2023年12月10日

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 今回は、今年初公開から60周年記念になる「シャレード」初公開時の雑誌“スクリーン”の紹介。
 いよいよ今月の21日が日本初公開の日になります!

 いやあ公開60年も経って、まだ生き残っている映画って凄いですよねー!
 もちろんオードリーの作品ということもありますが、いまだに人気があるのは、やっぱり映画の出来がいいからですよねー。

 謎解きの要素もあるので、普通なら謎が分かった時点で人々の興味が薄れ、忘れ去られてもおかしくないものだと思うんですよね。

 でもそうならないというのは、やっぱりオードリーとケーリー・グラント主演2人の魅力や、その2人の掛け合いを作った脚本、そしてスタンリー・ドーネン監督のミュージカルで培った流れるようなテンポの良さ、そしてヘンリー・マンシーニの魅力的な音楽、と全てが1流でオシャレに作られているからなんでしょうね。

 この1964年1月号の“スクリーン”は、まず表紙が「シャレード」のオードリー。
 この衣装での宣伝写真は、10年前に紹介した「ヤングレディ」や、2年半前に紹介した“映画の友”1964年2月号でもわかるように、バックにピンクの幕を使って撮影されてますね。

 この写真のオードリーも、この表紙の時のみで、他の写真集などでは一切収録されていない、これでしか見られないのが嬉しいですねー。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 裏表紙にはパラマウントの宣伝で、1964年の公開作品として「パリで一緒に」が名前だけ載っています。
 「パリで一緒に」は日本では1963年に公開しようと思って色々準備していたのに、結局アメリカで公開が遅れ、日本も64年までずれ込んでしまいましたね。

 なので、今でも「シャレード」を先に撮ったと勘違いしている人がネットで見ると多くいるようですね。「シャレード」オードリー34歳、「パリで一緒に」オードリー35歳、とかね。

 公開年だけ見て、撮影がいつだったとか、何月に公開されたのかとか、全然見てないんですよね。
 ちなみに「パリで一緒に」は1962年夏、「シャレード」は1962年秋撮影開始で、オードリーはどちらも33歳です。

 ここではポール・ニューマン唯一のロマンティック・コメディと言われている「パリが恋するとき」も載っていますね。

 もう僕はこの題名を見るたびに “デマ!”って思ってしまうんです。
 何のこと?と思う方は、僕のもう一つのブログ、「おしゃれ泥棒、オードリー・ヘップバーン!」のこちらの記事をお読みください。

 やらかしてたのはIMDbだったんですけどね。なんかみんなIMDbを信用してるようですけど、あれは出典もなく誰でも書き換えられるものですからね。Wikipediaより悪いです。僕は全く信用していません。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 今は修正されてますけど、「ローマの休日」の日本初公開が1954年4月19日だとか書かれてましたしね。
 ヴィヴィアン・リーの「愛情は深い海のごとく」の題名も、未だに「愛情は深い海の如く」って間違いのままですしね。

 2〜3年前にはオードリーのページに突如「Betty Crocker Star Matinee」ってテレビ番組に出演してたって情報が載りましたけど、これ、どの本にも載ってないんですよね。
 出典もないし、映像はおろか写真も残ってないので、唐突に湧いて出て来たのを「はい、そうですか」って信用できませんよね。

 なんせ「パリが恋するとき」のこともありますんでね。
 というわけで、僕はIMDbに関してかなり懐疑的な目で見ています。 

 さて、中身ですが、実はこの号は昔に潰してしまって、完全な本の形では残っていません。
 なので「シャレード」の広告と、「シャレード」のカラーページのどちらが早いページで掲載されていたのかがわかりません。ここで紹介する逆だったかもしれません。

 まあ先に「シャレード」のカラーページを紹介。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 当時、映画の宣伝写真はモノクロが多く、また雑誌自体カラーページは少なくて貴重だったので、このように新作紹介でカラーを見開き2ページも使って紹介するというのは破格の扱い。
 それだけ「シャレード」が期待されていたんでしょうねー。

 もうこの段階では映画評論家たちへの試写会は済んでいただろうし、その段階でまたまたオードリーに傑作が出た!というのはわかっていたはずですしね。
 それに作風が久々のオードリーらしい作品。

 というのも、第2期では「尼僧物語」「緑の館」「許されざる者」と真面目な作品ばかりに出ていたオードリー。
 第3期に入り、やっとコメディに戻ってきたと思ったら、オードリーのイメージとかけ離れた高級娼婦の「ティファニーで朝食を」、さらには重い内容で再び真面目路線に戻った「噂の二人」と、この時期のオードリーは「許されざる者」を除いて日本ではそれほどヒットしなかったんですよね。

 なので当時はやっとやっとで本当にオードリーらしい作風と役柄の「シャレード」が出てきた!といったところでしょうか。

 ユニバーサル映画(当時はユニヴァーサル表記)は初めてのオードリーですけど、ユニバーサルの日本支社も、この出来の良さを見てやったー!と思ったでしょうね。
 人気ナンバーワンのオードリーでこの出来だったら、もう大ヒットは確約されたも同然ですからね。

 実際、「シャレード」はそれまでのどのオードリー作品よりもロングラン(11週)しますし、5週目の平日昼の上映でも、まだチケット売り場は大行列の状態。
 1963年(7位)と1964年(5位)で2年連続配給収入ベスト10に入るんですよね。はい、スゴイです。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 「シャレード」の広告ももちろん出ています。やはりこちらも当時の1流作品の証、カラーで掲載されています。

 ポスターやプレスシートとも違う、広告のみのデザインで、えらくアッサリしていますけど、これはこれで珍しくて嬉しくなります。
 60年代後半からは日本の映画ポスターのデザインが急激に良くなって、今でも世界で通用するほどになるんですが、この時期はまだ過渡期。

 さて、次のオードリーは「マイ・フェア・レディ」の紫一色のグラビアとその隣の本文ページ。

 この1964年1月号は1963年11月21日発売ですから、編集はおそらく11月頭ごろ。
 確かに「マイ・フェア・レディ」は撮影の後半に入ったとこですね。

 ですが、ここで見れる画像はまだヒギンズ邸に来たばっかりのイライザですね。
 まあアメリカから届く資料は10月以前のものでしょうから、まだ前半のものになるのは仕方ないですよね。

 江利チエミさんと一緒に写るオードリーの画像もありますが、それ以外の画像の方が今となっては全てレア物なのが嬉しいところ。
 こういう “今は見かけない珍しい画像が見れる”というのが古雑誌のいいところ。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 めくって次が連続オードリーで、本文での「シャレード」の紹介となります。執筆者は僕が尊敬する批評家の双葉十三郎さん。

 双葉さんは、“映画の友”1964年2月号の批評家によるベスト10でも「シャレード」は第4位に入れてくださってますもんね。
 かなり気に入ってくださってたのがわかります。

 そんな双葉さんがお書きになった文章なので、全編これ「シャレード」に対する礼賛となっており、オードリーファンなら嬉しくなってしまいます。

 タイトルバックの素晴らしさ、おシャレ度の高さ、グラントとオードリーの会話のシャレてキビキビした良さは2人のタッチの良さであり、ミュージカルで鍛えたドーネン監督の感覚があればこそで、アメリカ映画の楽しさここにあり!という楽しさであること。

 内容も意外や意外また意外の連続であること、ヒッチコック映画のグラントをパロディ風に活用していること、この意外とウソのカクテルの中で、ただ一つの真実はオードリーが素晴らしいということ、オードリーを見るだけでも十二分なのに、内容が面白く、ドーネンの監督ぶりも上々で、ごっそりおつりが来ると書かれています。

「シャレード」公開60周年、“スクリーン”1964年1月号 最近はアメリカ映画もだいぶ泥臭くなって来たが、たまにこういうイキのいいシャレた花が咲くことがあり、アメリカ映画らしいアメリカ映画にひたれること、パラマウントで作られそうな作品なのにユニヴァーサルであること、近年断然他社を凌駕する日本版プリントの色彩の美しさであることも書かれています。

 もうそりゃ普段は手厳しい映画評論家さんがベタ褒めするくらいのお墨付き作品で、しかも主演はオードリーですから、そりゃ封切られたら平日の午後であろうと大行列になりますよね。

 残念なのはカラーもモノクロもレア写真の少ない「シャレード」ですから、珍しい画像はオードリーの表紙と、ケーリー・グラントの様子を窓から伺うオードリーの画像くらい、というところ。
 なんでレア写真が少ないのかはこちらの記事に書いてますので、読んでくださいね。



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この記事へのコメント
当時切手収集が趣味でした。3枚の切手がお宝という映画にワクワクしました。
ジバンシーの夏服冬服、2つの映画で楽しめましたね。
Posted by 明智常楽 at 2023年12月14日 04:48
実家の近所の商店街にも切手を売り買いするお店がありました。
今はもう閉店してシャッターが閉まったままですが、外装が当時のまま残っているので、そこを通るたび切手のお店があったなーと思っています。

63年冬からは、「シャレード」「パリで一緒に」「マイ・フェア・レディ」とだいたい半年ごとに新作が来て、当時のファンは嬉しかったでしょうねー!
Posted by みつおみつお at 2023年12月14日 16:16
僕は、シャレードが一番好きで、
繰り返し繰り返し、何度も見てもいます。
みつおさんの記事を見て嬉しかったです。
ありがとうございました m(__)m
Posted by 寝ても覚めても。 at 2023年12月22日 19:37
お久しぶりです。
この雑誌、神田神保町の古本屋で初めて買った本です。
74年のスクリーンで紹介された10年前の記事のオリジナルだ~って感激したものです。それになんといっても表紙がいいですよね~
ピンクの背景に赤いこの衣装(セーヌ河ノートルダムのシーン)この帽子
他にも何種類も画像がありますが、知っている中では一番綺麗でいい感じなのに、なぜか他では見かけませんよね。
撮影したカメラマンはヴィンセント・ロッセールVincent Rossell という方らしいです。フランスで大活躍したカメラマンのようですが、フランスの俳優以外でオードリィも数多く撮影したようなのが嬉しいところです。
『パリで一緒に』『シャレード』『おしゃれ泥棒』の3本が担当だったみたいです。
写真集も出てるようなので中身も気になりますね。
https://www.ebay.co.uk/itm/134528689721

プロのカメラマンが撮影した画像はパブリシティフォトとは違って臨場感があるし味わいも違いますもんね。
オードリィの映画スナップはなんだかウィロビーばかりが前面に出てきてしまっていて(しかも小出し&同じ画像のリピートオンパレード)、
ハウェル・コナンのときは大層感動したものですが、他の方々のもっと見てみたいです。
ピエルルイジ・プラタートン、テリー・オニールあたりが、本気で写真集出したら凄いでしょうね。

ところでカラー頁の写真、クライマックスのコートの色がオレンジ色になっていますね・・・僕も当初はオレンジ色または山吹色かと思ってました。
とにかく懐かしいです。( ^)o(^ )
Posted by まる at 2023年12月23日 22:02
寝ても覚めても。さん、こんばんは。

3つも嬉しいコメントいただいてたんですね!
1つしか気付かなくてすみません!

寝ても覚めても。さんは「シャレード」が1番なんですね!
それを伺って嬉しいです!
「ローマの休日」ばかりが取り上げられがちなオードリーですけど、それだけじゃないってのも、もっと他の人にも知っていただきたいですよね。
Posted by みつおみつお at 2023年12月24日 01:10
まるさーん!!
長い間ご無沙汰だったので、心配してたんですよー!
来ていただけてよかったー!

さてこの「スクリーン」、僕も先に74年の方で見ていたので、こんなたくさんオードリーが載っていたとは!と嬉しくなりました。
「スクリーン」や「映画の友」の表紙でのみ見れる画像って多いですよね。本当になんでその後収録されないのか不思議です。
まあ他のに掲載されると、それはそれでこれらの古雑誌の価値が落ちるのでしょうが、現代の印刷技術で甦った画質でも見てみたいですよね。

それと、誰が撮ったのかのカメラマンには疎いので、教えていただいてありがとうございます!
このヴィンセント・ロッセールさんは「パリで一緒に」「シャレード」「おしゃれ泥棒」担当ですか!?めっちゃ好きな作品ばかりじゃないですかーっ!ぜひ全容を見てみたいものですね!
コナン君のように、オードリーで1冊欲しいところです。

しかし、ボブ・ウィロビーばっかりの昨今はなんなんでしょうね。クレヴィスも今までの事情を知らないままに写真展や写真集を出してるので、またボブ・ウィロビーですかぁ?とちょっとうんざりします。

でもオードリーを撮ってくれたカメラマンの方たちって、オードリーと同世代か、それより上の人たちも多そうですから、今やお亡くなりになってる方の方が多いのでしょうね。
権利元の方がオードリー写真集を出してくださると、見たことない画像が大量できっと舞い上がってしまいそうですが、デジタル時代の今、紙物を出すと売れ残りのリスクも高いのでしょうかね。

「シャレード」のコートの色は前からまるさん、おっしゃってましたよね。公開前だし、カラーってコダックとかフジとかフィルムによっても発色が変わりますし、同じコダックでも種類によって変わる上に印刷によっても左右されてしまうので、オレンジ色に転んでしまったのでしょうね。
てことは、赤みが強いということなので、オードリーの顔色も、実際はもうちょっと白っぽいのかなーと思います。
Posted by みつおみつお at 2023年12月24日 01:31
ヴィンセントさんの写真集というebayの画像、なんか本に見えないんですよね。なんかフォトショやイラレで作ったような感じだし…。
検索しても他で売ってる気配もないし、もしかして詐欺!?とかって思ってしまいます。
表紙のレイアウトも、あまりプロがやったとは思えないような書体&デザインです。
まあ個人出版かもしれませんが…。日本で言うと「オードリー玉手箱」みたいな感じでしょうか。
本物だったら、ぜひAmazonとかで売って欲しいですよね。

パリの方は本物です。
リザさんから連絡がありました。レアオードリーのサイトの管理人さんが作ったそうです。
表紙は未収録の画像を使ったそうです。

あー、確かに「シャレード」のコートはマスタードって感じですよね。
レーザーディスクはDVDより色鮮やかでしたけど、どんな色だったかなー?と思っています。
テレビ放映時は昔はユニバーサルから買っていたんでしょうから、ユニバーサル映画での色調整がそうなぅていたんでしょうかね?
Posted by みつおみつお at 2023年12月24日 21:40
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