優さんが4人1組で写真頒布されているのに比べると、いかにオードリーが特別扱いかがわかりますよね。
とにかく、まだ「ローマの休日」公開には1か月以上あるにもかかわらず、当時の世の中がオードリーで盛り上がっているのが実感できます。
僕などはもう物心ついてオードリーを好きになったときには、すでに日本では大スターであることが当然でしたから、この新星を迎える日本のワクワク感が伝わってくるのが新鮮です。
この記事へのコメント
お久しぶりです。
淀川氏が触れているルイズ・ブルックスの著書ですが、なんと昨年初めて日本語訳されていました。
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336074782/
※『ハリウッドのルル』の「ルル」とは、ブルックスが出演したドイツ映画『パンドラの箱』(1929)での役名
※ジャネット・リーの若き日の作品としては『若草物語』1949年版のメグ役もありました。
淀川氏が触れているルイズ・ブルックスの著書ですが、なんと昨年初めて日本語訳されていました。
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336074782/
※『ハリウッドのルル』の「ルル」とは、ブルックスが出演したドイツ映画『パンドラの箱』(1929)での役名
※ジャネット・リーの若き日の作品としては『若草物語』1949年版のメグ役もありました。
Posted by take at 2024年02月19日 19:20
takeさん、こんにちは!
ルイズ・ブルックスの著書が昨年翻訳出版されていたとは驚きです!
まずルイズ・ブルックスの存在自体、もう知っている人が少ないと思いますし、出版となれば最低でも部数は1000部以上必要ですから、果たして日本にそれだけの買う人がいるだろうか?と考えると、僕が出版社の人間なら恐ろしくて出せません。
購入意欲のある人がたとえ1000人以上居たとしても、それらの人が出版されたということを知らなくちゃいけないわけで、僕からするとあまりに無謀な賭けだと思います。
今の時代、オードリーでも1000部はギリギリなんじゃないかと思いますし、ヴィヴィアン・リーだともう苦しいと思います。
49年版の「若草物語」というと、エリザベス・テイラーが出ていた版ですよね?それも見たことないんですよー!
ジャネット・リーと僕は本当にご縁がなさそうです。
ルイズ・ブルックスの著書が昨年翻訳出版されていたとは驚きです!
まずルイズ・ブルックスの存在自体、もう知っている人が少ないと思いますし、出版となれば最低でも部数は1000部以上必要ですから、果たして日本にそれだけの買う人がいるだろうか?と考えると、僕が出版社の人間なら恐ろしくて出せません。
購入意欲のある人がたとえ1000人以上居たとしても、それらの人が出版されたということを知らなくちゃいけないわけで、僕からするとあまりに無謀な賭けだと思います。
今の時代、オードリーでも1000部はギリギリなんじゃないかと思いますし、ヴィヴィアン・リーだともう苦しいと思います。
49年版の「若草物語」というと、エリザベス・テイラーが出ていた版ですよね?それも見たことないんですよー!
ジャネット・リーと僕は本当にご縁がなさそうです。
Posted by みつお
at 2024年02月20日 09:14
