2020年10月06日
「許されざる者」公開60周年記念、本当のプレスシート紹介!
あ、書いておくのを忘れてましたが、僕のもう一つのブログ「おしゃれ泥棒、オードリー・ヘップバーン!」で9月に“100.オードリーに関するデマ その10:オードリーはエラを気にしていた”と言う記事をアップしています。そちらもよろしければどうぞ。
あと、今日(午後1時から)「おしゃれ泥棒」、10日土曜の午後11時から「パリの恋人」がNHKBSプレミアムで放映されます。
今日は「許されざる者」が日本で公開されてからちょうど60周年になります!
60年前の1960年10月6日に東急・松竹チェーンの劇場で公開されました。
以前から今年は「許されざる者」記念の年なので、このプレスシートを公開日に紹介するのを年頭から考えていました。
でもその後病気で体調が悪くなって何度か入院したりしていましたので進められませんでしたが、なんとか記事を間に合わせられるように頑張りました!
ずっと温存してきた「許されざる者」プレスシートです!それではどうぞ!
同時公開かどうかは調べていないのですが、東京では松竹の「東京劇場」、東急の「新宿ミラノ座」「渋谷パンテオン」で、大阪では松竹の「なんば大劇場」となぜか東宝系の「ニューOS劇場」で封切られました。
「ニューOS劇場」を除いては全部1000席超えの今では日本に存在しない超大劇場(「なんば大劇場」もおそらく)。「東京劇場」は1700席、「新宿ミラノ座」は1500席超えという日本で最大規模の映画館でした。
「東京劇場」こと「東劇」は1975年に改築されてしまいましたが、その前の東劇の写真が見れるサイトがありましたので、紹介します。
「復興建築の世界 東京劇場」(すみません、管理人さんと連絡を取る方法が無いので、勝手にリンクを貼らせていただきました)
凄おおおーーい!外観も内装も圧倒されてしまいますね!「許されざる者」の東劇版パンフレットにも座席表が書かれていますが、同じ感じで3階席まであるので、この通りだったのだと思われます。
「許されざる者」ってリバイバルを1回もしていないので、1960年の初公開後、権利が残っていた1967年頃までしか劇場で見ることは出来なかったと思うので、今となっては劇場で見た人はほとんどいないと思うのですが、このような美麗で荘厳で豪華な巨大劇場で「許されざる者」を見れたなんて、本当に羨ましいですね!
他にもかつての「新宿ミラノ座」はこちら、「渋谷パンテオン」はこちらで紹介されていますが、どちらも往年の大劇場!って感じで、こんな劇場に映画を観に行くなんて、考えただけでもワクワクしますね!
昔はこのようなその都市でも1番の封切館で映画を観に行くのに、一番良い服を着て行ったというのがわかる気がします。
ただ、昔はいつでも劇場内に入れたので、一部の指定席を除いて席取り合戦も凄かったと思いますが。
それを記念して、今回はずっと温存していた「許されざる者」のプレスシートを紹介。
プレスシートって、映画の配給会社が公開前に劇場やマスコミなんかに宣伝してもらうために配る概要みたいなもの。
個人に配るチラシの親玉みたいな感じで、もっと早くから宣伝するためのもの。各社工夫を凝らしています。
この「許されざる者」プレスはサイズはなんというかですね、変形。折りたたんで342×242くらい。
しかも三つ折りなんですけど、それもまた開いたら変形折りされてます。
全部開いたら720×510くらい。B2に近い感じですね。
プレスシートってそれぞれでサイズとか形が一定していなくて、蒐集しても保管に困るのか、集めることにチラシやポスターに比べて人気がいまいち無いんです。
でもオードリーの物を色々集めているとわかることがあって、このユナイト配給作品はこういう変な変形折りが多いです。
「許されざる者」は娯楽の西部劇だからまだわかるんですけど、地味な「噂の二人」のプレスもこんな折り方してましたよね。サイズは違いますが、折り方は全く同じ。
「尼僧物語」「マイ・フェア・レディ」「暗くなるまで待って」のワーナーなんかは50年代からB3のミニポスタータイプで裏面にあれこれ印刷仕様。この仕様は70年代に入るとメインになってくるんですけどね。
20世紀フォックスの「おしゃれ泥棒」「いつも2人で」は横長冊子タイプでしたし、パラマウントは蛇腹折り・観音折りなどサイズも毎回バラバラ。
面白いのは、基本個人に渡すものでは無いためか、“このように宣伝してください”みたいなのがたまに直截的に書いてあることですかね。
他には宣伝コピーが何種類か載っているものや、印刷で使える映画のロゴ(清刷り。縦書き用・横書き用両方)が一緒にあったりするものもあります。
「許されざる者」に関しては冊子型の物がプレスシートと言われていたりしますが、そちらには個人向けの宣伝がバンバン入っていますので、正式なプレスシートではなく、そちらはタイアップのパンフレット。こちらが本物のプレスシートになります。
さて、現在ではオードリー作品としては完全に傍流扱いで全く影の薄い「許されざる者」ですが、公開当時は大作として期待されていましたし、実際に大ヒットもしました。1960年度の配給収入の第5位に入っています。
「許されざる者」はオードリーが女優としてチャレンジしていた「尼僧物語」「緑の館」の第2期の作品になりますね。
そのあとの「ティファニーで朝食を」「噂の二人」もチャレンジ作品なんですが、「ティファニーで朝食を」でオードリーはチャレンジしながらも自家薬籠中の物にしてしまっている、という離れ業をやってのけて見事に第2期との違いを決定づけていますよね。
この辺のお話は、別館の「おしゃれ泥棒、オードリー・ヘップバーン!」の方の「40.オードリーの時代分け その1」で。
実は前後の5作品(「緑の館」「尼僧物語」「許されざる者」「ティファニーで朝食を」「噂の二人」)の中で唯一日本で大ヒットしたのがこの「許されざる者」なのです。
「尼僧物語」と「ティファニーで朝食を」は水準ヒット、「緑の館」と「噂の二人」は大コケでした。
このチャレンジ・オードリーの時期は、ファンの求める清純なオードリーとロマンティック・コメディというものと、オードリーが演じている役柄に乖離があったんでしょうかね。
それでも1位を取り続けているのは凄いことですけど。
さて、「尼僧物語」「緑の館」「許されざる者」ってオードリーは立て続けに撮っているんですよね。「尼僧物語」が1958年1月〜6月、「緑の館」が58年7月〜10月くらい、「許されざる者」が59年1月〜4月末。
休みをあんまり取らずに仕事をしていた為か、1年の休業後に撮影に臨んだ「尼僧物語」でふっくらしていたオードリーは、「緑の館」「許されざる者」と撮影が進むにつれて段々に痩せてきますよね。
「許されざる者」後に再度妊娠しますけど、そのマタニティ時代のスナップを見てもお腹のショーンに栄養を取られているのか全然太ってないんですよね。そして「ティファニーで朝食を」で戻ってきたときはさらに痩せていたという…。
「尼僧物語」と「ティファニーで朝食を」ではオードリーの太さが全然違います。
さて、脱線ばかりですけど、このプレスシートのカラー面を大きく使ったイラストは、いろんなシーンの画像を元に広大な西部を背景にして描いてますね。
でも実際の映画ではこんなに広大な感じは無かった…。
それに貴重なカラーの部分を、こんなイラストで埋めずに、カラー写真を豊富に載せて欲しかったー。
「許されざる者」って現在は同じ写真ばかり使われることが多くて、珍しい写真を見ることが出来たら幸運が訪れるんじゃないかってくらい珍しい画像は見ること出来ません。これって撮影当時の映画雑誌でも集めないと無理なんじゃないでしょうか。
このプレスシートでも、期待したんですがまあ珍しいのは中面にあるレイチェルが兄を撃ったシーンの物くらいでしょうか…。あと、ピアノを弾くマティルダの傍らで銃を持つレイチェル。
表紙もイラストだし、イラスト要らんから、写真載っけて欲しいです。公開当時が一番珍しい画像を揃えられて自由に使えるのに…。
それにしてもこの表紙のバート・ランカスターがオードリーを引きずるシーン、サントラのジャケットやパンフレットの表紙などで写真も見れますけど、一体なんのシーンだったんでしょうね。映画にもありませんし、原作にもそんなシーンはないんですよね。これも撮影されたものの、カットされたシーンだったんでしょうか。なんやらわからんけど見てみたいなー。
さてさて解説やこぼれ話で興味深いところをいくつか紹介。
・映画雑誌の人気投票で決まって1位を獲得する人気最高のオードリー・ヘップバーンが初めて西部劇に主演。
・批評家たちもこの映画がジョン・ジューストン監督の代表的傑作で「シェーン」「大いなる西部」に匹敵する出来栄えと激賛。
・ロケ中にヘップバーンが落馬し重傷を負ったことはご記憶に新しいと思う。
・ヘップバーンは出産のため、この後しばらくは映画出演をしないことになっているので、これを最後に彼女の映画は当分見られないものと思われる。
・「大いなる西部」「騎兵隊」のサントラ・レコードが売れに売れたため、二度あることは三度あるとこの「許されざる者」のレコードにも空前の宣伝費がつぎ込まれている。
・「ローマの休日」はアメリカでは大ヒットと呼べる成績ではなかったが、日本ではご存知の通りめちゃくちゃな大ヒット。ヘップバーンはそれ以来第1位を独占。
中面では落馬で重傷を負ったオードリーのことが書かれています。
・「腰に近い4つの脊椎骨骨折。他に左足にひどい打撲。5週間は絶対安静で、完全に快癒するかは今の所申し上げられません。」と発表された。
・ロケ地デュランゴを立つ前にヘプバーンを痛みをこらえて撮影隊に手紙を書いた。「みなさん、ご迷惑をかけて本当にごめんなさい。私はきっと治ります。そしてもう一度あれをやる気でいます。」
ここでもしばらくオードリー映画は見れなくなるだろうと書かれています。でも実際にはこの映画が日本で公開された時には既に「ティファニーで朝食を」は撮影に入っており、その後にはすぐ「噂の二人」も撮影。約1年後にはもう「ティファニーで朝食を」が公開されていますよね。
なんか当時を知らない僕らでは、「尼僧物語」「許されざる者」「ティファニーで朝食を」「噂の二人」とスムースに公開されていったような感じですが、当時はしばらくオードリーの出演はないだろうと思われていたんですね。そういうことが知れるのが新鮮な驚きです。
あと、この映画では主演の二人が居なくても十分に大作として通用するキャスト、と書かれていますし、当時の双葉十三郎さんなどもキャストの厚さを褒めてたりしますけど、僕が初めて見た70年代後半では既にオードリーだけ、かろうじてバート・ランカスターを聞いたことあるという感じでしたね。
この「許されざる者」が観た後暗い気持ちになるのはその結末(兄を撃つ)もあるのですが、狂人のようなエイブが言っていたことが全部正しかった、ということにしたのも大きいですよね。
原作では、
エイブの息子がカイオワに殺されて村人もみんな死んだのを見ていた。ある時、白人の男の子がカイオワで育っていたと噂で聞いたエイブは自分の息子がまだ生きていると思い込み、誰も村人は相手にしないので、新しくこの土地にきたザカリー家の父に一緒に行くように頼んで、お人好しのザカリーが一緒に付いて行ったら全然エイブの息子ではなかった。その際に置き去りにされていたインディアンの女の子を拾って育てた、それがレイチェル。
となっているのですが、映画では
戦闘の最中に見つけたインディアンの女の子レイチェルを育て、エイブの息子が攫われた際にその女の子と交換してくれるように頼んだが、ザカリーは拒否した。
となっていて、だいぶ事情が違いますよね。そりゃ原作のようにしておかないとだいぶ後味悪いです。
だいたいレイチェルが優しそうで立派な兄を撃つ、というのも原作にはなくて、レイチェルの家族と思われる同類は早々に打たれて死んでますし、レイチェル自身もその冷酷な目付きに反発を覚えているくらいです。
原作ではカイオワ族はアメリカ・インディアンのいろんな部族の中でもかなり冷酷で残酷だ、と書かれていますね。
なんかアメリカ・インディアンに人種差別にならないように原作を改変したらこんな後味の悪いものが出来上がった、という感じですかね。
まあテレビのニュースでやっていましたが、「風と共に去りぬ」でも製作当時黒人差別にしないように黒人が虐げられているシーンなどは描かないようにしたら、今年は逆に「あんなに穏やかに描かれているのは事実と違う!」と言われて「人種差別だ!」と言われてしまうので、もうどうしていいかわかりませんよね。
次のオードリー作品の「ティファニーで朝食を」でも、現在はユニオシが「人種差別だ!」と声高に言われていますけど、公開当時の日本の雑誌とかを見ても日本人がユニオシを人種差別とは全然思ってないんですけどね。
アメリカ人が日本人をステレオタイプで描くのは当時のアメリカ映画にはつきものでしたし、「ティファニーで朝食を」も“そういうものだ”と思ってただけなんだと思います。
まあ日本人もアメリカ人(というか欧米人)を描く時に白人、ハンバーガー、金髪、青い目、陽気とステレオタイプで描いているものは山ほどあるでしょうしね。
僕もユニオシを人種差別だなんて全然思っていなくて、むしろ映画「ティファニーで朝食を」でまともなのってユニオシだけじゃね?って思っています。
主人公ふたりも娼婦とヒモですからねー。
でも黒澤明監督は「ティファニーで朝食を」のプロデューサーを会った時は完全無視したらしいです。やっぱり実際にアメリカで暮らしたりすると肌で感じるんでしょうかね?
最後に「許されざる者」のプレスシートに書いてあるキャッチコピーを書いておきます。
“征服されざる男!伝説に生きる情熱の乙女!大荒野に展開する雄渾の西部劇巨編!”
“語れぬ恋を胸に秘めて、悲しい因襲に泣く清純な乙女!だが激しい戦いのさ中、非情の掟は燃える荒野に消えて、力強い恋は美しい実を結ぶ!”
“「大いなる西部」「騎兵隊」二大ヒット作を放ったユナイトが、前二作を上廻るスケールと迫力で贈る興行価値最高の西部劇大スペクタクル!”
“殺到するインディアンの大群!迎え撃つ開拓者一家の愛と斗魂!凄惨な迫力に充ちた活劇シーン!”
だそうです。2つ目のはオードリーだけに焦点を当ててるんでしょうけど、説明臭いし、なんなの?と思いますけどね。
ちなみにオードリー作品にはそれぞれ僕が勝手に考えるイメージカラーというものがあるのですが、この「許されざる者」は何と言っても土埃舞う黄土色!それと大空の青です!
あと、今日(午後1時から)「おしゃれ泥棒」、10日土曜の午後11時から「パリの恋人」がNHKBSプレミアムで放映されます。
今日は「許されざる者」が日本で公開されてからちょうど60周年になります!
60年前の1960年10月6日に東急・松竹チェーンの劇場で公開されました。
以前から今年は「許されざる者」記念の年なので、このプレスシートを公開日に紹介するのを年頭から考えていました。
でもその後病気で体調が悪くなって何度か入院したりしていましたので進められませんでしたが、なんとか記事を間に合わせられるように頑張りました!
ずっと温存してきた「許されざる者」プレスシートです!それではどうぞ!
同時公開かどうかは調べていないのですが、東京では松竹の「東京劇場」、東急の「新宿ミラノ座」「渋谷パンテオン」で、大阪では松竹の「なんば大劇場」となぜか東宝系の「ニューOS劇場」で封切られました。
「ニューOS劇場」を除いては全部1000席超えの今では日本に存在しない超大劇場(「なんば大劇場」もおそらく)。「東京劇場」は1700席、「新宿ミラノ座」は1500席超えという日本で最大規模の映画館でした。
「東京劇場」こと「東劇」は1975年に改築されてしまいましたが、その前の東劇の写真が見れるサイトがありましたので、紹介します。
「復興建築の世界 東京劇場」(すみません、管理人さんと連絡を取る方法が無いので、勝手にリンクを貼らせていただきました)
凄おおおーーい!外観も内装も圧倒されてしまいますね!「許されざる者」の東劇版パンフレットにも座席表が書かれていますが、同じ感じで3階席まであるので、この通りだったのだと思われます。
「許されざる者」ってリバイバルを1回もしていないので、1960年の初公開後、権利が残っていた1967年頃までしか劇場で見ることは出来なかったと思うので、今となっては劇場で見た人はほとんどいないと思うのですが、このような美麗で荘厳で豪華な巨大劇場で「許されざる者」を見れたなんて、本当に羨ましいですね!
他にもかつての「新宿ミラノ座」はこちら、「渋谷パンテオン」はこちらで紹介されていますが、どちらも往年の大劇場!って感じで、こんな劇場に映画を観に行くなんて、考えただけでもワクワクしますね!
昔はこのようなその都市でも1番の封切館で映画を観に行くのに、一番良い服を着て行ったというのがわかる気がします。
ただ、昔はいつでも劇場内に入れたので、一部の指定席を除いて席取り合戦も凄かったと思いますが。
それを記念して、今回はずっと温存していた「許されざる者」のプレスシートを紹介。
プレスシートって、映画の配給会社が公開前に劇場やマスコミなんかに宣伝してもらうために配る概要みたいなもの。
個人に配るチラシの親玉みたいな感じで、もっと早くから宣伝するためのもの。各社工夫を凝らしています。
この「許されざる者」プレスはサイズはなんというかですね、変形。折りたたんで342×242くらい。
しかも三つ折りなんですけど、それもまた開いたら変形折りされてます。
全部開いたら720×510くらい。B2に近い感じですね。
プレスシートってそれぞれでサイズとか形が一定していなくて、蒐集しても保管に困るのか、集めることにチラシやポスターに比べて人気がいまいち無いんです。
でもオードリーの物を色々集めているとわかることがあって、このユナイト配給作品はこういう変な変形折りが多いです。
「許されざる者」は娯楽の西部劇だからまだわかるんですけど、地味な「噂の二人」のプレスもこんな折り方してましたよね。サイズは違いますが、折り方は全く同じ。
「尼僧物語」「マイ・フェア・レディ」「暗くなるまで待って」のワーナーなんかは50年代からB3のミニポスタータイプで裏面にあれこれ印刷仕様。この仕様は70年代に入るとメインになってくるんですけどね。
20世紀フォックスの「おしゃれ泥棒」「いつも2人で」は横長冊子タイプでしたし、パラマウントは蛇腹折り・観音折りなどサイズも毎回バラバラ。
面白いのは、基本個人に渡すものでは無いためか、“このように宣伝してください”みたいなのがたまに直截的に書いてあることですかね。
他には宣伝コピーが何種類か載っているものや、印刷で使える映画のロゴ(清刷り。縦書き用・横書き用両方)が一緒にあったりするものもあります。
「許されざる者」に関しては冊子型の物がプレスシートと言われていたりしますが、そちらには個人向けの宣伝がバンバン入っていますので、正式なプレスシートではなく、そちらはタイアップのパンフレット。こちらが本物のプレスシートになります。
さて、現在ではオードリー作品としては完全に傍流扱いで全く影の薄い「許されざる者」ですが、公開当時は大作として期待されていましたし、実際に大ヒットもしました。1960年度の配給収入の第5位に入っています。
「許されざる者」はオードリーが女優としてチャレンジしていた「尼僧物語」「緑の館」の第2期の作品になりますね。
そのあとの「ティファニーで朝食を」「噂の二人」もチャレンジ作品なんですが、「ティファニーで朝食を」でオードリーはチャレンジしながらも自家薬籠中の物にしてしまっている、という離れ業をやってのけて見事に第2期との違いを決定づけていますよね。
この辺のお話は、別館の「おしゃれ泥棒、オードリー・ヘップバーン!」の方の「40.オードリーの時代分け その1」で。
実は前後の5作品(「緑の館」「尼僧物語」「許されざる者」「ティファニーで朝食を」「噂の二人」)の中で唯一日本で大ヒットしたのがこの「許されざる者」なのです。
「尼僧物語」と「ティファニーで朝食を」は水準ヒット、「緑の館」と「噂の二人」は大コケでした。
このチャレンジ・オードリーの時期は、ファンの求める清純なオードリーとロマンティック・コメディというものと、オードリーが演じている役柄に乖離があったんでしょうかね。
それでも1位を取り続けているのは凄いことですけど。
さて、「尼僧物語」「緑の館」「許されざる者」ってオードリーは立て続けに撮っているんですよね。「尼僧物語」が1958年1月〜6月、「緑の館」が58年7月〜10月くらい、「許されざる者」が59年1月〜4月末。
休みをあんまり取らずに仕事をしていた為か、1年の休業後に撮影に臨んだ「尼僧物語」でふっくらしていたオードリーは、「緑の館」「許されざる者」と撮影が進むにつれて段々に痩せてきますよね。
「許されざる者」後に再度妊娠しますけど、そのマタニティ時代のスナップを見てもお腹のショーンに栄養を取られているのか全然太ってないんですよね。そして「ティファニーで朝食を」で戻ってきたときはさらに痩せていたという…。
「尼僧物語」と「ティファニーで朝食を」ではオードリーの太さが全然違います。
さて、脱線ばかりですけど、このプレスシートのカラー面を大きく使ったイラストは、いろんなシーンの画像を元に広大な西部を背景にして描いてますね。
でも実際の映画ではこんなに広大な感じは無かった…。
それに貴重なカラーの部分を、こんなイラストで埋めずに、カラー写真を豊富に載せて欲しかったー。
「許されざる者」って現在は同じ写真ばかり使われることが多くて、珍しい写真を見ることが出来たら幸運が訪れるんじゃないかってくらい珍しい画像は見ること出来ません。これって撮影当時の映画雑誌でも集めないと無理なんじゃないでしょうか。
このプレスシートでも、期待したんですがまあ珍しいのは中面にあるレイチェルが兄を撃ったシーンの物くらいでしょうか…。あと、ピアノを弾くマティルダの傍らで銃を持つレイチェル。
表紙もイラストだし、イラスト要らんから、写真載っけて欲しいです。公開当時が一番珍しい画像を揃えられて自由に使えるのに…。
それにしてもこの表紙のバート・ランカスターがオードリーを引きずるシーン、サントラのジャケットやパンフレットの表紙などで写真も見れますけど、一体なんのシーンだったんでしょうね。映画にもありませんし、原作にもそんなシーンはないんですよね。これも撮影されたものの、カットされたシーンだったんでしょうか。なんやらわからんけど見てみたいなー。
さてさて解説やこぼれ話で興味深いところをいくつか紹介。
・映画雑誌の人気投票で決まって1位を獲得する人気最高のオードリー・ヘップバーンが初めて西部劇に主演。
・批評家たちもこの映画がジョン・ジューストン監督の代表的傑作で「シェーン」「大いなる西部」に匹敵する出来栄えと激賛。
・ロケ中にヘップバーンが落馬し重傷を負ったことはご記憶に新しいと思う。
・ヘップバーンは出産のため、この後しばらくは映画出演をしないことになっているので、これを最後に彼女の映画は当分見られないものと思われる。
・「大いなる西部」「騎兵隊」のサントラ・レコードが売れに売れたため、二度あることは三度あるとこの「許されざる者」のレコードにも空前の宣伝費がつぎ込まれている。
・「ローマの休日」はアメリカでは大ヒットと呼べる成績ではなかったが、日本ではご存知の通りめちゃくちゃな大ヒット。ヘップバーンはそれ以来第1位を独占。
中面では落馬で重傷を負ったオードリーのことが書かれています。
・「腰に近い4つの脊椎骨骨折。他に左足にひどい打撲。5週間は絶対安静で、完全に快癒するかは今の所申し上げられません。」と発表された。
・ロケ地デュランゴを立つ前にヘプバーンを痛みをこらえて撮影隊に手紙を書いた。「みなさん、ご迷惑をかけて本当にごめんなさい。私はきっと治ります。そしてもう一度あれをやる気でいます。」
ここでもしばらくオードリー映画は見れなくなるだろうと書かれています。でも実際にはこの映画が日本で公開された時には既に「ティファニーで朝食を」は撮影に入っており、その後にはすぐ「噂の二人」も撮影。約1年後にはもう「ティファニーで朝食を」が公開されていますよね。
なんか当時を知らない僕らでは、「尼僧物語」「許されざる者」「ティファニーで朝食を」「噂の二人」とスムースに公開されていったような感じですが、当時はしばらくオードリーの出演はないだろうと思われていたんですね。そういうことが知れるのが新鮮な驚きです。
あと、この映画では主演の二人が居なくても十分に大作として通用するキャスト、と書かれていますし、当時の双葉十三郎さんなどもキャストの厚さを褒めてたりしますけど、僕が初めて見た70年代後半では既にオードリーだけ、かろうじてバート・ランカスターを聞いたことあるという感じでしたね。
この「許されざる者」が観た後暗い気持ちになるのはその結末(兄を撃つ)もあるのですが、狂人のようなエイブが言っていたことが全部正しかった、ということにしたのも大きいですよね。
原作では、
エイブの息子がカイオワに殺されて村人もみんな死んだのを見ていた。ある時、白人の男の子がカイオワで育っていたと噂で聞いたエイブは自分の息子がまだ生きていると思い込み、誰も村人は相手にしないので、新しくこの土地にきたザカリー家の父に一緒に行くように頼んで、お人好しのザカリーが一緒に付いて行ったら全然エイブの息子ではなかった。その際に置き去りにされていたインディアンの女の子を拾って育てた、それがレイチェル。
となっているのですが、映画では
戦闘の最中に見つけたインディアンの女の子レイチェルを育て、エイブの息子が攫われた際にその女の子と交換してくれるように頼んだが、ザカリーは拒否した。
となっていて、だいぶ事情が違いますよね。そりゃ原作のようにしておかないとだいぶ後味悪いです。
だいたいレイチェルが優しそうで立派な兄を撃つ、というのも原作にはなくて、レイチェルの家族と思われる同類は早々に打たれて死んでますし、レイチェル自身もその冷酷な目付きに反発を覚えているくらいです。
原作ではカイオワ族はアメリカ・インディアンのいろんな部族の中でもかなり冷酷で残酷だ、と書かれていますね。
なんかアメリカ・インディアンに人種差別にならないように原作を改変したらこんな後味の悪いものが出来上がった、という感じですかね。
まあテレビのニュースでやっていましたが、「風と共に去りぬ」でも製作当時黒人差別にしないように黒人が虐げられているシーンなどは描かないようにしたら、今年は逆に「あんなに穏やかに描かれているのは事実と違う!」と言われて「人種差別だ!」と言われてしまうので、もうどうしていいかわかりませんよね。
次のオードリー作品の「ティファニーで朝食を」でも、現在はユニオシが「人種差別だ!」と声高に言われていますけど、公開当時の日本の雑誌とかを見ても日本人がユニオシを人種差別とは全然思ってないんですけどね。
アメリカ人が日本人をステレオタイプで描くのは当時のアメリカ映画にはつきものでしたし、「ティファニーで朝食を」も“そういうものだ”と思ってただけなんだと思います。
まあ日本人もアメリカ人(というか欧米人)を描く時に白人、ハンバーガー、金髪、青い目、陽気とステレオタイプで描いているものは山ほどあるでしょうしね。
僕もユニオシを人種差別だなんて全然思っていなくて、むしろ映画「ティファニーで朝食を」でまともなのってユニオシだけじゃね?って思っています。
主人公ふたりも娼婦とヒモですからねー。
でも黒澤明監督は「ティファニーで朝食を」のプロデューサーを会った時は完全無視したらしいです。やっぱり実際にアメリカで暮らしたりすると肌で感じるんでしょうかね?
最後に「許されざる者」のプレスシートに書いてあるキャッチコピーを書いておきます。
“征服されざる男!伝説に生きる情熱の乙女!大荒野に展開する雄渾の西部劇巨編!”
“語れぬ恋を胸に秘めて、悲しい因襲に泣く清純な乙女!だが激しい戦いのさ中、非情の掟は燃える荒野に消えて、力強い恋は美しい実を結ぶ!”
“「大いなる西部」「騎兵隊」二大ヒット作を放ったユナイトが、前二作を上廻るスケールと迫力で贈る興行価値最高の西部劇大スペクタクル!”
“殺到するインディアンの大群!迎え撃つ開拓者一家の愛と斗魂!凄惨な迫力に充ちた活劇シーン!”
だそうです。2つ目のはオードリーだけに焦点を当ててるんでしょうけど、説明臭いし、なんなの?と思いますけどね。
ちなみにオードリー作品にはそれぞれ僕が勝手に考えるイメージカラーというものがあるのですが、この「許されざる者」は何と言っても土埃舞う黄土色!それと大空の青です!
Posted by みつお at 12:00│Comments(2)
│許されざる者
この記事へのコメント
みつお様、こちらにもお邪魔いたします。
東劇こと東京劇場は、大通り(晴海通り)を挟んで建っていた松竹会館(本社)の松竹セントラルと並ぶ大劇場で、実家から徒歩十分ほどの距離でした。現在は東劇ビルの名で松竹の本社としても機能しています。実は入院していた病室からも上層階が良く見えていました。
また'69年に中学に進学し、晴れて一人または友人同士で映画館へ行けるようになったのですが、最初に観たのがこの東劇でジョン・ウェインがオスカーを射止めた「勇気ある追跡」でした。また上階には3本立ての傑作座という名画座もあり、そちらも良く通ったもので。
「許されざる者」ですが、以前最初にTVできちんと観たオードリー作品とお伝えしましたが、同じ頃だったかと。既にTVで「空中ぶらんこ」「終身犯」などを観ていてバート・ランカスターが贔屓だったので。劇場では「泳ぐひと」「さすらいの大空」なども。
クリント・イーストウッドが同名作を撮る際、一部でジョン・ヒューストン作のリメイクと報じられていましたが結局まるで別の作品で。イーストウッドのヒューストンへの関心からいかにもと思ったのですが。
とは言うものの実はあまり細部は記憶していないのです。印象的だったのはリリアン・ギッシュがピアノを弾くシーンとオードリーが実の兄を撃つシーンくらいで。BSシネマで何度もオンエアしたのに。またよりによって帰宅したらTVが故障して、ちょうど十年前の製品なので修理不可能と。何かとツイてない今日この頃です…。
東劇こと東京劇場は、大通り(晴海通り)を挟んで建っていた松竹会館(本社)の松竹セントラルと並ぶ大劇場で、実家から徒歩十分ほどの距離でした。現在は東劇ビルの名で松竹の本社としても機能しています。実は入院していた病室からも上層階が良く見えていました。
また'69年に中学に進学し、晴れて一人または友人同士で映画館へ行けるようになったのですが、最初に観たのがこの東劇でジョン・ウェインがオスカーを射止めた「勇気ある追跡」でした。また上階には3本立ての傑作座という名画座もあり、そちらも良く通ったもので。
「許されざる者」ですが、以前最初にTVできちんと観たオードリー作品とお伝えしましたが、同じ頃だったかと。既にTVで「空中ぶらんこ」「終身犯」などを観ていてバート・ランカスターが贔屓だったので。劇場では「泳ぐひと」「さすらいの大空」なども。
クリント・イーストウッドが同名作を撮る際、一部でジョン・ヒューストン作のリメイクと報じられていましたが結局まるで別の作品で。イーストウッドのヒューストンへの関心からいかにもと思ったのですが。
とは言うものの実はあまり細部は記憶していないのです。印象的だったのはリリアン・ギッシュがピアノを弾くシーンとオードリーが実の兄を撃つシーンくらいで。BSシネマで何度もオンエアしたのに。またよりによって帰宅したらTVが故障して、ちょうど十年前の製品なので修理不可能と。何かとツイてない今日この頃です…。
Posted by Edipo Re at 2020年10月08日 22:38
Edipo Reさん、こんばんは。
往年の松竹セントラルと東劇をご存知なのですね!羨ましい〜!!
やはり内装は豪華でしたか?
後年、改築後の丸の内ピカデリーを入れて、松竹の3大封切館でしたね。
オードリー作品が上映された作品を考えると、松竹・東急チェーン時のチェーンマスターが東劇、松竹単独の配給作品の最高位が松竹セントラル→丸の内ピカデリーに変わったんでしょうね。
名画座も今ではすっかり無くなりましたよね…。
バート・ランカスター、重厚な感じでしたよね。ランカスターが出ているだけで、作品が「重い」感じがしました。
でも60年代になってくると、その役割はチャールトン・ヘストンが主に担当するようになったんでしょうか?
クリント・イーストウッドの「許されざる者」は最初リメイクと伝えられたんですか!
でも今では「許されざる者」と言うと、イーストウッドのものを指すことが多いみたいですね。ちょっと悔しい…。
「許されざる者」、やっぱり内容が暗いので、僕もなかなか見返すことが少ないオードリー作品になりますけど、Edipo Re さんもたまには見返してあげてくださいねー。
往年の松竹セントラルと東劇をご存知なのですね!羨ましい〜!!
やはり内装は豪華でしたか?
後年、改築後の丸の内ピカデリーを入れて、松竹の3大封切館でしたね。
オードリー作品が上映された作品を考えると、松竹・東急チェーン時のチェーンマスターが東劇、松竹単独の配給作品の最高位が松竹セントラル→丸の内ピカデリーに変わったんでしょうね。
名画座も今ではすっかり無くなりましたよね…。
バート・ランカスター、重厚な感じでしたよね。ランカスターが出ているだけで、作品が「重い」感じがしました。
でも60年代になってくると、その役割はチャールトン・ヘストンが主に担当するようになったんでしょうか?
クリント・イーストウッドの「許されざる者」は最初リメイクと伝えられたんですか!
でも今では「許されざる者」と言うと、イーストウッドのものを指すことが多いみたいですね。ちょっと悔しい…。
「許されざる者」、やっぱり内容が暗いので、僕もなかなか見返すことが少ないオードリー作品になりますけど、Edipo Re さんもたまには見返してあげてくださいねー。
Posted by みつお at 2020年10月09日 18:21