2016年01月20日

オードリーの命日に 「初恋」1990年ビデオ発売時のチラシ

 今日はオードリー・ヘプバーンの命日です。1993年に亡くなっていますので、23年の月日が流れた事になります。
 …しかし23年も経って、今なお若い人にも知られていて憧れの女性であり続けるというのは凄いことですよね。

 オードリーが「ローマの休日」で現れたとき、そのあまりの新しさに世界中が驚きましたし、日本ではある雑誌で火星人呼ばわりされたこともありました。
 当時の批評家が戦前からの古風な方で、そのオードリーの新しさを表現する術を持っていなかったのですね。

 そしてオードリーの同時代の女優さんたちが、ことごとく今見ると古めかしい(プロポーション、メイク、ヘアスタイル、ファッションなど)のに対して、オードリーだけが古びない新鮮さを保っているのは驚異ですよね。

 オードリー自身もまさかこれほど全世界の人たちに愛され続けるだろうとは、予想もしていなかったでしょう。
 オードリーが主に活躍していたのは、1953年〜1967年のわずか14年だけ、なんですもんね。

 でも未だに全世界で映画がリバイバルされ、カレンダーが毎年十種類以上も作られる残り少ない俳優でもあり、何かとニュースになり、世界で展示会が開かれ、雑誌で特集が組まれ…という事を考えると、おそらく現役かそうでないかにかかわらず、世界で頂点の俳優さんになってしまった、と言い切って良いのではないでしょうか。

 これは演技力の問題でもなく、美しさでもなく、もちろん歌の上手い下手でもなく、もう時を越えてすべてを超えて、オードリー自身も一度も思わなかったであろうトップに立ってしまったのだと思います。
 オードリー自身は目立たない事の方が好きだし、あなたが全俳優さんの中での1番なんですよ!なんて今言ったら、震え上がりそうですよね。

オードリーの命日に 「初恋」1990年ビデオ発売時のチラシ さて、そんな命日にふさわしい感ゼロなのですが、今日は1月繋がりでこの「初恋」の初ビデオ化時の販売チラシの紹介。

 この「初恋」は1952年の作品になります。昔は1951年の作品として知られていましたが、製作国のイギリスで1952年2月公開、アメリカは1952年8月だそうですから、1952年として見るのが正しいのでしょう。

 でももちろん公開日から考えても、この作品は1951年に撮影されているのがわかります。ハイアムの伝記では1951年3月、パリスの伝記では1951年2月からオードリーのシーンが撮影されている事になっています。

 日本ではずっと遅れて、1966年1月に初の劇場公開がされています。なんと50年前の今月ですね!
 前年の1965年には64年の年末から公開された「マイ・フェア・レディ」が全国で順に公開中だったとはいえ、他には「麗しのサブリナ」と「昼下りの情事」がリバイバルになっただけで、新作はとうとう無し。既に「おしゃれ泥棒」の撮影はなされていましたが、公開は66年の年末まで待たなければいけませんでしたから、ファンのもどかしい思いをこの「初恋」が引き受けてくれた事になるのでしょうね。

 ただ、配給会社はNICという小さなところで、果たして全国のどれくらいの劇場で公開されたかまだよくわかっていません。
 東宝・松竹・東映・東急のような大手チェーンじゃなかったし、初公開時にはポスターと立看とプレスは作られたものの、パンフレットは作られずじまいに終わりました。
 それから考えても、ひっそりと公開され、ひっそりと終了したのでしょう。

 でもこうして日本で公開が有った事で、その後も全国各地の自主上映のプログラムに載る事ができるようになり、僕もそういうので見る事が出来たので今は無きNICさんにはとても感謝しています。当時オードリーの初期作品7種8作品の中では唯一観れた作品でした。

 でもまあ内容はとても暗いもので、全然「初恋」などという題名とはそぐわないし、出来もそんなにいいものだとは思いませんでした。むしろ最初に自主上映で観た後は “二度と観なくてもいい!”なんて言ってましたし。
 公開数ヶ月後の雑誌「スクリーン」でも採点は☆☆☆の60点(これは双葉十三郎さんの採点ではないようですが)。これはオードリー全作品で「緑の館」の40点に次ぐ低い数字です。「パリで一緒に」「華麗なる相続人」よりも下で「オールウェイズ」と同点。

 そして、このチラシで初めてのビデオ発売が告知されましたが、こちらはHRSフナイ株式会社から1990年1月15日に発売となりました。これまた1月。

 このチラシを手に入れた時の事をぼんやり覚えていますけど、「初恋」の発売など全然知らなくて、ふらりと入ったCDショップで見つけて“おおお〜っ!”と思って1枚持って帰りました。なんか1枚しかもう残っていなかったような…。
 お店は忘れていましたけど、右下のスタンプを見ると大阪梅田の阪急グランドビルの30階にあった“DAIGA”というCDショップで手に入れたみたいですね。

 裏は無しの表面緑一色刷り。わざわざ「初恋」だけでチラシを作るんですから、フナイ株式会社としては力は入ってるんでしょうね。でもお安い印刷。

 オードリーの画像が載っていますけど、ラストシーンに近いところからそのままキャプチャーしたもの。映画の内容には合ってるけど、とても暗い印象の画像。ビデオのパッケージも同じ画像でしたし、後の94年のLD発売時にも同じ画像がジャケットに使われてました。
 僕ならこんなの使わないけどなーって思ってました。かといって「初恋」で定番の詐欺、「パリの恋人」の美し画像を使うとかはイヤですけどね。

 文字を全体に小さくして詰め込めるだけ詰め込んでいますから、きっと画像だけでは読めないと思いますので、キャッチコピーを書いてみますね。

 待ちに待ったヘプバーンの「初恋」
 23歳の若さあふれる演技と華麗なバレエの踊りを披露します。
 90年代の幕開けは、やっぱりヘプバーン

 だそうです。確かにこの時期オードリーの再ブームまっただ中ですよね。85年初頭から続々とオードリー映画がリバイバルされていましたし、各地で大ヒット!前年には「昼下りの情事」がとうとうリバイバルして、まさにオードリー再ブームの絶頂期。
 この1990年には「オールウェイズ」もゴールデンウィーク用映画として公開されましたし。まだオードリーが生きていながら伝説化していった時期でした。
 でも23歳ってのは違いますよね。撮影時期から考えて、「初恋」のオードリーは21歳〜22歳が正解です。

 その下には物語としてストーリーの紹介、さらにその下に枠で囲われて初発売にあたって3人から文章が寄せられています。
 その3人は高橋聡さんという僕は全く存じ上げないのですが映画評論家の方、松尾貴史(キッチュ)さん、わかぎえふさんというこれまた存じ上げない役者さんです。

 で、この3人の文章を読んでみるとわかるのですが、おそらくこれらの文章は “何か宣伝文を…”ってただ依頼されて書いたんだろうなーっていうのがよくわかります。
 というのも、誰1人「初恋」を見てないのが丸わかりなんですよねー。おそらくこの原稿の依頼が来るまで「初恋」という作品があることすら知らなかったんだと思います。だーれも内容について一言も触れてないんですよー。

 高橋聡さんは“「初恋」のひと” と書いてあるだけ、松尾貴史さんは“「初恋」はヘプバーンが23歳の時の作品だそうだ。”、わかぎえふさんにいたっては「初恋」の文字は全然出てこない。
 これで宣伝文になっているのか?(^^;

 その下にはオードリーの代表作が載っていて、「初恋」「ローマの休日」「麗しのサブリナ」「戦争と平和」「パリの恋人」「昼下りの情事」「緑の館」「ティファニーで朝食を」「シャレード」「マイ・フェア・レディ」「おしゃれ泥棒」「暗くなるまで待って」が選ばれています。
 「初恋」の販促だから「初恋」が載るのは仕方ないとして、「尼僧物語」や「いつも2人で」や「ロビンとマリアン」を押しのけて「初恋」が入るとは到底思えないのですけど。

 一番下にはひさうちみちお氏イラストの「初恋」ポストカードが50名に当たる発売記念クイズが載ってます。

 〈問題〉オードリー・ヘプバーン出演の映画で、23歳の若さあふれる演技と、バレエの踊りを披露した作品は次のうちどれでしょう。
 1.ローマの休日 2.初恋 3.シャレード

 だそうです。正解とされるのは2番なんでしょう。でも23才というところに正確にこだわると本当は1番の「ローマの休日」、でもバレエシーンは無いから “該当なし” が正解かと…。

 イラストのポストカードなんて別に欲しくないので応募しませんでしたけど、そういえばこのポストカードって見たこと無いかも…。たった50名だしね。
 そう考えるとオードリー的価値はなくても貴重かも!


タグ :初恋

同じカテゴリー(初恋)の記事
 スター・チャンネル オードリー・ヘプバーン映画祭パンフレット (2019-06-25 20:00)
 「初恋」1993年リバイバル公開時 2色刷りチラシ (2009-05-18 16:00)
 「初恋」1993年リバイバル公開時 1色刷りチラシ (2008-03-05 16:00)
 「初恋」1993年リバイバル公開時 パンフレット! (2007-12-08 15:00)
 「初恋」1966年初公開時プレスシート (2007-08-14 15:00)
 「初恋」1993年リバイバルポスター (2007-06-04 00:00)

Posted by みつお at 09:00│Comments(4)初恋
この記事へのコメント
集客力のあるスター女優が、ブレイク前に端役で出演した映画を、その女優の出演作ではなく主演作として公開する・・・・・・ありがちなパターンですね(笑)。
その手の映画でまっさきに思い出すのが、「処女シルビア・クリステル初体験」ですね(笑)。「エマニエル夫人」で世界的な人気スターになった、シルビア・クリステルの無名時代の出演作なのですが・・・・・ほんの1分か2分登場して、ちょっとビリヤードをして引っ込むだけの、処女の役でもなきゃ勿論初体験もしない、役名もないような端役で出ている作品。それをさも、シルビアの主演作であるかもように宣伝して封切る洋画会社の人間たちって、詐欺師以外の何者でもないと思ったものです。JAROは何しとるんじゃーと、叫びたくなるような映画でした(笑)。
それに比べたら、ヘプバーンの「初恋」などまだ良心的なのでは(笑)?「初恋
」という題名は、詐欺そのものですけどね(笑)。ヘプバーン扮する女性は、劇中で恋愛なんか一度もしないんですから。
この映画、劇中でオードリーがバレエを踊ったり、バレエのレッスンをする場面がほんの少しだけ出てきますが、昔「白鳥よ永遠に気高く」というオードリーの伝記本が、そういうシーンの写真を「少女時代のオードリーが、バレーのレッスンをしている写真」として紹介してましたね。あれも一種の詐欺ですね。
ブレイク前の出演作で、オードリーが一番輝いていて魅力的だったのは、やはり「若妻物語」でしょう。あれは「初恋」とは比べ物にならない位台詞も多く、
出演シーンも多かったですしね。
Posted by ヴェロニカ・ハメル at 2016年01月21日 10:06
「処女シルビア・クリステル初体験」、そういう中身なんですか!
なんとなく題名だけは聞いたことがあるような感じなんですが、「初恋」の比じゃないくらい出番ないんですね。なんかヴェロニカ・ハメルさんの文章を見て内容を想像して(そして題名を信じて見た人を想像して)笑ってしまいました。
オードリーだと「オードリー・ヘプバーンの素晴らしき遺産」とほぼ同じくらいの出演シーンですね。

未だ日本未発売ですけど、「若気のいたり」が日本でDVDなどが発売になる時には同じように“オードリー・ヘプバーンの”って謳い文句が付くんでしょうね。
熱心なオードリーファンは大体どんなもんかくらいは知ってるので、そんなコピーが付いていようと気にしないですが、ファンになりたての人が期待して買ったら激怒しそうですよね。

こういう旧作の権利ってどうなってるんでしょうね。
昔のテレビ放送権だったりすると、まとめて買ってたりしてたようなので、その中に意外な作品が!ってこともあったようですけど、もしこういう旧作の販売権もだとすると、まとめて買ったらオードリーの初期作品が!ってことになるんでしょうか。
そうすると会社側からしたら思わぬ掘り出し物!ってんで“オードリー・ヘプバーンの”って銘打ちたくなりますよね。(^^;

でももう初期作品って、ことごとくパブリック・ドメインになっているはずなので、残る「若気のいたり」「オランダの7つの教訓(オランダに関する7章)」「モンテカルロ・ベイビー」も発売して欲しいですよね。僕はこの中では「モンテカルロ・ベイビー」が配役も違うとの事で、ぜひ見てみたいと思っています。
「オランダの7つの教訓」はかつて“週刊オードリー・ヘプバーン”で出る可能性がありましたけど、見事に途中で終わってしまいましたしね。
あー、でも権利元の本国イギリスとオランダでは著作権が70年なので、まだ切れてないのかもしれないですね。あと数年でそれぞれ切れますけど…。

「白鳥よ永遠に気高く」、中身の写真のキャプションまでよく覚えてらっしゃいますね!凄い!どっちのですか?文庫版の方ですか?それとも単行本のほう?なんとなく文庫版じゃないかと思うのですが…。

「初恋」の宣伝写真をバレエのレッスンに間違う、というのは何の知識もない編集者や著者からしたら、そう見えるかもねーとは思います。あんまり調べずに書いたんでしょうね。
だいたい本当のオードリーの少女時代だと、あんなに綺麗に写真が残っている事自体が疑問のはずなんですけどね。

「若妻物語」、確かにビリングはオードリーは7番目で決して高くないですけど、出番は多いですよね。なんか“いつも男の人が私の後をつけてくるの〜!”っていう、ちょっとパラノイア的な役だなーと思ったものです。
オードリーの声が「ジジ」前なので、訓練されてなくて妙にキンキン声なのも初期作品の特徴ですよね。
そういえば、この作品を見れなかった時は、オードリーの序列も結構上だし、かなり見たい作品の上位だったのを思い出します。

こうして初期作品を普通に何作品も家庭で簡単に見れるなんて、昔は考えられない事でしたよね。
昔はシネアルバムでほとんどの作品が監督や出演者も上映時間も不明不明になってて、どんな内容なのかなー、いつか見れるといいなあ、でも見るチャンスは決してこないんだろうけど…って思いを馳せていたのを思い出します。
Posted by みつおみつお at 2016年01月21日 22:42
「初恋」で印象的だったのはオードリーより、主役(オードリーの姉の役)のヴァレンティナ・コルテーゼでしたね。
70年代に観た名作洋画の数々(「初恋(ツルゲーネフの有名な小説を映画化した方)」「ブラザーサン・シスタームーン」「アメリカの夜」)に、母親役や年増女の役で印象的な演技を見せていた女優さん。「アメリカの夜」で演じた、映画の撮影中にNGを連発するベテラン女優役でアカデミー助演女優賞にノミネートされたこの名女優の、若き日の演技が見られたのが、私にとってこの映画の最大の収穫でした。
「白鳥よ永遠に気高く」・・・・・文庫版が出ていたなんて、みつおさんの文章を読んで初めて知りました。私は単行本しか知りません。
「モンテカルロ・ベイビー」って、「モンテカルロへ行こう」という題名でDVD化された、あの作品の事でしょう?たしかオードリーはこの映画の撮影中にコレットの目にとまって、「ジジ」の主役に抜擢されたんですよね。
「白鳥よ永遠・・」には、この映画ほん、『「ローマの休日」以前の出演作で、オードリーが主役を張ってる唯一の作品』みたいに書かれてましたので、期待していたのですが・・・・・主役でも何でもない「出演者の一人」みたいな役で、出演
シーンも少なく、がっかりしたのを覚えています。
たった今唐突に思い出したのですが、「白鳥よ・・・」の中で、オードリーの生まれた年、たしか1929年ではなく、1930年になってましたよね。つくづく出鱈目だらけの本ですね
Posted by ヴェロニカ・ハメル at 2016年01月24日 00:14
ヴァレンティナ・コルテーゼってツルゲーネフの方の「初恋」にも出ていたんですか!70年だか71年だかのジョン・モールダー・ブラウンの主演のですよね?「初恋」って調べるとだいたいそっちの方が出てくるんで、よく見かけたものです。ダブル「初恋」だったわけですね!
60年代後半にヴァレンティナ・コルテーゼと劇場で再会した画像が残ってますけど、メイクが時代と共に二人とも濃くなっていたのが印象にあります。

「白鳥よ、永遠に気高く!」は僕は先に文庫版から入ったんですよ。77年発売だったかで、手に入れやすかったもので。

でも今回久々に単行本版を取り出して見てみましたが、ヴェロニカ・ハメルさんのおっしゃるように「初恋」が“バレリーナに憧れた少女の頃”と載ってましたし、オードリーの誕生日は1930年とされていました!

「われらモンテカルロより」はこの本だけではなく、色々なところでオードリー主演の作品だと紹介されていましたよね。おそらく米国での公開が「ローマの休日」以降で、オードリーを主演のようにビリングを偽ってポスターに載せていたのからそういう紹介がなされたのだと思いますが、僕も長い間主演だと思っていたので、なんで日本で上映されないんだろう…と思ってました。
確かに最初に見た時は出演シーン少なくてがっかりしましたよね(笑)。

確かに内容はもう今となっては価値がないかと思いますが、これは画像が多くて美しいですね!文庫本ではモノクロしかなかったし、「エクスラン・ヴァリーエ」の再掲されない画像など、貴重な本ですね中身より、画像で価値がある本だと思います。

「モンテカルロ・ベイビー」は「モンテカルロへ行こう」の英語バージョンです。全くDVD化されないので、気になってるんです。レイ・ヴェンチュラとオードリー以外はキャスト総取っ替えだし、上映時間もフランス語版と全然違うのでとても興味があります。以前はYouTubeにごく一部がアップされていましたが、もう見当たらないかもしれません。
そういえば「ロシュフォールの恋人たち」も英語版があって、日本でのリバイバルは英語版が公開されたらしいですけど、こういうのも両方収録して欲しいですよね。
Posted by みつおみつお at 2016年01月24日 23:08
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。