2024年06月09日
「映画の友」1964年“座談会 タカラジェンヌと「パリで一緒に」”
今回も公開60周年の「パリで一緒に」の話題で。
これも大昔に買った「映画の友」で、切り抜きとして残っているだけなので、1964年の何月号なのかがわかりません。
もしかしたら5月10日に紹介した「パリで一緒に」の誌上プレビューと同じ号だったのかもしれません。もしそうなら、ものすごく「パリで一緒に」でページを割いていることになりますね。
ここでは “座談会 タカラジェンヌと「パリで一緒に」”ということで、どこかの試写室(おそらくパラマウントの日本支社)で見たのであろう宝塚歌劇団の当時のスターの方々と、映画評論家の山本恭子さんが司会となって対談するというもの。
初公開当時に見た一般の人の(宝塚ではスターだけど、映画評論家ではないので)意見が聞けるのは興味深いですね。
山本恭子さんはいわゆるオードリー評論家のおひとりで、よくオードリーの記事をお書きになっていましたし、実際にもこの「パリで一緒に」撮影中にはパリへ行ってオードリー本人にインタビューをしています。そちらも今後紹介できることがあるかもです。
そしてここではないんですが、後年手に入れた別の号では山本さんはオードリーの本質は「噂の二人」にあるんじゃないかみたいなことを書いておられて、僕の意見と全く一緒だったりしたので、おおっ!と思いました。
さて、ここでは当時のタカラジェンヌの淀かほるさん、天城月江さん、水代玉藻さん、高城珠里さん、安芸ひろみさん、南原美佐保さんという方が参加しておられます。
宝塚には詳しくないので、この号を古本屋で手に入れた中学当時でも淀かほるさんしか名前すら存じ上げないという状態。
むかーし小さい頃、母親の友人に連れられて宝塚を見に行ったことがあるのですが、小学生だかそれ以下だかの僕には全然面白くなくて、じっとしてられない時期だったこともあり、早々に席を立ってロビーで遊んでいたイメージがあります。
今から思えば、宝塚歌劇って席を取るのもなかなか難しいんですよね?しかもお高いし、なんか申し訳ないことしたなーと思います。
さてここでは見たばかり(多分見たのは公開前)の「パリで一緒に」について語られていきます。
7ページにもわたる座談会ですが、思いっきりダイジェストでお送りします。
天城:とても楽しい映画でしたね。主演二人の魅力がすごく出てました。オードリーが出てくると何しろ楽しいですね。それにこの映画はとても楽しませるように作ってあるわ。
淀:私もオードリーファン。だから楽しかったわ。それに今度はオードリー、特に可愛いわね。いろいろな衣装を着て出るでしょう?それでオードリーの魅力が一層引き出されているわ。
天城:いつまでも若々しい感じを失わないですね。
淀:こないだの「シャレード」の方がどちらかというとよく出来てたと思うけど、ヘプバーン・ファンとしては彼女の魅力が色々出てる点で楽しかった。
高城:私もとても楽しめました。
水代:はじめに出てくる避暑地の場面。きれいだったわね。
山本:プロデューサーになった俳優ご存知?ノエル・カワードというんですけど。
水代:私は知らない。
山本:皆さん世代が違うのね。
水代:ディートリッヒが出てたわね。
淀:あのディートリッヒ若いわ。もう60くらいになるんじゃない?はじめプログラムを見てなかったからビックリしたわ。ディートリッヒやトニー・カーティスがあんなところに出てくるなんて思わなかったもの。
水代:使い方が面白いですね。
天城:端役みたいな使い方だけど、短いから逆に効果があるともいえる。
南原:私はパリの色々なところが映してあるし、画面がとっても綺麗だったと思います。
淀:最初の出だしがいいですね。オードリーが鳥籠を持って公園を通るところ。あの洋服いいわ。すごく可愛いわ。
安芸:今回ヘプバーンの初めての入浴シーンがあったでしょ?普通だと入浴シーンというとなんだか…ね?でもヘプバーンは清潔な感じね。
淀:そう、こっちまで石鹸のすてきな匂いが匂ってきそうな感じだわ。
安芸:あれで赤ちゃん生んでるなんて思えない。全然若いんですもん。
水代:フランク・シナトラの声だけ聞かせたり、メル・ファーラーがひょっこり出てきたりするご馳走があったから、私は楽しかった。
高城:私はヘプバーンの洋服が素晴らしかったわ。いつも何でもないスタイルのくせに、すごくセンスがあるんですもん。
淀:私ピンクのが良かった。
安芸:ヘアスタイルもすてきですね。
天城:私はナイトガウンが一番きれいだったわ。
山本:この映画はオードリーの魅力をすごく強調した映画だと思うのですけど、彼女の芝居はどうでしょう?
天城:すごく上手い女優ですね。タイピストと劇中劇で違った芝居をしていますね。劇中劇になると少しオーバーにやっているんです。ちょっと舞台的な演技でしょう?だから面白いなと思ったわ。
高城:私ね、タイピストの役のところなんか難しいと思ったわ。劇中劇の方がやりやすそうな感じ。
水代:声がいいわね。私はヘプバーンの全てが好きだわ。
淀:ウィットがあるというのですか、ちょっとしたしぐさや表情にとても魅力があるわ。
安芸:自分のいいところを全部出そうとしているのがわかるわ。
水代:それがあの人の場合はたくまずして出してるでしょう。
淀:わたし、早う「マイ・フェア・レディ」が見たい!
一同:ほんと!
山本:皆さんやっぱりオードリーが絶対的なんですね。
天城:好きですね。宝塚ではみんな好き。
淀:それにいい作品ばかりに出ているでしょう。
(中略:途中に好きなオードリー映画やホールデンのこと、馬車の追っかけっこのところでは遠景ではスタンドインを使っている、などが語られます)
水代:私だけの感じかもしれませんが、洞窟の中の追っかけっこ、ちょっと長すぎてダレた感じがしたわ。
山本:本当は最後まで息もつかせずというのでなければね。
天城:また違う人から見たら、ああいうところが面白いかもしれませんね。
水代:目まぐるしく後から後から面白いことが飛び出すから。
天城:作っている人が楽しんでやってらっしゃるのがわかります。
(中略)
淀:こないだ、何かの週刊誌にオードリーとエリザベス・テイラーの比較が載っていましたね。男性も昔ならテイラーみたいにボアっとした悪女型が魅力的だったけど、今はオードリーみたいに線の細い、それでものすごく体にリズムがあり、表情もどんどん変わる、そういうのが近代の男性に好まれると書いてあったけど、男性の女性に対する見方が変わってきたなと感じます。
(後略)
といった感じになっています。みなさん結構「パリで一緒に」をお気に召していただいたようで、僕としても嬉しくなります。
当時娯楽の王様だった映画。もう一度観たいと思ったら再び映画館に足を運ばなければ見れなかった時代。今みたいにいつでも簡単に家庭でテレビの録画やブルーレイや配信で観れて、途中で止めてトイレに行ったり、ながら見で別のことをしたり、とかは出来なかったんですよね。
映画館でも、観たいと思った時にやってるかどうかわからない。見逃すとなかなか見れないという一期一会のものだったんですよね。
映画は映画館で上映できる権利が1960年くらいまでは5年間、それ以降は7年間と決められていましたから、その期間を過ぎるとフィルムは廃棄され、リバイバルでもこない限り絶対に見れなかったんです。
なのでタカラジェンヌの方々も、最近の口コミに書く批判のようなものではなく、映画を大事にして純粋に楽しんでくださったのが嬉しいですね。
これも大昔に買った「映画の友」で、切り抜きとして残っているだけなので、1964年の何月号なのかがわかりません。
もしかしたら5月10日に紹介した「パリで一緒に」の誌上プレビューと同じ号だったのかもしれません。もしそうなら、ものすごく「パリで一緒に」でページを割いていることになりますね。
ここでは “座談会 タカラジェンヌと「パリで一緒に」”ということで、どこかの試写室(おそらくパラマウントの日本支社)で見たのであろう宝塚歌劇団の当時のスターの方々と、映画評論家の山本恭子さんが司会となって対談するというもの。
初公開当時に見た一般の人の(宝塚ではスターだけど、映画評論家ではないので)意見が聞けるのは興味深いですね。
山本恭子さんはいわゆるオードリー評論家のおひとりで、よくオードリーの記事をお書きになっていましたし、実際にもこの「パリで一緒に」撮影中にはパリへ行ってオードリー本人にインタビューをしています。そちらも今後紹介できることがあるかもです。
そしてここではないんですが、後年手に入れた別の号では山本さんはオードリーの本質は「噂の二人」にあるんじゃないかみたいなことを書いておられて、僕の意見と全く一緒だったりしたので、おおっ!と思いました。
さて、ここでは当時のタカラジェンヌの淀かほるさん、天城月江さん、水代玉藻さん、高城珠里さん、安芸ひろみさん、南原美佐保さんという方が参加しておられます。
宝塚には詳しくないので、この号を古本屋で手に入れた中学当時でも淀かほるさんしか名前すら存じ上げないという状態。
むかーし小さい頃、母親の友人に連れられて宝塚を見に行ったことがあるのですが、小学生だかそれ以下だかの僕には全然面白くなくて、じっとしてられない時期だったこともあり、早々に席を立ってロビーで遊んでいたイメージがあります。
今から思えば、宝塚歌劇って席を取るのもなかなか難しいんですよね?しかもお高いし、なんか申し訳ないことしたなーと思います。
さてここでは見たばかり(多分見たのは公開前)の「パリで一緒に」について語られていきます。
7ページにもわたる座談会ですが、思いっきりダイジェストでお送りします。
天城:とても楽しい映画でしたね。主演二人の魅力がすごく出てました。オードリーが出てくると何しろ楽しいですね。それにこの映画はとても楽しませるように作ってあるわ。
淀:私もオードリーファン。だから楽しかったわ。それに今度はオードリー、特に可愛いわね。いろいろな衣装を着て出るでしょう?それでオードリーの魅力が一層引き出されているわ。
天城:いつまでも若々しい感じを失わないですね。
淀:こないだの「シャレード」の方がどちらかというとよく出来てたと思うけど、ヘプバーン・ファンとしては彼女の魅力が色々出てる点で楽しかった。
高城:私もとても楽しめました。
水代:はじめに出てくる避暑地の場面。きれいだったわね。
山本:プロデューサーになった俳優ご存知?ノエル・カワードというんですけど。
水代:私は知らない。
山本:皆さん世代が違うのね。
水代:ディートリッヒが出てたわね。
淀:あのディートリッヒ若いわ。もう60くらいになるんじゃない?はじめプログラムを見てなかったからビックリしたわ。ディートリッヒやトニー・カーティスがあんなところに出てくるなんて思わなかったもの。
水代:使い方が面白いですね。
天城:端役みたいな使い方だけど、短いから逆に効果があるともいえる。
南原:私はパリの色々なところが映してあるし、画面がとっても綺麗だったと思います。
淀:最初の出だしがいいですね。オードリーが鳥籠を持って公園を通るところ。あの洋服いいわ。すごく可愛いわ。
安芸:今回ヘプバーンの初めての入浴シーンがあったでしょ?普通だと入浴シーンというとなんだか…ね?でもヘプバーンは清潔な感じね。
淀:そう、こっちまで石鹸のすてきな匂いが匂ってきそうな感じだわ。
安芸:あれで赤ちゃん生んでるなんて思えない。全然若いんですもん。
水代:フランク・シナトラの声だけ聞かせたり、メル・ファーラーがひょっこり出てきたりするご馳走があったから、私は楽しかった。
高城:私はヘプバーンの洋服が素晴らしかったわ。いつも何でもないスタイルのくせに、すごくセンスがあるんですもん。
淀:私ピンクのが良かった。
安芸:ヘアスタイルもすてきですね。
天城:私はナイトガウンが一番きれいだったわ。
山本:この映画はオードリーの魅力をすごく強調した映画だと思うのですけど、彼女の芝居はどうでしょう?
天城:すごく上手い女優ですね。タイピストと劇中劇で違った芝居をしていますね。劇中劇になると少しオーバーにやっているんです。ちょっと舞台的な演技でしょう?だから面白いなと思ったわ。
高城:私ね、タイピストの役のところなんか難しいと思ったわ。劇中劇の方がやりやすそうな感じ。
水代:声がいいわね。私はヘプバーンの全てが好きだわ。
淀:ウィットがあるというのですか、ちょっとしたしぐさや表情にとても魅力があるわ。
安芸:自分のいいところを全部出そうとしているのがわかるわ。
水代:それがあの人の場合はたくまずして出してるでしょう。
淀:わたし、早う「マイ・フェア・レディ」が見たい!
一同:ほんと!
山本:皆さんやっぱりオードリーが絶対的なんですね。
天城:好きですね。宝塚ではみんな好き。
淀:それにいい作品ばかりに出ているでしょう。
(中略:途中に好きなオードリー映画やホールデンのこと、馬車の追っかけっこのところでは遠景ではスタンドインを使っている、などが語られます)
水代:私だけの感じかもしれませんが、洞窟の中の追っかけっこ、ちょっと長すぎてダレた感じがしたわ。
山本:本当は最後まで息もつかせずというのでなければね。
天城:また違う人から見たら、ああいうところが面白いかもしれませんね。
水代:目まぐるしく後から後から面白いことが飛び出すから。
天城:作っている人が楽しんでやってらっしゃるのがわかります。
(中略)
淀:こないだ、何かの週刊誌にオードリーとエリザベス・テイラーの比較が載っていましたね。男性も昔ならテイラーみたいにボアっとした悪女型が魅力的だったけど、今はオードリーみたいに線の細い、それでものすごく体にリズムがあり、表情もどんどん変わる、そういうのが近代の男性に好まれると書いてあったけど、男性の女性に対する見方が変わってきたなと感じます。
(後略)
といった感じになっています。みなさん結構「パリで一緒に」をお気に召していただいたようで、僕としても嬉しくなります。
当時娯楽の王様だった映画。もう一度観たいと思ったら再び映画館に足を運ばなければ見れなかった時代。今みたいにいつでも簡単に家庭でテレビの録画やブルーレイや配信で観れて、途中で止めてトイレに行ったり、ながら見で別のことをしたり、とかは出来なかったんですよね。
映画館でも、観たいと思った時にやってるかどうかわからない。見逃すとなかなか見れないという一期一会のものだったんですよね。
映画は映画館で上映できる権利が1960年くらいまでは5年間、それ以降は7年間と決められていましたから、その期間を過ぎるとフィルムは廃棄され、リバイバルでもこない限り絶対に見れなかったんです。
なのでタカラジェンヌの方々も、最近の口コミに書く批判のようなものではなく、映画を大事にして純粋に楽しんでくださったのが嬉しいですね。
この記事へのコメント
お邪魔いたします。
淀かほるさん(男役トップスターとして活躍)は宝塚在団中(1965年1〜2月芸術座・映画公開より前)に外部出演として『サウンド・オブ・ミュージック』のマリア役を演じていました。後の方々もみなさん男役のはずです。
淀かほるさん(男役トップスターとして活躍)は宝塚在団中(1965年1〜2月芸術座・映画公開より前)に外部出演として『サウンド・オブ・ミュージック』のマリア役を演じていました。後の方々もみなさん男役のはずです。
Posted by take at 2024年06月12日 17:57
takeさん、こんばんは!
他の方も男役の方ばかりですか!
なんか僕の知っている時代の男役の方は、ファンの持っているイメージを崩さないようにか、普段から男性のような格好をしていたイメージです。
でもこの時代は、普段は皆さん普通に女性の格好をしてらっしゃいますね。それに口調も女性の口調です。
そういえば、昔阪急電車の中でおそらく宝塚の方の集団をお見かけしたことがあるのですが、みなさん化粧もバッチリでした。
この時代はプライベートと舞台をきっちり分けてらっしゃったんですね。
他の方も男役の方ばかりですか!
なんか僕の知っている時代の男役の方は、ファンの持っているイメージを崩さないようにか、普段から男性のような格好をしていたイメージです。
でもこの時代は、普段は皆さん普通に女性の格好をしてらっしゃいますね。それに口調も女性の口調です。
そういえば、昔阪急電車の中でおそらく宝塚の方の集団をお見かけしたことがあるのですが、みなさん化粧もバッチリでした。
この時代はプライベートと舞台をきっちり分けてらっしゃったんですね。
Posted by みつお at 2024年06月12日 20:37